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負の魔法使い  作者: 山吹十波
route 01:太陽の玉座
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01-19 月の学園

ナダレ・ノースウィンドとその妻が幽閉され、トウキが学園をやめ騎士団に入ってから1年が経過した。

ライナは4年生に進学したが、生徒会長の席を下り、次代には3年生を押しのけてディアナが、副会長にはデュークが着任した。

投票結果を見て大いに悔しがったデュークだったが、早々にディアナには勝てないと判断し、副会長に収まったのだった。

さらに、書記にはローズを加え、会計を空席とした。これは、レイトが断ったためもあるが、もう一つ事情がある。


2年生登校初日。

クラス分けは成績順となるため、2年A組には錚々たるメンバーが揃う。


レイト・ルナフォード

ディアナ・ルナフォード

ローズ・アドルート

レイカ・ノースウィンド

デューク・クラモール

リディア・スフィア

エリザ・マナテム(分家から宗家へ)

ビアンカ・アイベルダ


成績順に並んだこの名簿を見て全校生徒に緊張が走った。

ちなみに担任はシモン・グレアストである。


「しかし、エリザが水聖の分家だったとはな」


机に腰掛けたデュークそういうと、隣に立つマキナが頷いた。


「ホントだよね。急に八聖に昇格したって言うからびっくりしちゃった」


「分家と言っても末端も末端だったのだけど、うちより上はほぼ全部摘発されちゃって」


「……その節はご迷惑をおかけしました」


その話を後ろの席で聞いていたレイカが謝罪をする。


「いえいえ、レイカさんが悪いわけではないですし。どちらかというと家徳が上がって嬉しいですし」


「嬉しいか?めんどくさいだけだぞ?貴族なんか」


「それはそうと、デューク。講堂に行かなくていいのか?」


「あ…………」


その瞬間扉が勢いよく開きディアナが現れる。


「デューク!入学式の最終準備があるって言ったでしょう!?」


「す、すまん……」


ディアナに連れられてデュークが教室を出る。


「さて、今年も新歓は研鑽派が勝つかな?どうだ?ダイヤのK」


ビアンカがカードをもてあそびながらレイトに近づく。


「まあ、勝てるように努力しますよスペードのQさん」


そう返すと、レイトは席を立つ。


「少し早いですが、そろそろ行きますか」


「そうですねレイト兄様」


「……兄様はやめてくれないか」


「では“お兄ちゃん”と」


「はぁ……」


ノースウィンドの事情が落ち着いてからレイカが異常に懐くようになった。

ディアナがいる時はしょっちゅう喧嘩をしている。


そして、ディアナを不機嫌にさせる問題はもう一つ。


「レイト!おはよう!」


扉から飛び込んできたそれは今まさに外に出ようとしていたレイトに抱き着くと頬にキスをした。


「……おはようございます。トウカさん」


「昔みたいにお姉ちゃんって呼んでほしいな」


「それは難しい注文ですね……」


「レイト、相変わらずモテモテねぇ……」


トウカの後ろから駆けられた声に視線を向ける。


「ああ、リディア。おはよう」


「で、いつ私と結婚してくれるの?後ろのそれと抱き着いてるのは血繋がってるんでしょ?」


「ええ、まあ」


「つまり私の勝ちね」


「ちょっと待ってもらおう」


胸を張るリディアを止めるのはビアンカ。


「ここはアイベルダとの友好のためにも私との結婚などどうだろう」


「あなた王姫でしょ?」


「問題ない。ルナフォード公爵家なら良いと赦しはもらっている。降嫁する準備は整っている」


「あの、話が見えないんですけど……」


レイトが頭を抱える。

周りの女性陣がきゃあきゃあと騒いでいるのを遠目で眺めながら、講堂に向かう。

誰がレイトの隣に座るか、という問題に直面したが、先に座り無言の威圧を掛けるライナとレイカの年上コンビに負け、おとなしくそれぞれの席に着く。


粛々と式は進められ、主席のスピーチが始まった。


『1位987点 シャロン・グロリアスさん。壇上へお願いします』


一気に会場内がざわめく。

あまり公の場には姿を現さなかった王女が壇上に登ったからだ。


「あれが………」


「何度か会ってるけど、やっぱり圧倒されるぐらい綺麗よね……」


トウカとライナが目を奪われている。

レイトが壇上を見上げ、その姿を視界に入れるとふと目が合った。

そして、


「ウィンクしたわね、レイトに」


「ええ……」


「まったく……」


戸惑うレイトをよそに淡々とスピーチを終え、壇を下りる。

その後も滞りなく入学式は進み、無事終わった。


新入生たちは教室へ案内され、レイトたちもHRを行うため一度教室へと戻った。

そして、昼休み。

レイトたちは、一般生徒からは近づき難いメンバーで構成されたグループで食堂へと入っていった。


「お、アレ姫様じゃないか?」


「ほんとだ、案の定取り巻きがすごいね……」


「姫様の相手の事はまだ公式発表されてないからチャンスがあると思ってる奴も多いんだろうなぁ……」


「お相手決まっているんですか!?」


ディアナの隣に立つローズが驚く。


「ローズも知りませんでしたか……」


その時、シャロンを取り囲んでいた人垣が割れる。


「お?」


「あー……」


「レイト」


シャロンがまっすぐにレイトに歩み寄り、抱き着いた。


「久しぶりですね」


「一昨日もお会いしましたし、試験勉強のあいだもずっと一緒だったでしょう?」


「それもそうですね」


茫然とする一同。

溜息をつくのはディアナ。

一方のシャロンは余裕の表情でレイトから離れこちらに一礼する。


「えっと、レイトの友人の皆さんに初めましての方はいないと思いますが、シャロン・グロリアスです。どうぞよろしく」


「あーあ……厄介なことになりそうな予感」


「大変ねぇ、あなたも」


「人ごとじゃないよ、ルナ」


「えっと、王女殿下とレイトはどういうご関係で……?」


「ええ、私とレイトは「ちょっと待って、シャロン」


レイトが慌てて止める。


「もういいではないですか。変に期待を与えて言い寄られるのは嫌ですし」


そう言い切ると、改めてシャロンが告げる。


「私はレイトの妻です」


「「「「「「……………え」」」」」」


女性陣がフリーズする。

そして、聞き耳を立てていた取り巻きたちも固まる。


「……レイト、いつの間に既婚者の仲間入りを……」


「おかしいな。まだ籍は入れてないはず……」


「ちょっとまって、え、ライナさん知ってた?」


いち早くフリーズから脱したリディアがライナに尋ねる。


「ええ、昔からディアナとシャロンと私で取り合いしてたから」


「……昔からこんななんだ、レイトの周り」


「え、レイト君王女様と結婚するの!?」


「声が大きいですよ、マキナ」


「……今年も波乱の幕開けだな、レイト」


「ああ……」


「羨ましいとは思うけど、お前刺されるんじゃないか?」


「やめてくれ、こわいから」


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