あはは、おいでませ~!
買い出しを終えて宿まで戻ってきた。
「ただいま~」
まだ起きてきてないと思って、一応小さな声であいさつする。
「おかえりなさ~い」
ちゃんと起きてたようであいさつが返ってきた。
「アミちゃん、起きてたんですね」
「ついさっきですけど」
アミちゃんはそう言いながら荷物をまとめていた。
そろそろ宿を出ないといけない時間だ。
私も少ない荷物をまとめてしまう。
「とりあえずここを出てから朝食にしましょうか」
「はい」
「何食べます?」
宿を出てすぐにアミちゃんが聞いてきた。
「実は買い出し中にサンドイッチを買っておきました」
言いながらそれをアミちゃんに見せる。
「わ~、朝から豪華ですね」
「そうですか?」
まあ、確かに朝から食べることはあまりないかも。
「さきほどきれいな公園を見つけたので、そこに行きましょうか」
「は~い」
私たちは川の近くにあるその公園まで移動する。
ベンチもあるし、人も少ないのでのんびり過ごすにはちょうどいい。
ここに座って朝食にしよう。
「あ、このタマゴサンドおいしいですよ」
「この街でもけっこう人気のお店みたいですね」
朝早くから開いてるパン屋さんで、すでになかなかのお客さんが入っていた。
このタマゴサンドもみんなが手に持っていたので人気商品なのかも。
私もひとつ口に運ぶ。
「うん、おいしいですね」
「ですよね!」
ちゃんとパン屋さんらしいサンドイッチで食べ応えがある。
半分ほど食べ終えたところで、アミちゃんに今後の話を振ってみた。
「この後はどうするんですか? 私は次のスタンプの街へ行きますけど」
「う~ん、そうですね~」
まだ決めあぐねているのか、アミちゃんは目を閉じ、「むむむ」といった表情をしている。
「ヨシノちゃんと同じで女神様のところに行ってみようかなと」
「女神様ってユーノさんのこと?」
「誰かはわかりませんが、そこでイチゴさんを待つことにします」
え、私のことを待つの?
それなら一緒に旅するのもアリなんじゃないかな。
まあでも、何が起きるかわからないし、無理強いはよくないか。
「本当はイチゴさんとずっと一緒がいいんですけど~!」
「キャ~!」
突然アミちゃんが襲いかかってきた。
私の胸にぐりぐり顔を押し付けてくる。
やめて、サンドイッチが落ちちゃうから。
私は片手でアミちゃんを押し返す。
アミちゃんはそこで改めて笑顔を作って話始める。
「もう一度ヨシノちゃんともゆっくり話しておきたいんですよね」
「ヨシノちゃん?」
「はい、今度こそ完全に決着をつけます!」
いったい何の決着だ……。
「というわけで、私待ってますから」
「はい、なるべく早く戻ります」
しばらくの別れ。
たった1日……2日だったけどけっこう楽しかったな。
それにすごく心が安定した気がする。
「さて、そろそろ行かないと今日中に街まで着かないですね」
アミちゃんはそう言ってベンチから立ち上がる。
もしかして歩いていくつもりなのかな。
「アミちゃん、私がこの街に来た時に助けてくれたカモメさんを呼んでみますよ」
「か、カモメさん?」
カモメと聞いて、アヒルのことでも思い出したのか、アミちゃんの顔が引きつる。
「カモメさんは大丈夫ですよ」
私は安心させるように笑顔を作り、カモメさんを召喚する。
「いや、イチゴさんが大丈夫……?」
「あはは、おいでませ~!」
「……」
あれ?
今アミちゃんが一歩下がったような……。
少しだけ待つと、あの鳴き声が聞こえてくる。
カモメさんの姿を確認し手を振る。
「こっちです~、この子を始まりの街まで連れて行ってあげてくださ~い!」
「クエ~!」
私とカモメさんのやりとりに、アミちゃんはさらに一歩下がっていった。
まるで変人を見るような目でこちらを見ている。
そのアミちゃんをカモメさんはがっちり捕まえて連れ去っていく。
「あ~れ~」
アミちゃんの悲鳴があたりに響き渡る。
「お元気で~!」
私はアミちゃんが見えなくなるまで、ずっと手を振って見送った。
さみしくなるね……。
「さ、ヨミ・イチゴ、頑張ります!」
自由の街へむけて出発!
またね、夢と希望の街。
いろいろあったけど楽しかったよ。
次は自由の街か。
いったい何が自由なんだろうね。




