かわいいって言われた!
この後、少し遅いけど朝食をとりに街へ出かけることになった。
おせんべい食べてたから別に朝食抜いてもよかったんだけど。
朝から外食なんてなかなかするものじゃないよね。
いや、深夜残業明けにご飯食べて帰ってたか。
コンビニで朝食買ってたこともあったなぁ……。
おっといけない、明るくしてないと幸せが逃げてしまう。
ミュウちゃんが連れて行ってくれたのは、すぐ近くにあった定食屋さん。
よく利用しているのか、ためらいもなく中に入っていく。
「おはようございま~す」
「あ、おはようミュウちゃん」
「いつものお茶漬けを2つ~」
「あれ、今日はひとりじゃないんだね」
「お姉ちゃんなの~」
「え……」
お店の美人お姉さんがショックを受けたような表情で私を見る。
どうしたんだろう、姉がいたら問題でもあるのだろうか。
まさか、そんな清純そうな顔してミュウちゃんにいかがわしいことを……。
勝手な妄想を膨らませていると、お姉さんが私を指さしてこう言った。
「ミュウちゃんは私の妹よ!」
「……へ?」
なんだこのお姉さん、本当にそっちの人なのか。
大和撫子のような外見をしながらシスコンとは……。
なかなかの人物じゃないか。
和服着てるし、黒色の長い髪はさらさら。
大人っぽくもあり、幼さの残る顔。
背も私より少し高いくらいで、ユーノさんと同じくらいかな。
そして胸だね。
和服が私の大好きな形に膨れ上がっている。
手のひらからあふれるような大きさで、きっとお餅のようにやわらかいことだろう。
ああ、もんでみたい。
そんな私好みのお姉さんがシスコンか……。
まあ、お姉さんといってるけど現実の私と同じくらいの歳かな。
そうだ! いいこと思いついた!
「私もお姉さんの妹になりたいな……」
「なっ……」
精一杯かわいく、妹キャラっぽく、上目遣いをしてみる。
するとお姉さんはちょっと驚いたように目を見開いた。
そして頬をほんの少し染めながら視線をそらした。
「まあ……、妹同士が仲良くしてるのは悪くないわ……」
「やった! ありがとうございます、お姉ちゃん!」
「キュン……」
ちょろいお姉さんだった。
大丈夫か、こんなに美人なのに。
心配だから私が守ってあげないと。
まったく、お姉ちゃんはしょうがないんだから!
「お姉ちゃん~、お茶漬けまだ~?」
ずっと放置だったミュウちゃんが不満の声をあげる。
「あ、ごめんね、新しい妹がかわいくて」
「えへ」
かわいいって言われた!
こういうの慣れてないからくすぐったい。
目を閉じてもじもじしていると、その間にお茶漬けが私の前に置かれた。
驚くべき早さである。
早いけど、そのお茶漬けはまるで海鮮丼のように豪華なものだった。
いくらとか鮭とか乗ってる。
なんだこれ、最高じゃないですか。
朝から食べるにはちょっと多い気もするけど、それ以上に食欲がわいてくる。
「いただきます!」
上に乗っているお刺身から口に含み、ご飯も一緒に流し込む。
うん、やわらかくて口の中でとろけてるよ。
家でお刺身とか食べるとちょっと生臭さがあるけど、これには一切ない。
出汁も効いてるし、ご飯だけでも十分においしいよ。
ゆっくりと味わって完食。
「ごちそうさまでした、おいしかったです」
「ありがとう、今回は私のおごりよ、妹記念にね」
「わあ、ありがとうございま~す」
美人なだけでなくとてもやさしい人だなぁ。
それにしてもこの量はミュウちゃんには多くないかな。
そう思ってちらっと様子を見てみる。
……すでに完食していた。
女の子の姿でもドラゴンの胃袋なのだろうか。




