135 異世界帰還者の胎動 01
やらかしたぁ……とマスタールームで頭を抱える。
「ふぐぅ……おかしいな。クラン名義にしろって言わなかったっけか?」
言ったよな?
言ったような気がするんだけどな。
うん、言った。
白魔法で過去を検索してその記録を見つける。
なんの記録だって? 世界記憶に決まっている。
つまりは過去を見ているってことだな。
ふはは。できるということさえわかればいまの俺に不可能はないのだ。
とはいえ、やらかしたことを改変することはまだできない。
いつかできるようになるのかな?
時の旅人になれるな。サンジェルマン伯爵だったか?
いまだけなりたいな時間旅行者。
「ああ、くそう。C国にしてやられたってことか?」
いや、契約書をちゃんと確認しない俺が悪いんだと言われればそれだけなんだけどな。
汚い。大人は汚い。
うん、そういうことにしておこう。
「ああ、でもどうすんだこの金」
ぐちぐちと自問する。
堅実に貯金とかいう額でもないし、そもそも、持っていると周知されているというのが厄介だ。
すでに各種色々な慈善団体やらなんやらが寄付を求めて連絡をしてきている。
その対応で俺の秘書たちが時間がかなり割かれているというのがまずだめだ。
「こういうときは、さっさと使い道を発表してしまうべきじゃぞ」
机に足を乗っけてうだうだしている俺を微笑ましそうに見守るエロ爺。
視線がエロいのはデフォだが、俺が美脚なのもまた事実なのである。
「ん~」
それはその通りなんだが。
「なにか考えがあるなら、儂が良いようにしてやるぞい」
「……とりあえず、半分は寄付する」
「ほう?」
「今回のダンジョン騒ぎの被害への復興支援的な感じで。どんな風にやるかを任せてもいいかい?」
「お任せじゃ!」
俺に頼まれるのがそんなにうれしいのか、うきうきといろいろ話し出す。早口だからよくわからね。
聞き流していると来客の気配。すぐにノックが響いた。
入ってきたのは秘書の一人だ。マスターだから秘書がたくさんいるのだ。
「失礼します。マスター。お時間です」
「ん? ああ……サチホちゃんだったか?」
「はい」
「うっし、じゃあ気晴らしにサチホちゃんをさわさわするか!」
いつまでも後悔していても仕方がない。
俺はよしと立ち上がると秘書について部屋を出た。
エロ爺?
もちろんそこに放置だ。
影のように鷹島が付き従っているから大丈夫。亮平でも油断していたら姿を見逃すぐらい鷹島の影っぷりは完璧だ。
それにこれからすることは男子禁制である。
いや、カメラクルーはいるんだけどね。
クラン事務所の隣、体育館……だとカッコが付かないので練武館とは反対の隣に小さなビルがある。これもうちのビルだ。
杜川っちがクランの事務所をここに建てることが決まった時に、個人的に買っていたビルだったのだが、俺が計画を話すと喜んで提供してくれた。
いや、貸してくれた。ちゃんと杜川っちの別会社に家賃を支払っています。
ちゃっかりしてるわー。
そこにはまだ看板はない。
だが、俺の計画のための準備は着々と進んでいる。
「あっ! 織羽さん!」
ロビーのところにわらわらといた一団の中から女の子が元気に手を振る。
ぱっと花が開くような……ちょっとわざとらしいぐらいに明るい笑顔の女の子だ。
この子がサチホちゃん。
中学生だ。
地下アイドルをしているのだが、うちの計画の看板役をやってもらうことになった。
で、その計画というのが。
「それでは、今日もよろしくお願いします!」
「よしよし、さらに美人になろう」
「はい!」
というわけでビルの中の一室に招く。
ぞろぞろと付いて来るのは彼女のマネージャーとカメラクルーたちだ。
カメラクルーたちはこちらで雇っている。
計画というのは俺の作った美容品を売ろうというものだ。
異世界の魔法美容品。
その効果を見れば絶対に売れる自信があるが、霧やクランメンバーからは「気味悪いと思われるかも」「詐欺商品みたい」という意見もあった。
まぁ、俺の使っているスライムベッド……ビューティースライムへの反応はおおむね悪いからな。
というわけでボディクリーム的に塗りたくってマッサージする方向に変更。
異世界美容品できれいになろうをテーマにしたビューティーサロンのために実験台&看板役を探していて杜川っちが地下アイドルのサチホちゃんを見つけたのが、秋葉原のドタバタの二か月後くらい。
それからずっとヨーチューブの『王国』チャンネルで彼女の変化を動画で記録している。
で、このサチホちゃん。
最初はすごかった。
元はきれいなはずなのに、不摂生の極致で肌が汚いったらない。
中学生なのに化粧で誤魔化さないといけないレベルでひどかった。
だけど、それを改善すれば美少女になることは間違いなしの逸材でもあった。
サチホちゃんに接触すると、彼女はすぐに承諾してくれた。
さすがは地下アイドルなんてやる子である。貪欲さが半端ない。もちろん看板役になる代わりにアイドル活動の援助も約束している。
そんなわけで週一ぐらいでサチホちゃんの若い体をグニグニイジイジモミモミするお仕事である。
「ふぅん」
ときどき切ない声を上げるのがまたグッド。
水着姿のサチホちゃんに薄ピンク色のクリームを塗りたくる。ビューティースライムをボディクリームにしただけなので中身は同じだ。
というかビューティースライムだ。
揉みこまれて体内に染みこんだビューティースライムは内部に溜まった老廃物を除去しつつ、各部位に必要な栄養を補充して肌のみならず内臓までも癒す。
この子は特に内臓が疲労していたので特に念入りに癒やしているはずだ。
きっと、外食ばかりしていたのだろう。
外食といってもコンビニ弁当とか、菓子パンとかスナックだけとか、必要な栄養を摂らなかったりなにかが偏っていたりとかだ。
「ご飯はちゃんと食べてるか?」
「はい。織羽さんに言われた通りに三食ちゃんと、お野菜も食べてます!」
「えらいえらい」
「えへへへ」
「育ち盛りなんだから変に我慢したりしなくていいからな」
「はい!」
「だからといって食べすぎも困ります」
と、マネージャーさんが横から口を出してくる。
「まっ、デブらない程度にな?」
「わかってます。織羽さんみたいには食べられませんから」
「俺は栄養の過剰摂取なんてしてないけどな」
本当だぞ。カロリーは余すことなく使い切っている。
「その証拠に、俺のどこに無駄な肉がある?」
「それはそうですけど」
「織羽は胸部装甲に問題ありだけど」
「なにおう」
さらっと場に混ざっていた霧が毒を吐き、周りが笑う。
霧さんらしからぬ行動に「おやっ?」と思ったが、この場に問いただすほどでもないので流す。
「…………」
一人、笑っていないのはサチホちゃん。
ジェラシーってる。
なんかめっちゃ懐かれているが、さすがにリアル中学生に手を出す気はない。
「で、サチホちゃんの胸部装甲は育ちそうなのかな?」
「うひゃっ!」
サチホちゃんが可愛い悲鳴を上げる。
これはマッサージだよ。
セクハラじゃないからね?
いいね?
手を出す気はないって言ったばかりだからね。
「ふむふむ。立派に育っておる」
「はぅぅぅぅぅっ!」
ビクンビクンするサチホちゃんから手を放す。
「はい。本日のマッサージ終了」
「ふぁ」
サチホちゃんの満足げな吐息はちゃんとカメラに記録された。
このまま動画投稿すると再生数は稼げてもヨーチューブ運営に怒られるかもしれない。
まっ、そこら辺は編集チームに任せるとしよう。
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