第37話 黒と銀の邂逅
一周年記念は……無理でした。
その代わりに増量で。
これからもよろしくお願いいたします。
「フレノアと言います! こっちは〝使い魔〟のカマラです! よろしくお願いします!」
目の前に座る銀色の髪の少女――フレノアは、名乗ると深く頭を下げた。
「俺は〝オリオウ〟のクキ。で、こっちはウルだ」
「はいっ、皆さんからお聞きしています! クキさんとウルさんですね!」
ばっ、と勢いよく顔を上げたフレノアのその頬は、僅かに赤かった。
〝オリオウ〟は〝飛炎の虎〟と一緒にトゥルハ商会に顔を出して依頼達成の書類を貰い、報酬は〝鵬我鳥〟の素材の買取り分が上乗せされ――その一部は手元に残して――ギルドに報告した。
そして、フレノアたちと合流し、昼食も兼ねた顔合わせとなったのだ。
サザミネたちに連れられて訪れた料理店。予約していたようで個室に通されたため、多少、騒いでも他の客の迷惑にはならないのでフレノアの声は大きい。
「いや、呼び捨てでも――」
「クキさんとウルちゃんですね!」
真っ直ぐに赤い瞳――純粋な目に見つめられ、ひくっ、と頬が引きつった。
(何で、ウルはちゃん付けになった? いや、それよりもオクバル以上に……っ)
視線を泳がせたクキが見たのは、〝オリオウ〟と〝飛炎の虎〟の面々。いつものように微笑を浮かべたキルエラ、苦笑しているサザミネやオクバルたち、そして――
(……ちっ)
ニヤニヤと笑う、ギルとホルンだ。
ギルドで顔を合わせた途端に目を輝かせ、駆け寄ってきたフレノア。魔剣を見せた後のオクバル以上の食いつきに、クキは思わず後ずさってしまった。
その様子が意外だったのか、それからというものからかうような笑みが止まらない。
(こいつら、昨日から……っ!)
〝杈茨大猪〟を討伐し、浄化した後の光景を見て思わず口走った言葉。
クキは何とかフォローしようとして失敗し、西に向かった群れの討伐に行こうとしたが、〝ズレ〟――魔術を使った軽い反動――を抑えてきることが出来ず、ギルとキルエラに気付かれてしまった。
それでも押し進もうとしたものの、駆け付けた〝光〟と〝闇〟の使い手がそちらに回ったとあって、ギルド支部に報告のために帰還することになった。
クキたちと一緒に帰還したのは、襲撃に居合わせて迎撃をした冒険者たちと第一班だけで、第二班と先遣隊は〝第一障壁〟に罅が入ったため、念のために警備要員として残ることになった。
その時、ちらり、とフレノアの顔は見た気はする。
途中で飛行型魔物の討伐に向かったゴウンドたちを拾いつつ、『アダナク』に戻ると、クキは報告するために会議室に押し込められた。
他の出席者はラルグやサザミネ、ゴウンドら――討伐に向かった冒険者チームのリーダーと、襲撃に居合わせた冒険者たちから数名だ。
その間、ギルは〝第一障壁〟の検分に向かうギルド職員の移送、キルエラはローザと共にトゥルハ商会に行き、「明日の午前中、来てくれ」と伝言をもらってきた。
そして、報告や事後処理がひと段落したのは夕方。
やっと解放され、合流したホルンに「打ち上げしようぜ!」と誘われた。
参加者は〝飛炎の虎〟のサザミネとホルン――別行動中だった男性だけで、訓練生二人は疲れているだろうとサザミネに参加を却下され、女性陣はそのお目付け役として不参加となった。
ホルンたちと場所について話をしていれば、
「何? 打ち上げだと?!」
「俺らも参加させろ!」
と。討伐に参加した他の冒険者からも声が上がって、あれよあれよと言う間にゴウンドやラルグたちのチームも含めた数十人規模の宴会となってしまった。
仕事もひと段落ついて、少しだけ酒に手を出したクキだったが、二日酔いではなく、胃もたれになっていた。
その原因は、挨拶に来た冒険者たちだ。
宴会の参加者の中では最年少のクキだったが、今回の功労者の一人であったため――さらにサザミネも同じテーブルにいたので――次々と挨拶に来たのだ。
普通なら酒を注ぐところだが、真っ先に挨拶に来たのは、クキの叫びを聞いていた第一班の冒険者。にこやかに笑いながら、酒ではなく肉料理を置いていき、それを見ていた他の冒険者たちも後に続いて、気付けばクキの前にだけ、肉の山が築かれていた。
それを見て爆笑するホルンとギルに叫びながら、やけくそ気味に肉の山を平らげ、さらに肉料理を注文した結果、胃もたれになってしまったのだった。
(……はぁ)
昨夜のことを思い出し、クキは内心で大きなため息をついた。
ちらり、と視線を上げれば、フレノアの純粋な目と合ってしまい「くっ……」と身をのけ反らせる。
戸惑うクキの耳に〝使い魔〟の声が聞こえてきた。
『こんにちは!』
『コンニチハ?』
テーブルの上でウルと顔を見合わせているのは、一羽の蒼い毛並みに赤い目を持つ鳥――フレノアの〝使い魔〟、カマラだ。
(聞きやすい……)
舌っ足らずなウルより聞き取りやすいカマラの声に、クキは目を丸くした。
『ウル。よろしくね』
『カマラ。ヨロシクヨロシクー』
『あまり、りつ、たかくない?』
クキの視線を追って、フレノアも〝使い魔〟に視線を落とした。
「確かに、ちょっと声が……?」
(こうも違うのか……)
キルエラに視線を向けると、小さく頷かれた。
〝使い魔〟と契約を結んでいれば、他の〝使い魔〟の声も聞こえるのだという。
初めて会った他の〝使い魔〟――その声が聞こえる感覚に「へぇ?」とクキは片眉を上げた。
「ウルとの同調率は、それほど高くねぇからな」
「……えっ?」
事前に打ち合わせた通り、クキが告げると驚いたようにフレノアは顔を上げた。
「何というか……まぁ、〝才能〟の関係だ」
「!」
「お、おい……」
話を聞いていた〝飛炎の虎〟の面々はぎょっとした。
「何だよ。〝無〟の使い手が教導院にいない理由なんて、〝才能〟とかが多いだろ?」
「そりゃ、そうだけどな……」
ホルンは指先でポリポリと頬をかいた。
「商会の護衛依頼の時、言わなかったことに怒ってるのか?」
「いや、違ぇよ」
何故か、「はぁ」とため息をつき、ホルンはギルとキルエラに視線を向けた。
それに対してギルは肩をすくめ、キルエラは苦笑した。
仲間の返答にぴくり、と片眉を動かし、「まぁ、話を戻すが」と口を開くが――
「ね? 変わっているでしょ?」
「……聞こえていると思うぞ?」
ローザが耳打ちするのは、茶髪の青年――ヤンコフだ。フレノアに付いて別行動をとっていた〝飛炎の虎〟メンバー二人のうちの一人で、ホルンと同い年でくされ縁らしい。
そして、もう一人は〝飛炎の虎〟のサブリーダーである淡い緑色の髪の女性――リメイ。マリアーヌ以上におっとりとした女性で、にこやかな笑みを浮かべて話を聞いている。
クキが、じろり、とローザを見ると「あはは」と乾いた笑みが返ってきた。
その隣でヤンコフが申し訳なさそうに小さく頭を下げるので、反射的に「どうも」と頭を下げ、クキはフレノアに視線を戻した。
「だから、同調率はそこそこだな――って、どうした?」
ぱちぱちと目を瞬くフレノアは「え?」と声を上げると、目を泳がせた。
「いえ! ……あの……その」
「?」
眉をひそめると、びくりっ、と肩を震わせ、フレノアはさらに顔を俯かせる。
怯えさせたことに、じとーとした視線をギルから受ける。
(お、俺か? ………いやいやいやいや)
久しぶりに警鐘が鳴り出し、冷や汗が頬を伝った。
ふぅ、と心なしか震える息を吐き、そっとフレノアの様子を伺った。
顔を合わせてからのフレノアの様子と、サザミネが言っていた無の使い手なら相談にのれるだろう悩み。
(昨日の戦闘を見たのなら、そのことだよな……)
魔法について、だろう。
あの場にいたのなら、クキが複数の属性――それも上位や最上位クラスの魔法を見ているはずだ。
昨夜の宴会でも、高位の魔法師――主に第一班の後衛に回りくどい方法で聞かれていた。冒険者同士、手の内を聞くのはマナー違反だが、見たものなら遠慮はしないようで耳にたこができるほど聞かれたのだ。
ただ、実力者ともなれば色々と情報も知れ渡っており、〝樺珠旅団〟ならリーダーのラルグが〝装化〟の能力者、〝飛炎の虎〟ならサザミネとマリアーヌが〝獣化〟の能力者だということは有名だった。
「……魔法のことで、何か聞きたいことがあるんだろ?」
このままでは埒が明かないと思い、クキが声をかけると、はっ、とフレノアは顔を上げた。
「一応、魔法陣の研究をしているからな。そこそこ、助言は出来るが?」
「えっと、その――がっ」
「が?」
「合体魔法……について、知りたくて」
「………合体魔法?」
尻すぼみに告げたフレノアから視線を外し、サザミネに向けると小さく頷かれた。
(何でまた、合体魔法なんだ? 属性ごとの使い方じゃないのか?)
二つの異なる属性の魔法陣を掛け合わせる――合体魔法。
発動した効果は融合魔法と似ているが、合体魔法の方が多様性に富んでいる。
クキはフレノア、カマラと見て、「あぁ……」と納得した。
「……カマラとの合体魔法を練習しているのか?」
こくり、とフレノアは頷いた。恐る恐る、上目づかいに見つめるその目は、不安と期待が入り混じっていた。
「合体魔法か。……悪いな。使えるが、ウルとは無理だ」
「そう、ですか……」
フレノアは目を伏せ、何かに気付いて「え?」と声を上げると、大きく目を見開いた。
「ん? お前、なんか変なこと言わなかったか?」
訝しげに眉を寄せ、ホルンが声を上げた。
「あ? ウルは魔法が使えねぇから、〝使い魔〟との合体魔法は無理ってだけだよ」
「えーと……それって、自分は使えるって聞こえるけど?」
「ああ。使えるぜ?――こういうことだろ?」
ローザに頷きつつ、右手を前に出して手の平を上に向けた。
そこに、二色の魔法陣が浮かび上がる。
中位風魔法[風塵刃]
下位水魔法[水弾]
発動させようとしたところで、テーブルに落ちた腕の影から[漆黒の手]が伸びて、魔法陣を吸い込んだ。
クキは「おい……」とギルと見ると、じと目が返って来た。
「食事に来たんだ、埃を立てるな」
「うっ………悪い」
ぽかん、と口を開けるフレノアとオクバルに、「ね?」とヤンコフに視線を向けるローザ。「うーむ」と唸るヤンコフの隣で、ホルンが何度も頷いていた。
場を切り替えるようにサザミネが咳払いをして、全員の視線を集める。
「合体魔法、使えるのか?」
「まぁ、一応は……」
フレノアに視線を向けると、その細い肩を震わせ、背筋を伸ばした。
「合体魔法と融合魔法は似ている。過程は何であれ、結果は同じ事だからな。……融合魔法は使えるのか?」
ふるふると首を横に振るうフレノア。
「なら、その代わりとして合体魔法を使うのか……」
「はい……」
クキは虚空に視線を投げ、
「合体魔法の利点は何だ?」
「え?……えっと……多様性、ですよね?」
突然の質問に言葉に詰まりながらもフレノアは答えた。
「ああ。なら、何故、使い手がいない?」
「えっと……それは、合わせるのが難しいからで……」
「それだけか?」
「それだけ……?」
フレノアに焦点を合わせると、フレノアは戸惑ったようにマリアーヌやリメイを見るが、二人とも何も言わないので、また、クキに視線を戻した。
「分かり、ません。………他に何かあるんですか?」
「ああ。最も基本的なことだ」
「……?」
小首を傾げたフレノアの目をのぞき込みながら、クキは続けた。
「魔法陣には発動した時――どう顕現するか、記されている。消費魔力量、その転換率、魔素吸収力、消費魔素量、効果範囲、形――」
記されている内容を連ねながら右手の指先に魔力を込め、眼前に下位風魔法を描く。ギルの視線が頬に突き刺さってきたので、威力は最低限に抑えたが。
「………」
フレノアは描かれる魔法陣を見つめ、次第に戸惑っていた表情が引き締まっていった。
クキはさっと指を振るって、魔法陣を発動させた。風が生まれ、長さ二十シム(センチ)ほどの半円が三つ、虚空に浮かび上がった。半円は直線を軸に回転を始め、微かに風切り音を立てながら、球体となる。
マリアーヌは目を細めてそれを見つめ、
「……[風信]ね」
「ええ、そうです」
「形が違う……?」
オクバルは眉をひそめた。
「ああ。――で、コレが、使い手が少ないもう一つの理由だ」
「コレって……形が違うってこと?」
目を丸くしながら尋ねてきたローザに頷き、
「そして、コレがおたくに欠けているものだ」
「っ?!」
「さっき、おたくが言ったように合体魔法の強みは〝多様性〟だ。自分だけでなく、〝使い魔〟――その技術さえあれば、他者との魔法陣とも合わせられることだな。だが、〝合わせる〟という技術の難易度が高すぎること――その技術の力量によって、扱える魔法が限られてくることから、半数以上の魔法師は同程度の威力があり、比較的習得しやすい融合魔法を使っている」
そこでクキは説明を止め、「ここまではいいな?」と問いかけると、「は、はい!」とフレノアは頷いた。
「合体魔法は、二つの魔法が互いを相殺することなく合わせられるように魔力制御の訓練を行うが、必要なのはそれだけじゃない」
「それが、形が違うことですか?」
目を丸くして、フレノアは[風信]の球体を見つめた。
「そうだ。二つの魔法を合わせた後のこと、それをどれだけイメージできるか――重要なのは、術者の想像力だ。二つを重ね合わせてどう顕現するのか、どれぐらイメージをしているかによるだろう」
球体は回転しながら重なり合い、天井に昇っていく。
(散らせ、ウル)
そこにウルが突撃し、風が頬を撫でた。
「もちろん、どう顕現するのかは魔法陣に記されているが、顕現させているのは俺たちの魔力だ。魔法陣に記されたモノから全くの別モノには変化することはないが、ある程度の操作は可能となる。まぁ、そのためには、いかに自分の魔力を制御出来ているか――高い魔力制御能力が要求されるけどな。あと、想像力もだが……」
「……魔力制御と想像力」
フレノアは、どこか呆然と呟いた。
「それを高めれば、合体魔法の可能性は大きく広がるぞ? 無魔法は強化系が多いが、五大基礎ならその組み合わせは術者次第だ」
「……っ!」
大きく目を見開いたフレノアの瞳の奥で、虹色の炎が揺れた。
「カマラとの合体魔法なら、通常の合体魔法を行う以上のものが必要となると思うけどな」
そこで、クキは片眉を上げた。
「そうだな。……とりあえず、見てみるか?」
「えっ?」
「この後でもいいが……明日、訓練をしようと思って、ギルドに訓練場の使用許可はもらってある。何なら、実演してみようか?」
それを聞いて、フレノアは勢いよくサザミネに振り返った。さらにオクバルやホルン、マリアーヌと言った面々の視線も集め、サザミネは苦笑する。
「騒動が収まったとはいえ、〝森〟に入る予定はないから願ってもないことだが……いいのか?」
「構いません。どうせ、ギルと手合わせをしようと思っていただけなので」
そう答えれば、サザミネは他の二人に確認するように目を向けた。ギルとキルエラが頷くと、サザミネは笑みを浮かべた。
「なら、お言葉に甘えようか」
「!」
やった、とフレノアとオクバルは顔を見合わせた。「よし!」とホルンが声を上げる。
「明日は一日かしら?」
騒ぎ出す訓練生やホルンたちを見て、リメイは笑みを深めながら尋ねてきた。
「はい。帰りは夕方の予定です」
「では、お礼にお昼はこちらでご用意させていただきますね」
おっとりとした声でリメイは告げた。
「あと、他に何かお礼でも……」
「そうだな……」
「いえ、昼飯だけで十分ですよ?」
リメイにサザミネも頷いたので、クキはそう言ったが、
「いや。手の内を見せてくれるんだ。他にも何か――」
きっぱりと言い、サザミネとリメイにマリアーヌも加わって話し出した。
その様子を少し不安そうに見つめているフレノアに気付き、クキは思考を巡らせる。
「じゃあ、一つだけサザミネさんにお願いしたいことがあるんですけど、いいですか?」
「俺に? できることなら、構わないが……」
不思議そうな顔をしたサザミネに、にやり、とクキは笑った。
「いえ、たいしたことじゃないんですけど――」
***
明朝、外壁の西門前で待ち合わせをして、サザミネたちと別れた。
今日は依頼を受ける予定はなく、その足は魔儀仗を頼んだ武器屋に向かっていた。
鼻歌混じりに歩くクキに、ギルはじと目を向け、
「頼まれたのは、訓練生の相談にのることだ。そっちはおまけだぞ?」
「分かってるよ。あと、あれは正当な報酬だ」
そう答えると、ギルは肩をすくめた。
「合体魔法を見せるということですが……お二人で?」
キルエラの問いに、クキとギルは顔を見合わせた。
「そうだな。やるか?」
「見せるだけなら、必要ないだろ……」
「見ごたえがある方がいいと思うぜ?」
「……見えるか?」
「あー……見るだけなら、問題ないだろ。同調率も高いし、潜在魔力量も多い」
〝使い魔〟との同調率が高いので、感知能力は高いだろう。魔力制御が甘いため、魔力は完全に宝の持ち腐れ状態だが。
「制御を覚えれば、かなりの使い手になると思うけどな……」
「……何か問題が?」
僅かに声のトーンが落ちたことに気付き、キルエラは小首を傾げた。
「どの程度使えるか、見てねぇから断言はできないが――」
合体魔法を習得するにあたり、問題となるのは想像力だけではない。〝使い魔〟との同調率の高さだ。
〝使い魔〟との合体魔法には的確な指示が必要なため、同調率の高さは必須となるが――。
「アレは弊害だな……」
フレノアの魔力制御の未熟さは、その若さと〝使い魔〟を持つがゆえだろう。
〝使い魔〟を授かる理由から仕方ないのかもしれないが、魔力制御を依存し過ぎていた。
「弊害ですか?……〝使い魔〟持ちで、合体魔法を操る方もみえますが?」
「普通なら、融合魔法と難易度はそう変わらないと思うが……」
話を聞いていて、ふと、気付いたモノは――。
「……〝才能〟、か?」
ぽつり、とした呟きにキルエラとギルは目を細めた。
「あれは………」
クキはそんな二人の様子に気づくことなく、虚空を睨み付けていたが、「いや、何でもない」と小さく頭を横に振った。
「それでは、どうやって……?」
呟きが聞こえなかったように、キルエラは話を進めた。
それに対して、クキは笑い、
「もう一つ、別の方法はある。それを見せて――その後、どうするかは本人次第だな」
5/24 誤字訂正




