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夢の世界へ行って気付いた、私にとっての本当の幸せ  作者: 朝乃 永遠
夢と希望の街
24/111

お祭り気分のハイテンション!

 花火が終わったところで私たちは宿まで戻ってきていた。

 お祭りはまだ続くみたいだけど、メインのイベントは花火が最後のようだ。

 あとはお姉さん方の夜のお祭りが始まってしまうのかもしれない。


 って、誰がうまいこと言えと?

 キャハハ!


 お祭りの雰囲気につられているのか、私のテンションもなかなかに高い。


「このまま一緒に寝たら間違いが起きるかもしれませんね……」

「へ?」


 思わず声に出してしまったけど、アミちゃんは首を傾げている。

 聞こえていなかったか、理解していないのか。

 どちらにしても助かった。


 いや~、一人暮らししてるとね、独り言が増えるんだよね。

 さぁ、お風呂に入ろっと。


「アミちゃんの裸、楽しみですね~」

「え?」


 おっと、いけないいけない。

 もちろんわざとだよ。

 これから始まる、お風呂場での夜のお祭りさ。


 なんてね、あはは!

 うん、このテンションはまずいな。

 これはお風呂の時間をずらしたほうがよさそうだ。


「アミちゃん、お風呂どっちが先に行きます?」

「え? 大浴場だし一緒に行きませんか?」


 ギャアアア!!

 そんな純粋な目で私を見ないでぇ~!

 取り戻すんだ、きれいな私を。


 ということで、ふたり仲良く露天風呂にむかった。

 入浴中も様々な誘惑があったけど、一度もおさわりすることなく切り抜けた。


 えらいぞ私!

 すごいぞ私!


 と、まるでがんばったみたいに言ってるけど実は違う。

 お祭りハイテンションもおさまっていたとはいえ、アミちゃんの裸を見た時に思った。


 全然ドキドキしないなって。

 別に魅力がないとか、そういう悪い意味じゃない。


 なぜだか心が落ち着いた。

 まるで優しさに包まれるような感覚。

 それが心を満たしてくれたのだ。


 まあ、人の裸で何を感じているんだって思うけど。

 

 アミちゃんより先にあがり、部屋に戻ってきた。

 ベッドに腰掛けて窓の外を見る。

 まだまだ元気な人たちはお祭りを楽しんでいるようだ。


 さすが夢と希望の街。

 みんな心が元気なんだな。


 お祭り気分のハイテンション!

 私も会社にいたときはたまにあったよ。


 妙にハイな気分になって、自分がまずい状態なんだと気付かないんだよね。

 ここは楽園だから危険なことはないんだろうけど。


 しばらく窓の外を眺めていると、ようやくアミちゃんが戻ってきた。

 ちゃんとパジャマ姿になって。

 モモちゃんもそうだけど、みんなパジャマ着てるんだよね。


 私持ってないんだけど。

 どこかで買ってこようかな。


 別にそこまで欲しいわけじゃないけどね。

 でも睡眠の質に関わるみたいだし、今度ユキちゃんに聞いてみよう。


「何見てたんですか?」

「まだお祭りが続いてるんだなって思って」


 アミちゃんが私の隣まできて、同じように窓の外を覗く。


「本当ですね、深夜残業の時のハイな気分と同じですかね」

「やめましょう、その例えは……」


 同じ会社で働いていた者同士考えることは似ているのか。


「今の私たちはもう自由の身なんですから」


 私たちは今楽園にいる。

 そしてさらなる楽園生活を手に入れる。

 この旅の目的なんだから。


「えや~!」

「うぉっ!?」


 びっくりした……。


 突然アミちゃんが私の横をダイブしていった。

 私のいる窓側とは逆の方で大の字になっている。

 見た目通り、まるでこどもだった。


「私、ダブルベッドをふたりで使うの初めてです!」

「へぇ……」


 いつもはダブルベッドをひとりで使ってるのだろうか。

 私もアミちゃんと会わなかったらそうなってたけど。


「イチゴ先輩! 枕投げしましょう!」


 アミちゃんが枕を頭上に上げて、目を輝かせながらこちらを見ている。

 こんなところでやったら大惨事だよ。


 あれ? そういえばその枕はどこからでてきたの?

 私が最初に入った時はなかったけど……。


 ひえ~……。

 深く考えないでおこう。


「ここじゃ狭すぎるよ」

「え~……」


 残念そうにしぼんでいく姿を見ていると、ちょっと罪悪感が生まれる。


「次の宿は枕投げできるくらい大きいところにしましょうか」

「わ~い! イチゴ先輩大好き!」


 笑顔の花が開いた。

 あら、そういえば一緒に旅する約束ってしてないな。


 私はアミちゃんとずっと一緒にいるんだと勝手に思い込んでた。

 そっか、今夜泊めるだけだったんだ。

 でもアミちゃんもついてくる感じだよね。


 窓の外を見る。


 明日はお参り場所に行って、その後はまたお祭りを楽しもう。

 ここには連泊して、明後日から次の街へむかって旅立つ。


 アミちゃん、ついてきてくれるよね?

 ちらっとアミちゃんの方を見る。


 枕を抱きしめ、いつの間にか眠りについていた。

 その姿は小さなこどものようでかわいらしい。


 アミちゃんの頭をゆっくりとなでる。

 さらさらで長いきれいな黒髪。

 この子といると私の心も洗われていくような気がした。

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