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道よ開け!

 それぞれカップを持って店内のテーブルへ移動する。

 ここで涼みながら見る海もまたいい。

 私は遊ぶよりも見る方が好きかな。


 ぐるっと周囲を眺めていると、少しだけ離れたところに小さな島を見つけた。

 ちょうどそのタイミングで、ユーノさんが島を指さす。


「あの島って歩いて渡れる時間があるんですよ」

「え、本当ですか?」


 同じようなものを現実世界でも聞いたことあるよ。


「そしてその島の鳥居をくぐると、空に浮かぶ神社へ行けるんですよ」

「それって2つ目のスタンプの場所ですか?」

「はい」


 なんでそんな隠しダンジョンみたいになってるの……。

 でも空を飛んでいかなくてもたどり着けるようになってたんだね。


「何も知らずにくぐって空に連れていかれたら怖すぎですね」

「それはちゃんと行きたいって願わないとだめなので大丈夫ですよ」

「へぇ~」


 魔法で移動するのかな?

 2つ目のスタンプがあるなら行くっきゃないよね。


「いつ頃渡れるんですか?」

「もう少ししたら、多分ゆっくり歩いて着くころには渡れると思います」

「ちょうどいいじゃないですか」


 私は白玉の最後にイチゴを口に入れて立ち上がる。


「さっそく行きましょう!」

「ああ、待って~」

「あ、ごめんなさい」


 興奮しすぎか私。

 でもこういうの好きなんですよね。

 ある時間だけ渡れるなんて、ロマンチックじゃないですか。


 ふたりが食べ終わるのを待ってから、島に渡る道が現れる場所にむかう。

 たどり着いた時にはうっすらと道ができかかっていた。


「道よ開け!」


 手をかさずとほらっ!

 まるで私が海を割っているみたいでしょ?

 自動ドアにむかってやるやつだよ。


「お姉ちゃんって中二病だよね」

「え? そんなはずは……」


 ミュウちゃんにそんなこと言われるなんて。

 みんなやらないのかな。

 電車にむかって手をかざしたりしない?


「ほら行きますよ~」


 ユーノさんが先陣を切って、出来上がったばかりの道を進む。

 ミュウちゃんもそれについて先に行ってしまう。

 くっ、時代はオタクについていけないのか……。


「あ、待ってくださ~い」


 私は走ってユーノさんに追いつくと、その腕に抱きついた。


「あら、どうしたんですか?」

「ほら、こういうところって手をつなぎながら渡ると恋人になれたりしちゃったりとか」


「手をつなぐどころか腕組んでますよ」

「えへ、別にいいじゃないですか~」

「別に構いませんけど」


 わ~い、ユーノさんはやさしいなぁ。


「あ、私もお姉ちゃんと腕組むの~!」


 ミュウちゃんが私の腕に飛びついてくる。

 3連結です。


「あの~、歩きにくいので普通に手をつなぐだけにしませんか?」


 ユーノさんが困り顔で提案する。


「は~い」


 確かに歩きにくいので、いったん離れて手をつなぐ。

 私が真ん中だよ。

 なんかモテモテ気分だね。


 あれ、いつの間にかユーノさんが水着姿になってる!


 なんで、どうして、いつ?

 全然気づかなかったよ。

 でも私はこっちの方が好きかも。


「こうやってると恋人同士に見えませんかね?」

「よくて3姉妹では?」

「あう~」


 ユーノさん、バッサリですね……。


「あ、でもこうすれば……」


 何か思いついたのか、ユーノさんは私の手を放して反対側に回る。

 そしてミュウちゃんの手を握って言う。


「これでなんだか家族みたいに見えませんか?」

「家族……」


 確かにこどもを親2人がはさんで歩く姿に見えなくもない。


「なんだか照れますね……」


 さっきまでの勢いはどこへ行ったのか。

 急に恥ずかしくなってきてしまった。


「私はお姉ちゃんがお母さんでもいいよ~」

「ミュウちゃん!?」

「ウフフ」


 ミュウちゃんの言葉に驚いていると、ユーノさんがおかしそうに笑った。

 私は2人に遊ばれているのかな……。

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