鷲だ! かっこいい!
「これは多分、踊り場ごとに敵がいるような気がしますね」
再び階段をのぼり始め、その間にユーノさんは言った。
まるでゲームみたいだけど、私もそんな気がしている。
だからその嫌な予感はきっと当たるんだろう。
覚悟はしつつ、階段をのぼっていく。
やはり予感は的中し、踊り場でまたも敵に襲われる。
さっきと同じようにユーノさんが雑魚を蹴散らし、その間に私が魔法銃を打ち込む。
このパターンで順調に階段をのぼっていく。
あと何回出てくるんだろう。
まさかゲームみたいに100層あったりとかしないよね。
次の踊り場までの間隔がそんなに長くないから、あまり休むことなく戦い続けている。
魔法銃で魔力を消耗しているせいか、だんだん疲労を感じるようになってきた。
軽いとはいえ背中にヨミちゃんを背負っているから尚更だ。
背中に当たる突起の喜びよりもしんどさが上回ってくる。
しかし、ここで降りてもらうわけにもいかなくなっていた。
ヨミちゃんがだんだん苦しそうにし始めたからだ。
目的地に近づいていることと関係があるのかな。
ここはなんとか私が頑張らないと。
しかし次の敵を倒したところでヨミちゃんの体調がさらに悪化。
一度休憩をはさむことになった。
ヨミちゃんを背中からおろして座らせる。
「寒い……」
「ヨミちゃん大丈夫ですか!? 裸で温めあいましょうか?」
「……ちょっと黙ってて」
「はい」
呆れられちゃった、ゲヘッ!
って、冗談言ってる場合じゃない。
これってもしかしてヨミちゃんが消えてしまう前兆なのでは?
どうしていいかわからずオロオロしていると、ユーノさんがヨミちゃんの前にかがんだ。
そして手をかざし、やわらかい光がヨミちゃんを包み込む。
回復魔法みたいなものだろうか。
しばらくするとヨミちゃんの体調も落ち着いたみたいだった。
「もう大丈夫でしょう」
「ありがとう、ユーノ」
「いえいえ」
ユーノさんは先に立ち上がり、手を差し伸べてヨミちゃんが起き上がるのを支えた。
「さあ、行きましょうか」
ヨミちゃんはそう言うと自分の足で先に進み始めた。
「おんぶしなくて大丈夫ですか?」
「ありがとうイチゴ、でも大丈夫よ、もう少しで着くと思うから」
「そう? でも無理しないでくださいね」
「うん」
ユーノさんのおかげで確かに体調は戻っているようだった。
でもなんだかちょっぴり素直なところが逆に心配になってしまうよ。
再び階段をのぼり始める私たち。
さっきまでと違って、この階段はかなり長そうだ。
ここで最後かもしれないな。
ということはラスボスみたいなの出てくるかもだね。
まあユーノさんもいるし、魔法銃もあるし、きっとなんとかなるだろう。
そう思いながら階段をのぼっていると、私の後方から何かが飛んでくる気配がした。
気になって振り返ると、なぜか鷲が私目がけて一直線に突っ込んでくるのが見える。
「鷲だ! かっこいい!」
なんて呑気なことを言っている間に、鷲は私の頭をがっちりホールドした。
そのまま私の体は宙に浮き、連れ去らわれてしまう。
「あ~れ~」
先を歩いていたふたりを追い抜き、私はどんどん上までさらわれていく。
「イチゴ!?」
「イチゴさ~ん!?」
ふたりは慌てて追いかけてきてくれるが、鷲のスピードが速すぎてどんどん引き離されていく。
やがて階段をのぼりきり、大きな鳥居をくぐり、神社の境内のようなところにたどり着くといきなり地面に落とされた。
「いたた……」
お尻を打った私は、そこをさすりながら体を起こす。
鷲は少し先のところで私の方をじっと見つめて待っていた。
改めて見ると、でかいなこいつ。
私を見る目がヨミちゃんのジト目に似ていて、ちょっとゾクッとしてしまう。
鷲なのにやるじゃないか。
その鷲はいきなり羽を広げると、まるで手招きするかのようにくいくいっとそれを振った。
ついて来いと言ってるのか?
私は頷くと鷲の後を追いかけた。
……というか君、歩くんかい!
しかもおっそ!




