149 異世界帰還者の胎動 14 ???視点
計画は順調だ。
「彼女の力は予想以上だな」
「まったくだ。灰帝やあの独裁者、C国の英雄までも降したって話だったが……」
「ただの吹かしだと思っていたんだがなぁ」
「あの様子だと本物でしょう」
「困ったものだな。新時代が来て戦力バランスが崩れたとはいえ、極東のサルに最強戦力が現れてしまうとは」
「引き抜き工作は?」
「いまのところ、どこも成功はしていないようですね」
「そちらの国は? たしか新大統領と懇意にしているという情報を手に入れているのだが?」
「大統領からは観察に留めて友好関係にひびを入れることはないようにと言われております。あの国ではなく、彼女とです。彼女の遊び場を自国にしないようにと」
「弱腰なことだ」
「では、潰しますか? その場合、我が国は絶対無関係を主張するようにとも言われています。場合によっては……」
「あちらの味方をするのか?」
「我が国は同盟国ですから」
「ちっ」
「それにそちらにしても、素直に彼女に協力を願った方がよいのではないですか? 北の方の戦況がかなりひどいものだと」
「…………」
「お祭り騒ぎができるこの国が羨ましいのはわかりますが、一千億円なんて、そちらの国々でかき集めればそれほど大金というわけでもないでしょう?」
「黙れ」
「はいはい。では、私はこの後の話し合いには参加しない方がいいですね。ただ、最後の助言になりますが、彼女にはもう見抜かれていますし、もう一人の彼女の能力も私は本物だと判断しました。では」
そう言って一人が去る。
止める必要はない。あの人間が所属している国にいまのところ用はないのだから。
あの子にとって楽しい戦場は残った連中の方にこそある。
存分に利用させてもらいましょう。
「しかし、どうする?」
「なに、このイベントのおかげで何人かには誘うことはできた。英雄志願の連中だ。きっと活躍してくれるだろう」
「そうでなくては困る。それより、彼女だが、どうする?」
「C国からの要請の件もあるからな。協力が得られないのならば……」
「問題はその方法だよ」
やっとその話題になったと、彼らの囲むテーブルにそっとそれを置く。
「これは?」
「それを彼に飲ませてあげなさい。望み通りになるでしょう」
「なるほど」
「たしかに、あいつの狼狽ぶりは見るに堪えない」
「使うのはちょうどいいかもしれないな」
男たちは納得してその薬瓶を掴む。
誰一人として、突如として話に割り込んできた私のことを疑わない。
まぁ、それがこの場に満ちている薬の効能なのだけれど。
あの勘違いした残念ちゃんではメインイベントをこなすのは無理だもの。今日のアイドルちゃんよりつまらない試合になるのは決まってる。
とはいえ、アイドルちゃんは相手が相手だったからつまらなくなって当然なのだけれど。
少しは盛り上げる手伝いをしてあげないとね。
「話し合いは終わりましたか?」
連中がいなくなった後でまったりしているとお仲間がやってきた。
「終わった終わった。いまだに肌の色で優越感なんて浸ってる愚か者どもだからね。操作は簡単だよ」
「そうね。いまや世界さえも違う存在と接触しているというのにいまだに人類で一つにまとまれない」
「おや嫌味だ」
「あなたもね」
「ふふ……人類なんてどの世界にいたって同じってことよね。それでそっちの仕込みはどう?」
「問題はないわ」
「なら、あの子の進む道はもう決まったわね」
「そういうことよ」
「楽しみね」
「ええ」
そう言いかわし、二人の姿は消える。
もはやその場には誰もなく、策謀の痕跡もなく、全ては未来に結実するその時まで。
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