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ふ~、極楽ですね~

 イチゴ大福パフェを堪能し、再び大通りを歩く。

 ユキちゃんとユーノさんのブラックホールで少し気分が悪いですが。

 ミュウちゃんも同じなのか、さっきからおとなしくなっている。


「うう~……、ユッキ―おんぶして~」

「え、まあいいけど」


 数分もせずにミュウちゃんはユキちゃんの背中に移動した。

 ユキちゃん大丈夫かな。

 あれだけ食べた直後に、おんぶしながら歩くなんて結構きつそう。


 それにしてもよく懐いてるなぁ、ちょっと妬いちゃうよ。

 ミュウちゃんをおんぶして速度の落ちたユキちゃんに合わせ、みんなゆっくりと歩いていく。


 やがて建物が減り、大通りの終わりが近づいてくる。

 そこから山の方に入っていく。

 長い階段の始まりだった。


「うは~、きつい~」


 登り始めてすぐ、ユキちゃんが笑顔の涙目になった。


「私が代わりますよ、ミュウちゃんおいで~」

「は~い、とうっ」


 私が呼ぶと、ミュウちゃんはユキちゃんの背中から私の胸にむかって飛び込んできた。


「わわっ」

「わわっ」


 私もユキちゃんも同じように驚いて声をあげた。

 まさか飛び移ってくるとは……。


「はい、気を付けて背中に回ってくださいね」

「肩車がいい~」

「え、まぁいいですけど……」


 私が戸惑いながらも了承すると、まるで芋虫のようにうねうねと移動した。


「高~い」

「いや、ミュウちゃんはいつも空飛んでるでしょ……」


 こんなのよりはるかに高いところにいるじゃないか。

 楽しそうにしてくれるのは私もうれしいけどね。

 あとミュウちゃんの太ももが柔らかいよ、げへへ。


「危ないから暴れないでくださいね」

「は~い」


 なぜかほとんど重さを感じないが、ちゃんと落ちないように注意して階段を登っていく。

 ミュウちゃんの着ているポンチョのモフモフに首が包まれて温かい。


 今登っているこの道、多くの人が通るのだろうか、かなりきれいに整備されている。


 さすがにここまで飲食店が続いているということはなく、道の外は完全に山だ。

 もしかして結構日常的に利用されている温泉なのかな。

 白い石畳の階段を進みながら、これは意外と楽に着くかもなんて考えていた。


 しかし階段であることに変わりはなく、少しずつ足が疲労してくる。

 しばらくして階段が終わり平坦な道が伸びているのが見えた。

 ほっと安心したのも束の間、今度は長そうな坂道が続いている。


「もう少し……かな?」

「ここからが本番だったりして」


 私のひとりごとを聞いて、ユキちゃんがそっとつぶやいた。

 それは嫌だな。

 というか、少し辺りが暗くなってきたような……。


「ちょっと急ぎましょうか」

「そうですね、せっかくなら夕陽を見ながら温泉につかりたいですし」


 私の言葉にユーノさんがニコッと笑う。

 なぜだろう、この方には一切疲労の色が見えない。

 これも女神様の力なのだろうか。


 とりあえず少し急ぎ目に坂道を進んでいく。

 思ったほどつらくはないけど、間に合うかどうかだよね。

 あとどれくらいなんだろう、結構上ってきたはずだけど。


「あ、何か書いてあるよ」

「うん?」


 頭上でミュウちゃんが指差したその先に大きめの看板が置いてあった。

 そこには『温泉』とだけ書かれている。

 一本道なので、間違いなくこの先にあるんだ。


「やっと着きましたね~」


 かなりお疲れな様子のユキちゃんが、ふらふらと私の方に寄ってくる。


「早く入りに行きましょうか」

「はいっ」


 ミュウちゃんも地面の上に降り、みんなで奥に進む。

 こんな立派な道が作られていても、建物などは見当たらない。

 完全に自然の中にあるんだろう。


 道が細くなり、ちょっとした柵で仕切られた一画を見つける。

 そこからは湯気がのぼっていて、さらにその奥にはきれいな夕日が見えた。


「おお~!」


 温泉のむこうには視界を遮るものは一切なく、水平線に沈む夕日を拝むことができる。

 この絶景と入浴を同時に楽しめるなんて、とても素敵な場所じゃないですか。


「わ~い」


 いつの間にか服を脱ぎ捨てたミュウちゃんが、温泉にむかって駆けていった。

 私がその服を集めている間に他のふたりも服を脱いでいく。

 ……いいねっ!


 私は恥ずかしいから隠れて着替えよっと。

 あ、でもタオルとかまったく持ってきてないね。

 そこの柵にでも隠れて脱ぐとしますか。


 そして生まれたままの姿になって、温泉へとダッシュ。

 無事にお湯の中につかることができた。


「ふ~、極楽ですね~」


 全身の力を抜いてだら~んとしながら、沈んでいく夕日を眺める。

 ミュウちゃんは一番海側から身を乗り出すようにしてはしゃいでいた。

 そしてユキちゃんとユーノさんが私の両側にピタッとくっついてくる。


 近い近い。

 お湯の中だけど、生で触れあうこの感じ。

 すごくドキドキする。


「イチゴさん、3つ目のスタンプの条件クリアです」

「あ、そうでしたね」


 みんなであったかいところでゆっくりする。

 ただし全裸に限る、という条件。


「スタンプ送っておきましたので、後で確認しておいてくださいね」

「は~い」


 うん、後でいいや。

 今はのんびりとしていよう。


 これでスタンプの旅は終わり。

 楽園の中のさらなる楽園への道は開かれたということだ。


 そして私は選らばないといけないんだね。

 夢の楽園か、現実世界かを。

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