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負の魔法使い  作者: 山吹十波
Chapter 01:reuNion
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01-06 北風と月光

レイトを送りだし、ディアナがレイカの方を向く。


「さて、自己紹介からします?いきなり魔法の撃ち合いというのも淑女としてどうかと思うので少しお話でもします?幸い、周りの皆さんは寝てしまったようですし」


「えっと、レイカ・ノースウィンドです」


「私はディアナ・ルナフォードです」


「……双子?」


トウカが首をかしげる。その動きに合わせてイタチ精霊も首をかしげる。


「いえ、兄様は一年遅れて入学しているので一つ上です。あなたは、魔術派(クラブ)の代表トウキ・ノースウィンドの妹で間違いないですね?」


「はい。ただし、私自身は兄の言う派閥などにはあまり興味はないのですが」


「奇遇ですね。私もです。お兄様の事が嫌いなのですか?私は2人兄がいますがどちらも私に優しいので好きです」


誰も聞いてないことを淡々と述べるディアナ。


「……嫌いというわけではありませんが、お兄様とお父様の思想は今一つ賛同できないのです。魔力が絶対などと誰が決めたのですか……」


顔を伏せるレイカ。


「私は彼らの主張を肯定しませんが、少なくとも現代の風潮ではその考え方は正しいのでは?」


「その風潮のせいで私のもう一人の兄は死にました!」


なるほど、兄様はノースウィンド側では死んだことになっているのね。と、ディアナは呟いた。レイカには聞き取れなかったようなので、問題ない。


「じゃあ、あなたは何で魔術派(そっち)にいるの?」


「それは……」


「戦ったらわかるかもしれないですね、―《夜をも越える暗き力を我が手に》―ダーク・バレット」


「くっ……《気高き氷の僕よ、我が身を守りたまえ》―アイス・シールド」


しかし、ディアナの闇の弾丸はレイカの氷の盾を簡単に貫いた。


「うっ……どうして!?あなたの魔力値は私とほとんど変わらないはず!」


弾丸の直撃を食らった肩を抑えながら、レイカがよろめきながらたちあがる。


「全力じゃなくても満点は出せるんですよ?アレ。それより、私たちのデータを漏らした教員をクビにしないといけないですね。一応機密なので」


どこから取り出したのか、紙とペンを持ちさらさらと手紙を書いていく。そして、羽根型のピンをつけて空に放ると、まっすぐに飛び去った。


「ああ、これですか?兄様が作った自動魔力感知・追尾装置らしいです。まだ試作段階で魔力が高い者にしか使えないですけど」


今の手紙はどうやら理事長の所へ向かったようだ。


「それじゃあ、続きをしましょうか。早く戻って兄様に褒めてもらわないといけないので」


ディアナが駆けだした。それと同時に呪文を唱える。


「《すべてを塗りつぶす光をここに》―フラッシュ!」


目晦ましがきた。


「!?……どうして、光を、つかえるの!?」


視界を奪われたレイカが問う。

一般的に人が扱うことができるのは、一人一属性のみ。

ただし、自分の属性と違った属性の精霊と契約することで、他の属性も扱うことができるようになることが判明した。

これはレイトによって精霊たちに話を聞いた結果判明したことだ。

公表はされていないが、スフィア家に研究させているらしい。というか、ローレンスがその結果である。


「さて、どうしてでしょう。―《人を追う影の力を我が手に刃として顕現させよ》―シャドウ・ブレイド」


「《根源たる魔力の壁よ、我が身を守りたまえ》―マジックガードっ!」


氷で構成されたアイス・シールドよりも、純粋な魔力で構成されたマジックガードの方が防御力は高い。

が、ディアナの方が上手だった。


マジックガードを粉砕し、レイカを吹き飛ばした。気を失い、動かないレイカを見ると、ディアナは服を払って歩き出した。


「さて、とりあえず兄様に褒めてもらいましょう」


兄の元へと歩き出した瞬間、背後から攻撃が来た。

もちろん、こんな攻撃を食らう彼女ではないが。


「まったく、あなたたち姉妹は不意打ちが好きですね……トウカ・ノースウィンド」


「一応、あなたの先輩なのだけど?」


「私、身内以外は興味ないので―《常闇の世界より、我が手に牙を与えたまえ》―シャドウ・ブレイド・ツヴァイ」


「!!……上位詠唱!?上級魔術師級ですよ!?」


トウカの顔から余裕は消え、回避に集中する。


「さすがに、これでは辛いわね……セツカ」


『仕方ないなぁ』


トウカの体格に出現した彼女の精霊から無詠唱で氷弾が撃たれる。


「くっ……《終焉の闇よ、私の世界を覆え》―ダーク・フィールド」


ディアナを中心に展開された闇のドームが氷弾を全て弾く。


「ディアナさん。魔術派に来ない?」


「嫌です」


「どうして?」


「兄様がいないので」


「じゃあ、お兄様ごと来ればいいわ」


「それはあり得ません。兄様がノースウィンドの元に戻るなんて、私が許しません」


「……それはどういう事かしら?」


その時、終わりを告げる魔法弾が撃ちあがった。


「終わりのようですね。言い忘れていましたが、ノースウィンド先輩も精霊派(ハート)は移動したらどうですか?精霊主体で戦った方があなたは強いと思いますよ?」


「……精霊使いでもないあなたに言われるセリフじゃないわ」


『トウカ、あの子精霊いるよ?私より強いのが』


「え!?」


「じゃあ失礼しますね」


何か言いたそうな顔をしているトウカを無視して歩き出そうとする。


「ディアナ、迎えに来たよ。ライナさんが待ってるから早く行こう」


「兄様!」


途端に顔を輝かせて、レイトの方に駆け寄る。


「ノースウィンドの眷属を楽に倒せました。兄様の訓練のおかげですね」


「御礼ならルナに言ってあげて。僕は何もしてないよ」


談笑しながら歩き去る兄妹。


「レイ…ト……?」


トウカのつぶやきだけがグラウンドに残った。


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