混乱
爽やかな朝だ
窓の外で小鳥がちょんと鳴いている
がちょん
小鳥、がちょんと
鳴いている
こんな声で鳴く鳥はなんだっけ?
そう思って時計を見ると
5時47分
朝なのか
夕方なのか
確かめたくて
車を出ると
走行中だったので
急いで閉める
ハンドルを握ると
少しシャッキリした
前方赤信号
右折専用車線へ
入りたいのに
鳥がのんびり歩いている
私のタイヤの通るところを
優雅にゆっくり滑るように
麦チョコが落ちているのを辿るように
がちょんと鳴いていた小鳥とはたぶん違う
セグロセキレイさんの名前は知っている
白いワイシャツに可愛いタキシードをひっかけたような
あの綺麗な小鳥の名前は何だろうと
調べたことがあったので
踏まないように
目視しながら
なんとか越えて
前方を見ると黒猫が横切っている
危ないよ
対向車がやって来るよ
そう叫ぶと
ばかにするなというようにこっちを見て
弾丸のように駆け抜けて行った
ああよかった
あれは頭のいい黒猫だ
きっと厳しい人間社会を生き延びて行ける
ばかにした目で人間を見ながら
ほっとしたら
トイレに行きたくなったので
車を出たら
車は停まっていた
まるで最初から動いてなかったように
えーと
私どこへ行くんだったっけ
そうだトイレだ
でももっと遠くにも行くはずじゃなかった?
そうそう
8時半までにあそこへ行くんだった
あそこまでまだ4時間半かかるね
到着予定時間10時半か
あれっ?
ようやく頭もシャッキリした
そうか私
遅刻確定なのか
トイレ行ったら気分が悪くなって
車に戻って目を閉じてたらいつの間にか眠ってたんだな
2時間以上も寝ちゃった(テヘ)
慌てても仕方がない
がちょんと音立てて仕事をしている自動販売機のお兄さんを眺めながら
今日をゆっくり始めよう
電話入れときゃ問題ないさ
どうりで爽やかな朝だと思ったよ
人間社会から自由になった気分
空がやたらと広く見えて
歯磨きセットぶら下げて歩いて行った




