ひどい妄想日記だね
水着をローブの内ポケットに収め、部屋漁りを再開する。
しかし、小さな部屋で物も少ない。
探すところはすぐになくなってしまった。
怪しいのはやはり水着か……。
あらためて部屋を見回すと、あることに気づいた。
ソファの座るところの下が、多分引き出しになっている。
すぐに確認するため、それを引っ張ってみた。
「あっと……」
そこに入っていたのは大量の下着。
なぜ下着だけがこんなに?
しかもかなりエッチなものが多いように見える。
何かに導かれるようにその中に手を突っ込んだ。
……何してるんだ私。
我に返って、今度は頭でも突っ込もうかと思ったその時。
手に何か固いものが当たった。
何だろう?
それをつかみ、下着の海から引っ張りだす。
出てきた物は日記と書かれた1冊のノートだった。
なぜこんなところに入れてるんだ……。
まるで隠してるみたい。
いけないと思いつつ、今さらなので日記を開く。
だってここにヒントがあるかもだしね。
しかしその中は期待していたものとはまったく別のものだった。
全体的にまずい表現がされていて、とても読むのが恥ずかしい。
その中でマシなものを探して読んでみる。
『今日もお嬢様は妖精のようにかわいい、食べてしまいたい』
『朝、お嬢様を起こしに行ったら胸の突起を拝むことができた、いい1日になりそう』
『あ~! お嬢様~! あ~!!』
意味不明。
かなりエッチな、恐らく妄想日記。
この後は私と同じ職場になってからのものになっていく。
『今日も苺さんは超かわいい、ロリに目覚めたかも』
誰がロリだ。
『深夜残業中、苺さんが珍しく居眠りをしていた、いけない子、お仕置きしないと』
怖い、何されたんだ……。
『居眠り中の苺さん、そっと机の下からパンツを見る、苺パンツ』
本気でのぞいてるぞ、こいつ。
『ふたりきりの深夜残業、苺さんにエナジードリンクを口移しでもらった、ファーストキス』
まったく覚えがないんですけど!?
え、うそ、本当にやったの私……。
あの精神状態なら何をやっててもおかしくないけど。
でもこれは完全に妄想だと思う。
『私と苺さんの体だけの関係が続く、心も満たしてほしいよ……』
何が「心も満たしてほしいよ……」だよ。
ひどい妄想日記だね。
これ以上読んでも手掛かりはなさそうだ。
もっとひどい展開になるのも怖いし。
そっと日記を閉じ下着の中に戻そうとしたとき、1枚の紙が挟まっているのに気づく。
そこには「私の夢」と書かれていて、裏返すとそれは写真だった。
撮った覚えのない、私も写っている写真。
私とアミちゃんとヨシノちゃん。
それから知らない小さな女の子。
みんながまるで家族のように仲良く笑顔で写っている。
これは……?
ヨシノちゃんの夢?
求める未来の写真を撮ったってこと?
この世界ではそんなことができるのだろうか。
でも見ていると優しい気持ちになれる。
こんな未来があるのなら、悪くないなって思う。
そう思いながら写真を日記の間に戻した。




