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イチゴさんのにおいを追ってきました

 しばらく鷲の後をおとなしくついていったが、あまりに遅いので捕まえて頭の上に乗せることにした。


「案内よろしくお願いしますね」


 鷲は何の声も出さず、羽を広げて道案内のように行く先を指し示す。

 その通りに進んでいくと、拝殿や神楽殿は素通りし、本殿にむかっているように思えた。


 まさか本殿に入るつもりじゃないだろうな。

 そんな恐ろしいこと、できればしたくはないんだけど。


 鷲は本殿前まで来ると、さらに奥の方を指し示す。

 どうやら中に入るようなことはないようだ。

 でもいったいどこにむかっているんだろうか。


 進んでいくとたどり着いたのは本殿の裏側だった。

 そこにもなぜか小さめの扉があって、この中が目的地のようだ。

 しかし開けようにも鍵がかかっていて中に入ることができない。


 どこかで鍵を手に入れる必要があるのか。

 まさかフラグ回収し損ねた?

 まさかまさかゲームオーバー?


 というわけでもなく、鷲が急に私の頭から飛び降りると、自分の足の爪を鍵穴に突っ込んだ。

 いやいや何してるのこいつ。

 そんなんで開くわけが……。


 と思った瞬間、錠がカシャンと音を立てて外れた。

 うっそ~ん。


 さらに鷲さんは羽を使って扉を開こうとしてくれる。

 ああ、それくらい私がやりますよ~。


 私が扉を開くと、出てきたのは地下に伸びる木造の階段だった。

 明かりなどなく、真っ暗の空間がそこにある。


 これは怖い、でももしかしなくても行かないといけないんだよね?

 そのために連れてこられたんだよね?


 というか、これってユーノさんが言ってた場所とは違うんじゃないか。

 ふたりとも追いかけてこられるかな。

 合流するのを待ってからの方がいい気がするけど。


 そう思っているのに、この鷲さんはまったく気持ちを汲んでくれない。

 勝手に中へ入っていき、足を滑らせ、闇の中へ消えていった。


「ああ、もう!」


 私はスマホのライトを使って、鷲さんを追いかけ階段を下りて行った。

 階段の勾配は、歴史のある建物には珍しく意外と緩やかだ。

 最下段までまっすぐに伸びていて、その先に鷲さんは転がっていた。


 私が揺すると、ちゃんと生きていてすぐ自分の足で立ち上がる。

 そして顔をあげたすぐ右手に、またも扉があった。

 今度は鍵がないようだけど、そのかわりにとても神聖なものを感じる造りになっている。


 こんなところにいったい何があるというのだろうか。

 私は勇気を出して扉を開いてみることにした。


 慎重にゆっくりと扉を引いていく。

 少しできた隙間から中を覗き込んでみる。


「え?」


 そこに広がっているのは、あちこちに青や紫の水晶がちりばめられた空間。

 いや、もはや水晶で作られた空間と言ってもいいくらいだった。


 それに空間の広さがおかしい。

 下りてきた階段はせいぜい建物一階分くらいだ。

 なのにここは、まるでドームかと思うくらいに天井が高く、そして広い。


 異空間……ということなのだろうか。


「イチゴさ~ん!」

「ユーノさん、ヨミちゃん」


 後ろから声がして振り返ると、いつの間にかふたりが追いついてきていた。


「ふたりともよくここがわかりましたね」

「イチゴさんのにおいを追ってきました」


 ねえ、なんで君たちはにおいで判断できるの?

 それは気配とかそういうのじゃなくて、本当の意味でのにおいなの?

 私そんなに特殊なにおいを放ってるのかな……。


「そんなことよりここは一体……」


 ユーノさんはこの場所を知っていたのだろうか。


「ここは恐らく水晶の間と呼ばれていた場所のはずです、まさかこんなところに隠されていたなんて……」


 存在は知っていたけど、場所までは把握してなかったってことか。

 でも鷲さんはこの場所を知っているみたいだったな。

 それにわざわざ私をこの場所まで連れてきた目的はなんだ?


 私は鷲さんを抱き上げ、目と目で見つめあう。

 鷲さんは何も答えず、しばらくして私の腕がプルプルし始めたころ、いきなり手を振りほどいて飛んで行った。


 そしていきなり光に包まれると、どんどんまぶしさを増していく。


「な、なに?」

「さっきの鷲が光っているの?」


 あまりの光量に、みんな手で目を守りながらも視線は外さずにいる。

 視界がいったん真っ白になってから光がおさまっていくと、そこには女の人がひとり立っていた。


 それははっきりとは覚えてないけど、見たことのある女性の姿。


「お母……さん?」

「「え?」」


 おそらくその人は私の母親と思われる女性だった。

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