ねぇねぇ、今のびっくりした?
私は3人分の飲み物を購入し、お店の中のテーブルに着いた。
「どうぞ~」
「ありがとう~」
「ありがとうございます」
ふたりに飲み物を渡して、一息ついたところでユキちゃんに声をかける。
「ねえ、ユキちゃんもこの旅についてきてくれませんか?」
「ふへ?」
自分で神様にお願いしたことだから、できることはやってみたい。
それにここまでしてくれてるということは、神様は私を助けてくれるはず。
「えっと、私お店があるからそんなに長くはいられないんですけど……」
「ダメ?」
お店のことで断られるのは予想していたこと。
それでも上目遣いをしてお願いしてみる。
はたしてユキちゃんに効果があるのか。
「行きます!」
「わ~い!」
「わ~い!」
ユキちゃんの了承を得ることができたぞ~!
私とミュウちゃんは手を取り合い喜んだ。
「でもお店もあるので、次の街でまた呼んでもらうということでいいですか?」
「はい、それでいいです!」
次は愛の街だ。
道中を共にすることはできなくても、その街で一緒にいれば何か進展があるかもしれない。
もちろん私が幸せになることは忘れてないよ。
ということで、今は遊びますか。
飲み物を片付け、砂浜に戻る。
そこでいっぱいユキちゃんとラブラブした後、いったんはお別れとなった。
私とミュウちゃんは、ここに来るときに見かけたクジラに乗って次の街を目指すことに。
当たり前のようについてきてくれてるけどいいのかな?
「あ、そういえばお姉ちゃん、スタンプはいいの?」
「うん、大丈夫だよ」
だってもう手に入れてるからね。
でもミュウちゃんの記憶までなくなってるのはなんでなんだろう。
あそこの神様はミュウちゃんなんだよね?
願い事を聞いてくれたのは別の神様なのかな。
そもそも願いを叶えてくれてるかもわからないか。
疑問は解決できてないけど、とりあえずクジラの乗り場にむかう。
マップを確認すると、乗り場は秋のエリアになっている。
今まで進んできた、道をさらに歩いたところにあるようだ。
うまく時間が合えばいいんだけど。
そもそもあれがどういう存在なのかもわからない。
アニメ調にデフォルメされたクジラなんて、不思議現象すぎる。
でもあのクジラが愛の街まで運んでくれるって、誰かが言った気がしたんだ。
ミュウちゃんと手をつなぎながら道を進んでいくと、遠くにその姿が見え始めた。
うん、やはり私があれに乗って次の街へ行くことは運命なのだろう。
世界は私を中心に回っている。
そんなこどもみたいなことを頭に浮かべていたら、クジラが急に港を離れて行ってしまった。
「ええ~!?」
そんなバカな。
世界は私を中心に回っているのではなかったのか?
離れて行くクジラをぼうぜんと見送っていると、急に方向転換してこちらにむかってくるのが見えた。
まさかむかえに来てくれるのか?
道の海側に寄って、手を振りながらクジラを待つ。
なんてやさしい奴なんだ。
そう思って笑顔でお出迎えをしていると、奴は私たちの前を通り過ぎて行った。
どうやら勘違いだったらしい。
とても恥ずかしくなった。
これはあれだよ。
見知らぬ人が私に手を振ってると思って、とりあえず手を振ったら後ろの奴だったみたいな。
とても恥ずかしい。
しばらくぼ~っとしていると、さっき通り過ぎたはずのクジラが戻ってきてくれた。
私がゆっくりと横を見ると、そのクジラと目が合う。
そしてまたも不思議現象で、私の頭の中に直接話しかけてきた。
『ねぇねぇ、今のびっくりした? 私、クジラのクッシー、よろしくね!』
「むかつくんだよてめぇ! プリティな目しやがって!!」
「お姉ちゃんいきなりどうしたの!? 恥ずかしいからやめて!」
「私、恥ずかしいの!?」
うわ~ん。
もう心がボロボロだよ~。
社畜のときみたいだよ~。




