表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
負の魔法使い  作者: 山吹十波
Chapter 00:REtrospect
5/28

00-03 研究結果

「……以上が僕が研究した結果です」


ルナフォード家のとある一室には宮廷魔術師団長ソア・クラモールとグリムとシンシア、それにグロリアス王と王子のヴィラドが座り13歳になった少年の話を真剣に聞いていた。


この話が真実ならば、世界の常識は大きく変わる。


今まで魔力というのは1つの物で、人によって大小があると考えられてきたが、それ自体が違うようだった。


人が持つ魔力には2種類存在する。

1つはヒトが体内で生成する「正の魔力」。

1つは自然界に満ちている「負の魔力」。

負の魔力の総量は“境界”ができる前にどれだけ体に負の魔力が馴染むかで決まるらしく、決まった総量分の負の魔力は常に自然界から強制的に体内に入るらしい。

また、負の魔力は正の魔力を打ち消す能力を持ち、通常、魔法を使うときには使用されない負の魔力も現在使われている測定器では合わせて測定してしまうため、正確な数字が出ないという。

また、負の魔力が大きすぎる者は、魔法を用いる場合に負の魔力によって正の魔力が侵食されるため、大きな力を扱うことができない。


「ということはレイトは負の魔力が大きすぎて正の魔力が扱えないという事?」


「いえ、残念ながらそうではないようです。ルナに協力してもらって正負を分けては測る装置を作ったのですが、正は0でした。ルナ曰く、負の値が大きすぎて魔力自体生成できないんじゃないかと」


「例に用いるのがレイトじゃこの理論に納得はできないな……」


グリムも唸る。


「そういうと思ってデュークに協力してもらってます」


ソアの息子デュークは八聖3位のクラモール家の長男だが魔力量が人並という問題を抱えている。理論や応用などはかなりの才を持っているのだが……魔力の低い当主が他の家に認められるだろうか。


「デュークの魔力値は500です。これは今までの測定器ならばの話です。しかし、正負を分けて測定すると正が9000、負が8500あることがわかりました」


「……つまりうちの息子は9000の魔力を持っているが、8500打ち消されているという事か?」


「そうです。しかし、この負の魔力を生かす方法もあります。そうだよね、ルナ?」


『ええ、私たちはこの“負の魔力”の総量を基準に契約するわ』


「……なんと」


人間から見ると0。しかし、ルナから見ると莫大というレイトの魔力の謎がこれで解けた。


普通、精霊と契約した人間は魔力量が大きく上昇する。

レイトの理論で説明すると、例えば正1000 負100の人物がいたとすると現行の測定器で測定すると魔力値は900となる。しかし、精霊と契約し、負の魔力を精霊に譲渡し、さらに精霊の力を得ると測定結果は1190となる。


下位精霊の場合還元されるのは90%、中位以上なら110%の魔力還元があるらしい。


「つまりうちの息子も……」


「そういうことらしいぜ父さん」


扉を開けてデュークが現れる。


「デュークの場合は負の魔力が大きいので上位精霊と契約することはできるだろうとルナが」


「その場合オレの魔力値は18000ぐらいになるらしいぞ?」


「!!……王の御前だ落ち着けデューク」


歓声をあげそうになったソアだったが何とか飲み込んだ。自分の倍近くの魔力を持てる可能性があるということを素直に喜んだ。


「つまり僕もその装置で測ってみたらもしかしたらもっと魔力を得られる可能性があるということかな?」


ヴィラド王子が声を上げる。彼の魔力値は2000と歴代のグロリアス家の当主と比較するとかなり低い。


「測ってみますか?」


レイトに渡された装置を手に持ち、魔力を込める。


正が9000、負が7000。正の魔力だけで中位精霊と契約しているソアと変わらないほどの魔力を持っていた。

それに続いて、精霊と契約していない王とルナフォード夫妻が試すが、負の魔力値は10前後とまったく高くなかった。

ルナによると正の魔力が高い両親からは負の魔力を多く持つ子供が生まれやすいのではないかという。


「ちなみにルナ様のような聖霊と契約するには……」


『ん?私?多分だけど50000ぐらい無いと私の魔力に押しつぶされて死ぬかもね』


精霊の大きすぎる力を緩和するためにも負の魔力は必要らしい。


ルナ曰く、自然界で自ら魔力を作れるのは魔物と人だけらしく、後の生物は外部からの供給で魔力を得ているらしい。


「……?そういえばヴィラドはどこへ行った?」


「王子なら精霊の谷に向かうと部屋を出ましたが……」


「どうして止めんのだグリム!」


「よっしゃオレも行くぜ!」


「デュークはやめといたほうがいいんじゃないかな。今の状態じゃすぐ死ぬよ?」


「死!?」


『君もレイトと一緒に私が鍛えてあげようか?』


「聖霊の教えか……これは乗っとくべきかな」


「ソア!早くヴィラドを追え!」


「は!?でも、うちの息子も……」


「お前のトコの息子はグリムとレイトが面倒を見る」


「なんで私も!?」


王の丸投げに反論しようとするグリムだったが完全に無視される。


ここで話されたことは3家の秘密とすることが決まった。

もちろんいきなり公表しては大混乱になる可能性があるからだ。ひとまず、レイトの生み出した測定器を研究するところから始めるらしい。



そして、これから2年後の春、レイトはデュークと共に精霊の谷へ旅に出る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ