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094 久しぶりの町内会議~やる事てんこ盛り~

挿絵(By みてみん)

 ――カタカタカタカタ……



「うっは~~~! 何だこれは! 凄いぞ! 小村電器店に似たようなものがゴロゴロとあったが、起動するとこんな感じなのか!」



 その日の夜――


 町内会議の為、街の代表者を商工会議所に集めたが……


 早速エリカがパソコンに釘付けだ。


 というか……


 え? もうかなり使いこなしてないか?


 なにその画面……プログラム言語……?


 そんな画面、現代人の俺でも見たことないぞ!



「エリカ、これから会議するからパソコンやめてくれない?」


「嫌だ! ボクはこの機械の事をもっと知りたい! 街の事なんて他のみんなで話し合ってくれればいい! ボクはそれに従う!」



 理導士のエリカからすりゃ、目の前に最高の宝があるんだ……それどころじゃないだろうな。


「おい、蓮……こいつ、ちょっとシメていいか?」とサリサが物凄く怖い顔で拳を震わせた。



「む? サリサっち。ボクをその拳で黙らせるつもりか? ボ、ボクは暴力には屈しないぞ!」



 ――カタカタ……



「それにボクがこの機械の仕組みを知ることは、絶対にこれからの街の為になるはずだ! 文明の足を止めるな! 馬鹿たれ!」



 ――カタカタタ……



「ば?! 馬鹿たれ?! 言わせておけばこのメガネ~!!!」


「お? また違った言語が出てきたな……ここをこうすれば……おお! こうなるのか!」



 ――カタタタタタ!



 こいつ凄いな……もう会話しながらブラインドタッチでキーボードをいじっている。初めて触る道具を、平然と現代人以上に使いこなしている……間違いなく規格外の天才だ。



「まあまあ、サリサ……エリカにはパソコンの扱いを学んでもらっておいて、会議は俺たちだけでやろう」


「……わかった。蓮がそういうなら……そうする」



 相変わらずこういうところは素直だな。


 エリカとサリサ以外で町内会議に集まったのは――


 サロン・ド・サリサからカリスとタリナ。


 スミスマルチーズからバルト。


 江藤書店から伊織ばあちゃんとアポロ。


 合計7人の店主と従業員たちだ。


 ヴィヴィ食堂とたぬきつねの湯は、店を閉めるわけにはいかず、ヴィヴィとディアナ、ウォルフは参加できなかった。桜ヶ谷酒店のドンガも、酒の発酵を見ていなければならないので不参加となった。



 ――「そんで? なんで緊急会議開かないかんとね、蓮ちゃん。私、今日はちょっと読みたい本があったんばってん」――



 ばあちゃんは突然の緊急会議に少しご機嫌斜めだ。読みたい本って……どうせBL系か百合系のライトノベルだろ。



「あのなあ、ばあちゃん。電話とパソコンが復活したんだぞ? そして小村電器店の店主には理導士のエリカが雇用された……この意味わかってんのか?」


「なんが? え~……便利になってよかった~! ってことやないと?」


「違う。便利過ぎるってことだ。だろ? チエちゃん」


《はい。以前ヴィヴィ食堂の家電を復活させたとき、その全てが永久機関……つまり動力を必要とすることなく稼働しました。しかしこの世界、ヒズリアでは『電気は禁忌』……神の力である雷の力を使う事は、異端信仰ともとられる危険性を孕んでいます》


「やけん、『カデン』っちゅう偽の魔道具として扱うように、バルちゃんたちドワーフさんに魔方陣の刻み細工をしてもらったんやろ? 今回もそうすればいいやん」


「家電までなら誤魔化しは効いたが……今回は違う……電話とパソコンだぞ?」



 さっき確認したが、電話線が無くても電話は繋がったし、パソコンは全てのソフトが問題なく作動している。流石に現代のインターネットには繋がってないが、電話が生きてるって事はネットワークが組める。



「おい、蓮。そもそも電話とはなんだ? この数字とグルグルの紐のやつだろ?」


「簡単に言うと……電話さえあれば遠くの人と話せる。誰でもだ」


「なんだと?! チエの念話みたいなものが、誰でもか?!」


「チエちゃんの念話ほどの汎用性は無いが、会話は十分にできる。そして、このパソコンだが……プログラムさえ組めば、大抵の事は出来る。特に計算系……人の頭脳の100倍……いや……何万倍の速さでな」



 ――「「「いいい?! 何万倍?!」」」――



 エリカとばあちゃん以外はみんな目を丸くして驚きを隠せなかった。



「そして、その在庫は小村電器店にまだあるみたいだ。ラーメンに夢中で小村電器店の中をちゃんと調べてなかった俺も悪いんだが……とにかく便利過ぎるんだ……危険なほどに」



「危険なのか?」とサリサがごくりと喉をならし問いかける。


 ばあちゃんは下を向いて何やらゴソゴソしている……あ……この人……本読み始めてる! 飽きたな?!



「遠隔地に情報を一瞬で飛ばせる……これが出来れば戦争で――無双だ」


「あ! そうか……相手がどんな布陣でどこにいるのか分かってしまう……」


「この『情報を一瞬で解析し、一瞬で飛ばせる』という技術は……完全に世界を変えてしまうものなんだ……俺の元いた世界でもそうだった。近代戦争は情報の戦争でもある。そして……もしこの技術を悪用しようとするやつが現れたら?」



 みなの顔に緊張が走る――


 理解したのだ。事の重大さを……ばあちゃん以外は!



「だったら……封印するなり壊すなりすればいいじゃないか」


「いや……多分もうダメだ。問題は……エリカとバルト、そしてチエちゃんだ」



 ――「ん? なぜボクが問題なんだ?」「僕も関係するのぅ???」《え? 私もですか???》――



 三人は意表を突かれたように、それぞれにリアクションをした。



「チエちゃんは知識の探求をやめられない。バルトも作ることをやめられない。エリカに至っては、更に高度なものを作り出すかもしれない……分かるか? 最悪の組み合わせだ……お前ら、俺がパソコンと電話、小村電器店を再び封印すると言ったらどうする?」



 三人は同時に反対の声を荒げた。



《そんな! それはあんまりです!》


「そんな寂しい事言わないでよぅ~蓮さん~!」


「君は馬鹿か?! 何故こんな素晴らしいものを封印する! 封印してもボクは盗みに入るぞ! 捕まってもまた盗む! 何度でもだ!」



 エリカ……それはダメです。アポロもいるんだから。子供が真似するでしょう。

 


「だろう? お前らはパソコンや電話の存在を知ってしまった……もう止まらない。きっとチエちゃんがその構造をエリカに教える。そしてエリカはバルトと一緒に復元するはずだ。つまり俺が封印しようが壊そうが……お前らはやるだろ?」



 ――《やりますね》「やるにきまってるだろ!」「作って見せるよぅ!」――



 なんと清々しいほどの受け答え……うん、封印は無駄だな。


 だったら――



「サリサ……ここを迎賓館にするのは無しだ。迎賓館は別に建てよう。情報漏洩のリスクが高すぎる」


「そうだな……そうしよう」


「パソコンや電話などは見えないところに隠した方がいい。あ、そう言えばこのビル、地下に小さな倉庫があったな……そこを拡張して大狸商店街の中枢にするのがいいかもしれない……バルト、出来る?」


「もちろん大丈夫だよぅ! 僕たちドワーフは土の魔法が得意だから簡単さぁ! 絶対壊れないように頑丈に、広く作るよぅ! だから……封印しないでねぇ?」


「分かったよ。地下は秘密の基地、一階から上は普通の商工会議所、つまり街の役場みたいな扱いにして、二階から三階は……そうだな、俺たち商工青年部の宿舎にしよう」



「あの! 蓮さま! その青年部って……お、俺も入っていいですか?!」黙って様子を見ていたアポロが声をあげた。



「え? アポロが?」


「はい! あの! なんでも手伝うんで! ほら……江藤書店はその……ほら! 伊織さまがいるし! ね?! どうでしょう!」



 あ~、江藤書店は相変わらずの閑古鳥。ようは暇すぎてまたハゲるってか。


 そうだな……これから人手もいるだろうし、アポロが実は有能なのはウキヤグラで証明されてる。いいかもな。



「うん、いいんじゃないか? 一緒に青年部として街を盛り上げよう」


「は、はい!!!」



 ここで知らん顔してライトノベルを読んでいたばあちゃんが反応した。



「え?! 蓮ちゃん、アポちゃんここに住むん?! なんで?! うちにおったらいいやん! ばあちゃんの事が嫌いになったん?!」


「いや、違うよ!」「ち、違いますよ!」


「あ! あれやろ?! アポちゃん、毎晩、魔力放出に付き合わされるのが嫌なんやろ?!」


「それは……確かに嫌でしたけど」


「ほらぁ~~~! やったら私、一人で行くけん! 居ってよ~!!!」


「ばあちゃん、俺、前から考えてたんだ。住民が増えて街の規模が大きくなったから、江藤書店じゃ手狭で、ちゃんとした業務ができないだろう? ほら、ヒーゴ王とソニンと条約結ぶ時もぎゅうぎゅうだったじゃん」


「仕事はここでして、うちに帰ってくればいいやんね! やっぱり嫌いになったんやろ! ばあちゃんがBL本ばっか読みよるけん? それやったらもう読まんけん! うちに居ってよ~! 蓮ちゃんアポちゃ~~~ん!」



 ばあちゃんはBL本を机に叩きつけ号泣し始めた。


 そんなに?! そんなに俺たちが出ていくのが嫌なの?! 嬉しいような……驚きが勝つような……意外な反応に俺は少し戸惑ってしまった。



「違うって、ばあちゃん。ほら、俺、ずっとこの建物でひとりで仕事してたじゃん? でも、うまくいかなくて……だからさ……もう一度ここでやり直そうと思うんだ。ここを俺の家として」


「ぶぅぅぅ……なんかよう分からんばい……二人ともうちに居ればいいのに……」


「本当に狭いんだって江藤書店! ローニャが毎日のようにばあちゃんの魔力吸いにくるし、そのまま泊まったりするし……とにかく狭いの! アポロも年頃、そろそろ自分の部屋も欲しいだろうし……だからさ、俺とアポロがここに住めば、二階部分はローニャが住めばいいかなと思って」



 ローニャと聞いて、ばあちゃんの目が光った。



「え?! ローニャちゃんがうちに……?! あ~そうねぇ~……それならぁ~そうねぇ~……蓮ちゃんには二階は狭いかもねぇ~……アポちゃんも部屋が欲しいやろうし……うんうん……あ~それがいいかもねぇ!」



 ……ローニャが来るなら寂しくないってか? ここのところ二人は本当に仲良くなった。自分の魔力を分けてあげてるから、母親的な情が湧いたんだろう。


 おいアポロ……俺たち二人……ローニャに負けたぞ!!!



「……じゃあそういうことで……アポロと俺はここに住もう……」


「はい……そうですね」


「はぁ……それと、カリスとタリナにお願いがあるんだけど」



「なんだ! 蓮どの!」と、待ってましたとばかりにカリスが声を張り上げた。



「カリスとタリナには、この建物の警備をして欲しいんだ。今も話したように、地下には中枢を置くし、商工会議所となると色んな人が来るだろう? 中にはちょっとした荒くれ者もいるかもしれない。だから二人が入り口に立っててくれば……その……抑止力になるかと……ダメかな?」



 タリナが俺の前に歩み寄り、物凄く顔を近づけてきた。



「田中蓮! お前……見る目があるな! その仕事……我らにうってつけ! そうであろう? 姉上!」


「うむ! どんなものが来ようと、我らの覇気で縮み上がらせてくれりょうぞ!」



 なんと心強い警備員だ。


 俺の脳裏に、いくつもの金メダルを取った『霊長類最強』と謳われた女子レスリング選手、YOSHIDA氏。彼女が出ていた警備会社のCMがよぎった。



 ――「「ぐはははは!!!」」――



 霊長類最強女子が二人……安心だ。


 さて、あとは迎賓館と宿泊施設、うま味調味料か。


 ペーパー君は……科学チームが適当にするだろう。


 あ、そう言えば、ヒーゴ王からも『いい加減、クマロクに顔を出しなさいよ』と書簡がきてたな。


 無理にでも暇を見つけてクマロクに行かなくては。


 ちょっとやることが多すぎて目が回りそうだけど――


 『あの頃』の……


 街の灯が消えていく悔しさと比べてたら……


 なんか……すごくいい感じだ!


 さあ~! 忙しくなるぞ!











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