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負の魔法使い  作者: 山吹十波
Chapter 01:reuNion
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01-07 勝利の立役者

「お疲れ様レイト、ディアナ。おかげで今年は圧勝どころじゃないわ」


「いえ、基本的に僕は立ってるだけなので」


『私の功績は主であるレイトの手柄だ』


「ボルト様もそうおっしゃってることだし、誇っていいのよ?」


「いやいや……」


「「会長!」」


ライナさんを呼ぶ声に一斉に集まっていたメンバーがそちらを向く。


「あら、レギア、ロカ、どうしたの?」


「どうしたのではないです!そいつらはいったい何者ですか!?」


レギアと呼ばれた男が叫ぶ。


「新エースのレイトと新クイーンのディアナだけど……」


「交替はジャックだけではなかったのですか!?」


「いや、だってさ。あなたたち4年でしょう。潔く抜けなさいよ」


「しかし、ノースウィンド副会長もまだ魔術派(クラブ)のキングをやっていることですし」


「トウキと戦うならなおさらあなたたちは下りるべきよ」


「一年の精霊使い如きにオレが劣るというのですか!?」


「劣ると思うけど?」


声を上げたのは、デュークだった。レギアに注目していた視線がデュークに集中する。


「オレはレイトの事よく知ってますが、たぶん、センパイ程度じゃ足元に及ぶどころか視界にも入らないですよ?」


「……それは言い過ぎだって」


「そもそも姉ちゃんが選んだんだ。文句があるなら他の派閥に行けよ」


「くっ……しかし……」


「じゃあ、チャンスを上げようか?レイトとちょっと戦ってみるとか」


「!、その期待に応えさせていただきます!」


「……期待とかとは違うと思うけど……公開処刑?」


「えっと、僕放置で話進めるのはやめてほしいんですが」


「え?私もですか……はぁ、兄様がやるならお受けしますが」


ため息をつくレイトと特に興味がないという様子のディアナ。


「別に派閥なんかに微塵も興味ないですから返しますよコレ」


レイトが持っていたカードを投げ渡す。


「それではライナさん、僕はローレンスさんの所へ行きます」


ハートのエースのカードを見せながらその場から立ち去ろうとするレイト。


「あ、兄様が抜けるのなら私も」

「では、私も」


ディアナとローズも立ち去ろうとする。


「……オレも抜けて良い?レイトと敵対するのだけは嫌だ。死にたくねぇし」


ライナに訴えるデューク。ただし、その視線は無視される。


「レイト。お願いだから行かないで、私は……「ふ、怖気づいたか!やはりエースの座はオレにこそふさわしい!」……ちょっと黙ってなさい!」


勝ち誇るレギアに電撃を浴びせるライナ。


「そういえば、レイト君だっけ?実子じゃないそうね」


「……ええ、それが何か?」


「どこの馬の骨ともわからない人物がライナ様の近くにいるのはふさわしくないわ」


「まあそういう見方もあるかもしれませんね。でも、これでもルナフォードの人間ですよ僕は」


「私はコーネリア家の人間。クラモール家の分家の」


「あら、そんなことが不満なの?どうする?レイト」


「……どうしましょうね」


ロカ・コーネリアよりも不敵な笑みを浮かべるライナに警戒するレイト。


「やっぱり結婚しましょうか。クラモールに婿入りするといいわ」


「ああ、それオレも賛成。そんで俺の仕事手伝ってくれればなお良し」


「《豪炎の力を我が手に》―ファイヤーボール・ドス」


突然撃ちこまれた大火球。それがレイトに直撃する。


「レイト!?」


ライナが叫ぶ。


「はぁ……フレア、少し手伝って」


『りょーかい』


「ななな、なぜ無傷なんだ!?」


「私が説明しましょうか?」


背後にぬっ、とあらわれた男に驚く一同。


「ああ、ローレンス。何しに来たの?」


特に焦った様子もなく、ローレンスに話しかけるライナ。


「私のレイトを引き抜く気なら、本気で潰すけど?」


眼がマジだった。

後ろに控えるデュークが本気で怯える。


「いや、レイト君の本気が見れそうだったので」


「なるほどねぇ」


「えっと、上級精霊2人とか同時に操れるんですね……」


「だね」


「とりあえず、なんで無傷なのか説明してくれない?」


二度ほど満足気に頷いて、口を開く。


「高位精霊と契約している者はその精霊より下級の魔法では傷つかないようです。もちろん、同属性に限りますが」


「……何だそんな事か」


「それぐらい、ウチの家でもわかってるわ」


まあ、そもそもレイトが見つけた理論だしな、とデュークがローレンスには聞こえないようにつぶやく。

ローレンスは肩を落としている。


「とりあえず、火力で勝負したいなら、フレア」


『任せて《Baile Brille Hermoso - una llama》―フレア・ダンサー』


急いで耐火魔法を唱えるレギアだったが、上位精霊の前には全く意味をなさない。

レギアを中心にかなりの広範囲が炎に包まれる。


「うわぁ!?」

「おい、離れるぞ」

「熱っっ!?」


野次馬達からも悲鳴が上がる。


「いやー、すごいですね上位精霊の本気は」


『は?ローレンス、それ、本気で言ってる?』

『ホムラでもアレぐらいはできるよ?』


「……すいません訂正します」


「どっちか主人なのか……」


「あれ位だと、3割も出てないんじゃないか?」


「ガーネットはあれ位の火力出せますか?」


『ええ、一応は』


「あらら、一撃でダウンみたいね」


ライナが炎の円の真ん中で気を失っているレギアを見て、満足気に笑う。


「姉ちゃん、悪役みたいだな……」


『鬼畜?』


デュークの声に反応して、ティアが無邪気に言葉を発する。

ライナの鋭い視線が飛ぶ……デュークに。


「兄様、怪我はないですか?」


「うん、特には」


ぺたぺたと体に触れて確認作業を行うディアナ。


『大丈夫大丈夫、レイトは私が守ってたから。ボルトだっているし』


「それならいいんですが……」


「というか、この後ってなんかあったっけ?」


デュークがライナに確認する。


「いえ、去年までなら、一年生はほぼダウンしてるけど、上級生がまだドンパチしてる時間だったし……その辺どうなんですか?グレアスト先生」


「うおぁ!?いつからいたんだ!?」


いつのまにか隣に立っていたシモンにデュークが驚く。


「今年は、おかげで早く終わりましたからね。解散でいいんじゃないですか?ねぇ、学院長」


「そうねぇ」


「シンシアさんもいつから居たんですか!!?」


「息子と娘の成長を見届けるのも親の務めよ?まあ、残念ながら本気は見れなかったけど」


「いや、レイトが本気出したらこの国滅びますよ?いいんですか?」


「んー……まあ、良いでしょ。あらかじめシャロンでも嫁にもらっておけば何とかなりそうだし」


「その発言はかなりまずいかと……」


シモンが苦笑いを浮かべる。


「じゃあ、解散でいいのよね?はい、解散―!」


ライナの声に、一同が散らばっていく。


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