強者
マリノとハロルド、オーウェンの三人の無事を信じて急ぎ庭園へ足を踏み入れ、ぼう然と立ちつくした。
「な、何よこれ……!」
「これはまた、派手にやったもんだ」
私は開いた口が塞がらず、クライブは楽しそうにくつくつと笑う。
「陛下、お怪我はありませんか?」
近衛兵のオーウェンが駆け寄ってきて、敬礼する。
今度は一拍遅れたハロルドが、剣を納めながら歩いてきた。
「オーウェンさぁ、それ聞くの逆に失礼じゃない? 陛下の剣の腕は俺らが一番知ってるでしょ」
「ああ、そうだったかもな」
「でしょ?」
近衛兵二人は先ほどまで王国兵と戦闘を繰り広げていたというのに、顔を見合わせのほほんと笑っており、私は正直ひいた。
「俺は構わないが、これはやりすぎじゃないか?」
クライブは二人を前にして、広い庭を見渡す。
やりすぎ。私も激しく同意した。
月明かりが照らす広い庭には、数え切れないほどの兵士がのびていたのだ。
「次から次へと飛びかかってくるもので、申し訳ございません」
「うーんと、つい血が騒いじゃったんですよねぇ……でも命令はちゃんと守ってますよぉ。誓って、誰も殺してません」
叱られるとでも思ったのか、二人は勢いを失い、小さくなる。
クライブはしょげる彼らの肩を叩いて、優しく笑った。
「難しい命令だったのに、よくやってくれた」
「陛下ぁっ!」
「一生おともいたします!」
感激した様子の二人を微笑みながら見つめていると、後ろから柔らかい声が聞こえてくる。
「ティア王妃殿下、お帰りなさいませ」
振り返ると、髪一つ乱れていないマリノがいた。
「もしかして、マリノも戦ったの?」
別れた時と同じ綺麗な見た目をしているマリノに問うと、にこりとうなずいて庭の一角を指差してきた。
「はい。庭を三分割したあのあたりは私の担当でした」
当たり前のように言うけれど、かなりの人がのされているのだけど……
どうやら私の侍女は、私にはもったいなさすぎるほどに優秀だったようだ。
「無事に解決されたようですね」
いつものように微笑むマリノにたまらなく安心感を覚えて、幼い頃のように両手を広げて抱きついた。
「私、逃げないで頑張ってきたわ」
「本当にご立派でしたね」
マリノに優しく背中を撫でられて、なぜだか泣き出しそうになってしまい、慌てて目元をぬぐって離れた。
「さ、マリノ。帰りましょう。大好きなノースランドへ」
未だ起き上がることのできない兵士たちを横目に、私たちは庭園を行く。
お母様は、出立は明日でいいじゃないと話していたけれど、私たちは元々招かれた客でもなかったし、少しでも早く帰りたくて、準備ができ次第発つことにしたのだ。
マリノとハロルド、オーウェンの三人は、強者同士意気投合したようで、戦闘方法や武器について小難しいことを並んで歩きながら話していた。
そんな三人にばれないように、私は隣を歩くクライブの袖を引っ張って足を止めさせた。
「どうした?」
心配そうに尋ねてくるクライブの声がなんだか優しくて照れくさくなってしまい、顔を背けたまま口を開く。
「先日のお返事ですが、帰城した日の夕食前にさせてください。アンディの庭にあるベンチでお待ちしています」




