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懐かしいって感覚は不思議だと思う

 クッシーの上で揺られること1時間。

 私たちは3つ目のスタンプがある愛の街にいた。


 この街は港町ではあるけど、自由の街みたいな島ではない。

 歴史を感じる古い建物が並ぶ、懐かしい雰囲気の街。


 昔の京都みたいっていうとわかりやすいかな。

 私の生活圏にはこういったところはなかったけど、たまに雫さんとかに連れて行ってもらったりしたよ。


 3つ目の街がこういう場所だってことには何か意味がある気がする。

 今までの街は私の夢や憧れを反映していた。

 でもここは私の過去を見つめ直すための場所なんじゃないか。


 きっとそうに違いない。

 私はここでスタンプよりも大事なことを成し遂げなければいけないんだ。


 とにかくまずはユキちゃんと合流しようか。

 いつものようにまわりから浮いてる建物に違いない。


 まあでも、焦ることはないか。

 この世界でそうそう追い詰められることはないだろうし。


「ミュウちゃ~ん、おいで~」


 先ほどから私の前でキョロキョロと街を見ているドラゴン少女に声をかける。

 クッシーのことはかなり詳しかったのに、ここに来たことはないのだろうか。


「お姉ちゃん、なんか不思議な場所だね」

「そう?」


 私には今までの街の方が不思議でいっぱいだったけど。

 島の中に四季が分かれてたり、お汁粉が湧いてたり、スイカが木に実ってたり。

 それらに比べればここはなんて現実的な場所なんだろう。


 まあでもこれから何が起きるかはわからないけど。

 それに後ろを振りむけば、まだ港にはデフォルメクジラのクッシーがいる。

 まだまだ夢の世界は続いてるね。


「ミュウちゃんはこういうところ初めて?」

「うん! でもなんか懐かしい感じがするよ」

「そっか」


 懐かしいって感覚は不思議だと思う。

 だって行ったことないところでもそう感じたりするんだから。


 私たちが日本らしさを見て懐かしくなるのはまだわかる。

 でもミュウちゃんが同じように感じるのはなぜなんだろうか。

 もちろん私の見ている夢だからということもあるだろうけど。


「さ、ユキちゃんをむかえに行こっか」

「は~い」


 自然と私たちは手をつないで歩く。

 出会ったその日だというのに、すっかり姉妹みたいな感覚だ。

 ミュウちゃんは神様なんだけどね。


 私に妹が欲しいって願望でもあったのかな?

 いや、もしかしたら娘が欲しいのか?

 妹なら桃ちゃんが近いし、本当にそうかもしれない。


 でもなぁ、私は現実世界でも22歳だし、こどもとかまだまだ考えられないよね。

 それこそミュウちゃんくらいの歳の娘がいたら、いったいいくつで生んだんだって話ですよ。


 しかもこっちの世界での私は多分14歳くらいだ。

 やっぱりミュウちゃんは妹だな。


 そして桃ちゃんも妹で、雫さんがお姉ちゃん。

 ユーノさんもお姉ちゃんだよね。

 杏蜜ちゃんは妹寄りで、芳乃ちゃんはお姉ちゃんっぽいかな。


 そして雪ちゃんか。

 あの子はずっと桃ちゃんの友達としてみてきたところがあるから、どっちかというと妹なんだけど。


 でもなんか違うんだよね。

 あの子の笑顔は心の奥の深いところの闇まで救ってくれる気がする。

 それとすごくドキドキしてしまう。


 これは恋か、恋なのか、ってやつです。

 はやくこの恋を実らせて、愛を育みたい。


 しかし好かれてる自信がないぞ。

 こっちのユキちゃんならともかく、現実の雪ちゃんには若干引かれてる気がしないこともないし。


 私みたいな性格悪いやつを受け止めてくれる人は、きっと雫さんくらいだろう。

 ぐああああ、胸が苦しいよ~。


「お、お姉ちゃん大丈夫?」

「へ!? ああ、大丈夫だよ」


 いかんいかん、あまりの苦しさに崩れ落ちてしまったよ。

 頑張れ私!

 まだ間に合うかもしれないだろう?


 雪ちゃんに釣り合う人間になるんだ。

 とりあえずこちらのユキちゃんと合流するまでに気持ちを落ち着けようか。


 そして大人な私を見てもらうのさ。

 まずは深呼吸だ。


「す~は~……、す~は~……」

「……お姉ちゃん、なんで私のにおいなんて嗅いでるの?」

「あれ!?」


 おっとイケナイ。

 いつの間にかミュウちゃんを抱きしめて、胸元のいい香りを堪能してしまったよ、ハハ。


 大人の女になると決意したばかりでこれでは。

 こんなところユキちゃんに見られでもしたら……。


「あ、いたいた、イチゴさ~ん!」

「フォオオオオオオオオオオオオ!?」


 突然後ろからかかった声に驚き、私は変な悲鳴をあげながらその場から飛びのいた。


 このタイミングで来る人多すぎだよね。

 本当心臓に悪い。

 誰が来たのかはそのきれいな声で分かっているが、ちゃんと振り返って確認する。


「ユキちゃん、わざわざむかえに来てくれたんですか?」


 お店の心配してたからなかなか出てこれないんだと思ったんだけど。

 私が聞くと、ユキちゃんは照れたような笑みを浮かべてこう返してきた。


「だって早く会いたかったから……」


 ごぉおおおおおおおおるいいいいいん!!


 はい、決まりました!

 ユキちゃんは私の嫁です。

 マジ天使ですよ。


 狙ってやってるのかっていうほどかわいいね。

 ああ、心臓がバクバクで苦しいよ~。

 私が頑張って呼吸を整えていると、ユキちゃんはミュウちゃんに声をかけていた。


「ミュウちゃん、また会えたね~」

「あ、ユッキ~だ、こんにちは~」

「こんにちは……ユッキ~?」


 いつからなのか、ミュウちゃんはユキちゃんをユッキ~と呼んでいるらしい。

 しかもユキちゃんはそのことを知らなかったようだ。

 まあ、なついてるようでよかったよかった。

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