END1 幸せな結末、あるいは不幸の始まり。
「うぅん……、もう、朝ですかぁ、メリは―もう少し寝たいですぅ~……」
カーテンの隙間から差し込んでくる朝日に、昨日遅くまで起きたせいで眠たい私は起こすのが早いと文句を言いますが、一度起きたら二度寝をする気になれなくて、しょうが無いので起きちゃうことにしました。
「おはよーございます、ご主人様、って……、そうでした、メリは―今日は一人で寝てたんですよね……」
私のお腹の中に二人の赤ちゃんが出来ましたって伝えたら、ご主人様ってば私の体のことを心配してくれて、昨日からは夜伽は無しだって言われたんですよね。
「でもメリー馬鹿だから、ご主人様が喜んでくれそうなコト、アレくらいしか出来ないんですよね……」
私を怖い奴隷商から助けてくれた勇者様が私のご主人様。すっごく強くて優しくて、私はきっと世界中で一番幸せな奴隷の女の子、なんですけど……。
でも、ご主人様がなんでもできちゃうちーと?な人だから、私はご主人様にいつまでたっても恩返しが出来ないままで、いっつも甘えてばっかりのダメな奴隷です。
「でもでもっ、やっぱり一人で寝るのは寂しいよ~!」
私はベッドの上で足をバタバタさせて駄々を捏ねてみますけど、見ている人が全く居ないので意味が無いし、お貴族さまのお屋敷にあるベッドは私一人だとすっごく広くって、いっつも一緒に寝てくれるご主人様の居ないせいで、いつも以上に広く感じてしまいました。
「う~、昨日はとっても変な夢を見た気がするし、やっぱり今晩からはご主人様と一緒に寝たいって言ってみようかなぁ?」
何かとっても怖くって、それでいてとっても大事なコトを言われたような、そんな変な夢。
「でも……、なんで私、昨日の夢の内容なんて覚えてないのに、大事だって思っちゃったんだろ?」
そう、なんだかとっても大事だったような気がするんですよね。でも内容は全く思い出せないし、どこか本や誰かから聞いた話の記憶みたいに、どこか遠い国の話みたいな他人事の様にも感じる不思議な感覚なんです。
「あれ、可怪しいな、何も悲しいことなんて無いのに、私はすっごい幸せなのに、どうして泣いてるんだろ……」
気がついたら私、何でか分からないけど泣いちゃってました。
「う~ん……、きっとご主人様の暖かい温もりとか、あのいい匂いがするお腹から離れたせいですね!だから昨日は変な夢を見たんだと思うんですよ!きっとそうに違いありません!」
自分の流した涙の意味、それはきっとご主人様から離れたせいだと結論が出たので、私は今日もあの人のおっきなお腹の中に飛び込もうと思います。
「じゃあじゃあ、直ぐに準備してご主人様の部屋に突撃です!きっとアリサさんとエッチした後でしょうから、朝から一緒にお風呂ですね~!」
今日もご主人様の大きな身体を洗おう、私はそんな事を考えながら、清々しい朝の空気を目一杯吸い込んで、大きすぎるベッドの上から飛び降りたのでした。
とある奴隷ちゃんの幸せな結末 了




