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【キャラに着物を着せませんか?】初心者用、和装描写のススメ  作者: 片平 久(執筆停滞中)
❀[こんな時は?]シチュエーション別の、キャラ和装のお話し❀
14/20

[4.3]【夜祭り・花火大会編】その参:着姿など

■2017.04.17_12:15 画像追加■

下駄の写真を追加しました。



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◆キャラが浴衣を着たら、どんなことが起きる?《着姿編(きすがたへん)

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 本来、最も書きたかったことでもあり、また皆様が知りたいことでもあるかと思われる『キャラに和装をさせてみたら、作中でどんな状況・シチュエーションが描けるか』についてです。

 とはいえ、実際の作中においては皆様の個性と作品の雰囲気、物語の展開に応じた様々なシチュエーションがあるはずですので、ここでは“例示”という形で「よくあるシーン」について紹介したいと思います。



* * * 



 まずは、着る段階のお話。


 浴衣の着付けは、他の和装に比べると多少は楽です。またイラストや写真、動画などで丁寧に説明してくれる資料も数多くあります。とはいえ、慣れないものです。失敗は多々あることでしょう。「着付け」の段階での『あるある』ネタをまずはご紹介します。


 すでにご説明しましたが、浴衣の場合は必要なアイテムが少なめです。

 最低限、必要なものは以下の通り。

 ・浴衣本体

 ・帯

 ・肌着

 ・腰紐(こしひも)

 ・履き物


 浴衣本体と帯は【4.2】で紹介した内容などを参考に、ご自由にお選びください。

 『肌着』は、「浴衣下(ゆかたした)」などのワンピース型、もしくは肌シャツ+ステテコなどの下履き、が無難です。女性の場合はステテコではなく「裾よけ」と呼ぶ巻きスカートでもOK。いずれの場合も「太ももから膝あたりまでを隠す下履き」はあった方がよいです。これは下着が透けるのを防ぐという意味もありますが、なによりも「足さばきをスムーズにし、汗を吸わせて不快にさせない」という目的があります。男性もステテコを履いた方が、動きやすくて良いです。

 ただステテコタイプだと、「R18系のお色気シーン」においては邪魔なアイテム(?)なので、作品に応じて着用させるかどうか決めましょう。


 『腰紐』は、帯を巻く前に長着を押さえるために巻く、ベルトの役割を果たすものです。

 女性の場合、「おはしょり」を作るために必須です。裾の長さを決めるために腰骨回りで締めるものが一本、おはしょりと前の衿合わせを綺麗に固定するために帯を巻くあたりで締めるものが一本、計二本が一般的。

 男性の場合も、前身頃の合わせ目を整え固定するために、帯を巻く前に腰紐でも締めた方が無難です。その上から帯を巻きましょう。

 多くは専用のものを使いますが、ハチマキ状の幅広タイプ(できれば3cmくらい)で長さが2mほどあれば、どんなものでも大丈夫です。ロープ状に細すぎると身体が「縛られる」ので苦しくなります。ですが、これが(ほど)けると着姿すべてが乱れるので、締めるときはしっかりギュッと締めます。ちょっと苦しく感じるくらいがベスト。自分で巻く時はもとより、他人に着付けてもらうときも、息を吸ってお腹をやや引っ込めた状態で締めるといいでしょう。この“締め付け”があるので、和装は“胸元が苦しく”なります。(実は、帯による締め付けはそれほど苦しくありません)

 そして、この腰紐。

 幅広のヒモなので、ネクタイ同様に「ちょっと大人なエロいシーン」で活躍します。

 兵児帯(へこおび)は別として他の帯は素材として固いので、身体を拘束するのには向きません。手足などを縛るなら腰紐です。R18は合意の元に、ではありますが、そうでない作品シーンや恋人同士の戯れとしては活躍することでしょう(?)



 ありがちな着付け失敗ネタは、やはり【左前(ひだりまえ)に着てしまう】こと。


 和装は男女問わず全て【右前(みぎまえ)】なのは既にお話ししたとおりですが、では何故こんなに失敗しやすいのか。

 主な理由は二つあると思います。

 一つは【右前】という言葉の意味を“取り違えている”ケース。

 『右が前、なんだから、右手側(・・・)の身頃(布)を「上」にしなくては』と考えるケースがもっとも多い間違いです。これは「逆」です。

 「右前」「左前」で言うところの【(まえ)】は、【自分の身体に近い方】という意味です。つまり『自分の肌に密着する方が、右手側の身頃』です。カシュクール式に重ねますので、上にくるのは「左手側の身頃」です。覚える際に「右(が)(まえ)」ではなく「右が(さき)」とイメージするとよいでしょう。後は先述した通り『着た後、右手がスッと差し込める』形をイメージさせて、キャラに着てもらいましょう。

 なお和装の用語としては、内側に隠れて肌側に来る前身頃(まえみごろ)を「下前(したまえ)」、表に出る前身頃を「上前(うわまえ)」と呼びます。

 (しかし、『ピンハネする』という意味で使う「上前をはねる」とは全く関係ありません。ピンハネの「上前」は「上米(うわまい)」が変化したもの、とされています。余談)


 もう一つの間違い理由は【鏡を見ながら着る/向かい合って他の人に着せる】からです。

 自分で着るときには、どうしても姿見を見ながら着ます。となると鏡に映った姿が反転してしまうので、着付け本などの“写真と同じ向き”にしてしまうと『左前』になってしまうのです。これは帯結びでもあり得ますが、浴衣の半幅帯や角帯は『前で結んでクルッと背中に回す』結び方ができますので、あまり失敗しません。また向きが違ってもあまり影響はありません。

 この『鏡写しの左右反転』による間違い。着慣れた人が『誰かを着付けてあげる』時にもよく起きます。

 自分自身が慣れた無意識の手の動きに従って着付けてしまうと、向かい合った相手は左右逆転するので「左前」の出来上がりです。

 和装慣れしたキャラが陥りがちな、ちょっとした失敗談。話のスパイスにいかがでしょうか。



* * *



 そして、“話としておいしい”アイテムが【履き物】です。


 浴衣の着付けも終わって、いざお出かけ!……となった段階で【下駄や草履がない】というお約束。『初めての和装』では、ありがちのミスです。

 慣れている人でも、自宅からではなく友人宅などで着替えてお出かけ……となった段階で、『下駄を持ってくるのを忘れた!』なんてことも。……作者も、やったことがあるミスです。


 こんな時は、どうするか。

 若い人なら、“おしゃれ”としてのサンダル履きでもOKです。また子供連れなら動きやすさを考えて、あえてサンダル履きを選択することもあります。とはいえ、やはり浴衣には「下駄」が似合いますので、トンガタイプだと違和感が少ないですね。男性なら、最悪スニーカーやスリッポンでも、まあ許容範囲でしょうか。それでも、まだビーチサンダルとかの方がマシかも知れません。

 待ち合わせ場所や集合場所にたどり着く前に、お店に駆け込みましょう。最悪、夏の時期ならビーチサンダル程度はスーパーやコンビニでも売っています。

 そして、そんな感じでお店に飛び込んだ先で待ち人と出くわしたりすると、「ちょっとばつが悪い」「ちょっと締まらない感じ」「あたふた」から始まるシーンになりそうですね。

 ビシッ!キリッ!と決めて格好付けるはずが……なんて感じで凹むキャラ。そんな姿に、微笑ましさや親近感を抱いてしまう相手キャラ。意外と素敵なエピソードになるかも知れません。



 「下駄(げた)履き」は多くの人にとって慣れないもの。そして服装も慣れないことが相乗効果となって、足下がおぼつかなくなるアイテムです。

 下駄履きの擬音(オノマトペ)は『カラコロ』『カランコロン』が一般的ですが、最近の下駄は裏に静音用のゴムを貼っているものが多いので、大きな音はしません。普通のスニーカーなどのように、砂を踏む『ジャリッ』という音や、リノリウム床を歩くときのような『キュキュッ』という音がします。また、ミュールなどと同じく、踵部分が歩き浮いて『ペタンペタン』とした音も出やすくなります。鼻緒で甲が押さえられているのですが、慣れない内は無音とはいかないでしょう。下駄履きで「静かに近づく」のは、かなり難しいです。下駄の足音で相手に気づく……いろいろなシーンで活用できますね。


 下駄の『裏側』(靴底)にあたる部分の形状は、主に二つです。「()」と呼ぶ角材のような地面に接する部分を持つものと、西洋靴のように底と踵部分がそれぞれ平たく存在するものです。前者の「歯」があるものを『駒下駄(こまげた)』、後者の「歯」を持たないものを『右近うこん(下駄)』と言います。

 右近はサンダルの感覚に近いので、現代人には身近に感じる下駄です。とはいえ「下駄らしい」のは、やはり駒下駄の方です。基本は「二枚歯(にまいば)」。前後、全体を三分割する感じの位置に「歯」があります。

 男性の駒下駄は「大角(おおかく)」、女性の駒下駄は「芳町(よしちょう)」と呼ぶこともあります。また、駒下駄の内、前側の歯が斜めについているものを『のめり』もしくは『コウベ』などと称します。一般的には『千両(下駄)』と呼ばれるものです。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


 見た目に反して、右近より駒下駄タイプの方が、慣れれば実際には歩きやすいです。下駄は前のめりに体重をかけて歩きますので、前に倒しやすい駒下駄の方が楽なのです。

 そのかわり、前の足指にはそれなりの負荷がかかります。

 下駄はかかと部分がありませんので、いわゆる「靴擦れ」はしませんが、その代わりに起きるのが【鼻緒(はなお)()れ】です。擦れてしまう部分は主に、『足の親指と人差し指の間(足指の股)』と『足の(こう)部分』です。

 一般に『鼻緒』と言われる部分は「足の甲でハの字になる部分」を差し、「足の指に挟まる部分」は正確には『前緒(まえお)』と言います。時代物や明治文学などで『鼻緒が切れて難儀しています』という場合、切れてしまっているのは大抵この『前緒』の部分です。現代では日常履きで酷使していなければ、滅多に切れないと思います。

 トンガタイプのサンダルに慣れているキャラならともかく、西洋風の靴に慣れた現代人にとって「足指の股に体重がかかる」下駄履きは非日常。慣れない皮膚が擦れて「靴擦れ」と同じ状態になります。

 同じように「足の甲の皮膚に紐状のものが当たる」という状態に慣れていないと、鼻緒本体による“擦れ”がおきます。これは男性の方がおきやすい怪我ですね。女性は素足+サンダル紐に慣れていたりするので、甲はあまり擦れない歩き方を心得ています。ですが、男性だと素足履きもあまりしませんし、スリッポンなどが多くて足の甲は意外と皮膚が弱かったりします。

 現実世界でこれら「鼻緒擦れ」を防止したいなら、あらかじめ絆創膏や肌色のテーピングテープなどでカバーしておくのがお勧めです。


 作中で活かすなら、やはり『足が痛くて歩けない』から始まるシチュエーションですね。

 男女問わず、怪我の手当てのために「相手の素足に触れる」のはドキドキ満載のシーンです。足の指の股なんて、恋人でもなければ普通は触らない部分。それが目の前にあって、血の滲んだところに絆創膏を貼ってあげる……赤面必至ですね。

 女性キャラのペディキュアに気づいたり、滑らかな(かかと)を捧げ持つような姿になったり、男性キャラの筋張った足骨に驚いたり、爪の形に見とれたり。

 歩けなくなって、肩を貸したり、抱っこされたり。

 「履き物」から始まるシチュエーションは『ドキッ!』にあふれています。


 なお、和装姿で「おんぶ」するのは、かなり大変です。背負う方もそうですが、背負われる方の足が開きませんし、無理に開くと“はしたない”格好になります。

 女性キャラを運びたいなら、ここぞとばかりに「お姫様抱っこ」が一番です。帯のあたりに手を添えて抱き上げましょう。それが一番自然ですよ。





具体的な動作(腕の動きや、足の動きなど)は、次回にご紹介します。

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