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【キャラに着物を着せませんか?】初心者用、和装描写のススメ  作者: 片平 久(執筆停滞中)
❀[こんな時は?]シチュエーション別の、キャラ和装のお話し❀
13/20

[4.2]【夜祭り・花火大会編】その弐:色柄など



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◆キャラに着せる浴衣は、どんな色柄がいい?

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 素材が決まれば続いて【色柄(いろがら)】です。

 どんな色でどんな模様なのかは重要な要素。流行もあれば、個性も出しやすいポイントです。


 和装の世界では、この【色柄】については面倒な慣例やしきたりがありますが、浴衣ならそれほど気にしなくてもOK。よほどショッキングな色柄でなければ『似合っているなら、まあいいか』で済みます。

 よって、基本的には『そのキャラの個性や雰囲気、情景に似合った色柄』を着せてあげて下さい。


 とはいえ、基本は抑えたいもの。

 以下は、浴衣を基準にして紹介しますが、和装の世界に共通する【色柄】についてお話します。



* * * 



 まず和装の世界では【季節を先取りする】という大きなルールがあります。大体一月くらい先を見越した色や柄を身にまとうのが良いとされます。

 日本は南北に長いので難しい所もあるのですが、本州を基準に考えると「春夏は九州あたりの季節」「秋冬は北東北あたりの季節」に合わせるといいでしょう。例えば、春ならば鹿児島辺りで桜が咲いたら桜のシーズン、青森で紅葉が見られるようになったら秋のシーズン、という感じです。

 そして実際の場所がその季節に入ったあたりまでが、色柄の相応しいシーズンです。

 具体的な例でいきますと、東京辺りで『桜の季節を意識した色柄』のものを身につけるならば『鹿児島辺りで桜の開花があった頃から、東京で開花宣言があって三分~五分咲きくらいまで』です。満開の頃にはあえて『散る桜』や『葉桜』をイメージするものに変えます。

 和装の世界、【季節ピッタリなのは、野暮(やぼ)】とされる世界です。……しらんがな。



 和装の世界における色合わせは、和の伝統色や【「襲」(かさね)の色目】と呼ばれるものが土台です。基本的に、春夏は淡い色、秋冬は濃い色で、洋装とそれほど変わりません。

 和の伝統色は「色の名前」が詩的に聞こえますので、作中での字面(じづら)が良いのもポイントです。代表的な色味は以下のような感じです。


【春】

 ピンク、黄色、黄緑系のパステルトーンやグレイッシュ(灰色がかった)トーンの色。

 「桜色」「淡黄色(たんこうしょく)」(木蓮(もくれん)の色)「若菜色」あたりが代表格。

【夏】

 水色、濃い青系の色が基本ですが、初夏には紫系、初秋には淡い茶系も。

 「浅葱(あさぎ)色」「淡藤(あわふじ)色」「薄柿(うすがき)色」あたり。

【秋】

 赤系や茶系、紫系などの少し濃いめの色や、()()びなグレイッシュトーンの色。

 「真朱(まそほ)色」「柿渋(かきしぶ)色」「古代紫(こだいむらさき)」あたり。

【冬】

 温かみのある濃いめの暖色や、黒系の色。 

 「褐色(かちいろ)」「緋色(ひいろ)」「常磐色(ときわいろ)」(松の緑の色)あたり。


 ただし、あまり凝った色名にすると【読者がどんな色なのかイメージできない】ので不親切です。描写の際には気をつけましょう。



* * * 


 

 では【浴衣の色柄】はどうでしょうか。

 基本は同じですが、多少違いがあります。基本的には【夏の色柄】とすべき所ですが、厳密に従う必要はありません。

 では、具体的に『浴衣によく用いられる色柄』と、『その色柄にまつわるイメージ』についてご紹介します。


 「綿コーマ」素材の浴衣の場合は、色柄は多様にできるためバリエーションが豊富です。

 原色に近い明るい色から、伝統的な藍白(紺白)まで、そのキャラに似合った色合いや柄を選んであげるとよいかと思います。

 若々しさを出したいなら明るい多色使いもいいですが、あまり多くの色を使うとゴチャっとした感じになります。地色+2~3色くらいが無難です。また帯の色柄とも合わせましょう。

 透ける「綿絽(めんろ)」や「麻の(ちぢみ)」などは、比較的大人しい落ち着いた色柄が多いです。透け感重視の白系の色や、ちぢみ(しわ)による濃淡が出やすい藍や紺、茶系が多いですね。精々メイン1色+アクセント1色くらいの配色が多く、大人な雰囲気を出したいキャラにお勧めです。


 普段大人しいキャラに着せてもいいですが、あえて私服が華やかなキャラに地味な色合いの浴衣を着せるのも面白いですね。

 いつもの同級生グループで出かけた花火大会。普段は色鮮やかな私服のあの子が、白地に藍色で清楚な花を描いた透ける綿絽の浴衣で登場したら……ギャップ萌え、万歳!


 夜のお出かけですので、明るい色の方が目立ちますし、夜目に映えます。伝統的な「藍白の二色だけ」の場合でも、藍地に白の染め抜きよりも白地に藍色で模様を描く方が夜景に浮き上がって印象深くなりますね。

 ただし、浴衣は『重ね着しない』ので、白や水色などの薄い地色のものは透けます。夜ですが、お祭りシーンですと屋台のライトなどで、透けることもあります。そんな『意図しない、ちら見えエロ』をシーンに盛り込んでも面白いですね。相手キャラが十代少年なら、透ける足の形だけでドキドキが止まらないかも知れません。


 ところで『和装では下着は身に着けない』という話があります。これは間違いではありませんが、現代社会では無視してもらって構いません。

 確かに下に襦袢を着ない場合、下着の線が浮き上がって見えます。浴衣ですと、アンダー下着のラインがお尻にでてしまいますね。だからといって、下着をつけないのは現実的ではありません。普段からならともかく、浴衣だからといってわざわざTバックや(ふんどし)にする必要もないでしょう。

 あえて言うならショーツガードルにしてみたり、白地や淡い地色の場合はベージュ系の下着をつけるくらいの注意で十分です。

 また女性の場合は、身八ツ口の隙間から上脇腹あたりが見えますので『ベージュなどの見えてもいい肌着』を着ておきましょう。ブラだけだとサイドが見えて、みっともないです。

 一般に【浴衣下(ゆかたした)】や【浴衣スリップ】などと呼ばれる、白無地のカシュクールワンピースタイプの肌着が、慣れない内は無難です。もしくは半袖Vネックの肌着にステテコタイプのフレアパンツあたりでしょうか。キャミソールは脇が気になりますよ。


挿絵(By みてみん)



 男性の場合【上半身は裸】でも構いません。しかし汗を吸わせる意味でも、肌着を着た方が現実的かも知れませんね。その場合、襟ぐりはかなり深いタイプにしておきましょう。衿合わせから肌着が見えるのは、みっともないです。

 下半身には膝上あたりまでのステテコ(できれば楊柳(ようりゅう)やサッカー生地タイプ)を履くと、動きやすいです。特に、普段「スカートのように、巻き付く布を足で(さば)く」という経験がない男性は、足回りが動きづらいと感じることが多いので結構重要です。

 意外と男性の方が“足が引っかかって上手く出せず、つんのめる/転ぶ”ということがあります。膝に布が引っかかるんですよね。



* * * 



 色柄の話に戻ります。


 まず女性キャラに着せる浴衣本体や帯の色柄ならどうでしょうか。


 植物や動物、事物(器物)などをあしらうものが、ほとんどです。洋風のボタニカル柄もありますが、伝統的な柄の方が“らしい”ですね。


 主な「柄」と、それぞれの注意事項です。


 植物の場合ですと、『朝顔』『撫子(なでしこ)』『菖蒲(あやめ)』『鉄線(クレマチス)』『百合』、初秋の『菊』『萩』などが定番です。他に『桜』や『梅』、『牡丹(ぼたん)』『芍薬(しゃくやく)』『藤』などもよく使われます。

 後者は季節としては合わないものですが、「桜柄」はよほど写実的なものでない限り【通年柄】といって年中着用できる柄です。

 「梅」や「牡丹」「芍薬」「藤」などは、浴衣以外では季節を問われる柄ですが、【浴衣の柄】の場合は不問にされることが多いです。特に「牡丹」と「芍薬」は『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』と詠われる通り【美しい女性に対する褒め言葉の代名詞】であるため、女性用浴衣では全く問題にされません。

 女性の場合【花をモチーフにした柄】は基本的に問題ありませんので、キャラに似合ったイメージフラワーや『花言葉にかけた柄』を着用させてみると、物語にも奥行きがでるかも知れませんね。


 動物柄の場合、最も定番なのは『蝶』『波に千鳥』『金魚』『(つばめ)』『露草(つゆくさ)(ほたる)』『蜻蛉(とんぼ)』あたりです。

 このうち、蝶以外は男性の浴衣にもよく使われます。なので、相手キャラの和装とのバランスも考えるといいでしょう。


 あえて柄をそろえてみて『思いもよらないお揃い柄』なんて、恋愛未満の間柄ならとっても美味しい状況ですね。

 その中でも作者おすすめなのが『燕柄』です。というのも、燕は『愛情豊かな幸福を運ぶ』とされる鳥で、しかも(つがい)の仲がいいことから、夫婦や恋人同士の象徴にもなります。柄そのものはキリッとした感じになりますので、男女問わず無難に着用できる柄です。

 意中の相手と同じ柄、しかも夫婦を象徴する柄だったりしたら……素敵ですね。


挿絵(By みてみん)



 事物としては、『花火』『雪輪(ゆきわ)』『団扇(うちわ)』あたりが定番です。このうち『雪輪』というのは、雪の結晶をモチーフにしたもので、涼しさを醸し出すため江戸時代から使われている定番柄です。円の縁が六ケ所欠けたようになっている文様です。

 事物柄は男女問わず使えますので、やはりお揃いにできますね。


 あとは幾何学模様です。縞や格子、立涌文(たてわくもん)という二本の縦曲線、流水文(りゅうすいもん)という水が流れる大きな曲線、あとは『源氏香(げんじこう)』や『青海波(せいがいは)』などです。

 幾何学文様の浴衣は、かなり大人しく地味になりますので、動植物柄の土台として用いる程度がいいのではないでしょうか。また、男性の浴衣で頻繁に用いられる模様でもあるので、ここはお揃いにしなくてもいいと思います。年配の方でも、浴衣は華やかな模様の方が素敵です。



 では、男性キャラならどうでしょうか。


 男性の和装は全体的に【色柄は少ない、モノトーンの地味なもの』が主流です。ですが、浴衣の場合は多少『柄あり』が増えます。

 というのも、男性は“長着は地味に、襦袢は派手に”という着こなしが多いため、襦袢のない浴衣姿では「お洒落」が表に出てくるのです。

 とはいえ、定番なのはやはり無難で大人しい幾何学模様などです。

 女性ものでも紹介した『縞』『格子』『立涌』『流水』などは定番中の定番。それを基本として、そのまま地味に突っ走るか、その上に幾つか模様を取り混ぜるタイプが多くなります。


 男性浴衣の【柄】によく使われるものは、『蜻蛉』『燕』『雪輪』『源氏香』など女性ものと共通するものもありますが、男性ならではのものも数多くあります。“(カマ)”と“円(輪)”と“ぬ”の字を組み合わせた『かわまぬ柄』などの歌舞伎模様などは粋な感じになりますね。あとは、虎や竜、鯉なども好まれます。風神・雷神や鳥獣戯画柄などもいいですね。


 柄が全体を占めると、いくらモノトーンでもかなり“うるさい”感じになります。悪ぶっている感じですね。背伸びしたい十代の若者や、不良さんや悪ぶっているキャラにはお似合いです。

 一方で、普段まじめな彼がモノトーンの虎柄浴衣なんて着てくると、やはりギャップ萌え。ワイルドさが生じます。

 一般的な性格のキャラなら、柄は“部分的に用いる”程度がいいでしょう。縦縞の中の一筋分だけ柄がある、などが定番です。

 年配のキャラや上品なキャラならば、麻縮の無地や縦縞などが似合います。

 男性に限りませんが、麻やしじら織りは動作に伴う衣擦(きぬず)れの音が『シャリっ』という感じで上品です。傍を歩く男性キャラが何気なく腕を振ったときに聞こえる、さわやかな音……いいですね。



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 浴衣は、和装の世界において『ルールが比較的おだやか』ですので、最終的にはあなたのキャラに似合う色や柄を着せてあげてください。着るもの自体には、ほとんどNGはありません。


 まとう色や柄に、物語を彩る意味を持たせたり、キャラの気持ちを反映させたり。様々に活用できます。

 作中ではどんな色柄だって自由にまとわせることができます。現実世界では無理な『ステキな衣装』に『ステキな物語』を載せて、あなたのキャラを夜祭りや花火大会に送り出してくださいな。






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今回の着用画像は【鏡に映して撮影】しているため、画像にボケが目立ちます。(不鮮明で、すみません)

また鏡面写しのため、左右が逆転しています。ご注意ください。

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色柄については語り出すとキリがないので、ごくごく簡単に……そのうち、別の長着説明でもっと語ると思います(汗)

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