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093 本拠地、解禁!~テクノロジーが過ぎる~

挿絵(By みてみん)

 ――《あ、ありがとうございます! このチエ! 身体が手に入った暁には、これまで以上に伊織さま、蓮さまにお仕えする所存であります!!!》――



 結局、ペーパー君はチエちゃんに譲ることになり、その修理はエリカとバルトがすることになった。ペーパー君の話をするとバルトは息を切らせて駆け付け、その白いボディを食い入るように調べ始めた。



「ほうほうほう~! こりゃあまた凄いのが出てきたねぇ! 本当にこの街は退屈しないよぅ~」


「バルっち! この足元だが、腕の構造を参考に改良できないだろうか?」


「なるほどねぇ、それは面白そうだねぇ~!」


《バルトさま、エリカさま! 私、ボディを女性タイプに変えて欲しいです! あと顔の表情も変えられるように、シリコン製にして欲しいです!》



 ――「「シリコン? なにそれ?」」――



《シリコンというのは、『有機ケイ素高分子』と申しまして、様々な種類がございます。例えば医療用や産業用など――》



 技術のバルト、理導のエリカ、知恵の宝庫のチエちゃんの三人なら、きっとペーパー君を復活させられるだろう。


 もうすでに改造の相談をしてるし……



《――とシリコンと言えどもピンキリでございます。出来れば安物のシリコンではなく、医療用など本物の肌質に限りなく近いものがいいのですが……どうでしょうか?! できますでしょうか?!》


「どう思う? バルっち」


「う~ん。異世界の技術をそのまま再現するのは難しいだろうねぇ」


《そう……ですか……》


「でも、ヒズリアの素材や、魔法と組み合わせたりしたら、結構近いものが作れるんじゃないかなぁ。だけどねぇ、チエさん、エリカちゃん……これほどのものを修理、改造するとなると……希少な素材やそれを集める人材が必要になるよぅ?」


「ん? 集めればいいだろう? 何か問題があるのかい?」


《それはつまり……》


「そう。お金がかかるって事さぁ。しかもかなり……」


「くそう! ここでもお金か! 誰か無償で素材をくれないかなあ! こん畜生!」


《お金……ですか……》



 チエちゃんがそう呟くと同時に、バルトとエリカが俺に湿っぽい目線を送ってきた。


 え? あ、これ……俺にお金を出せと?


 何故かばあちゃんまで一緒に見ている。いや、あんた、へそくりため込んでいるだろう。



「バルっち。お金ってどのくらいかかんだい?」


「う~ん……そうだねぇ……金貨100枚くらいあれば、どうにかなるんじゃないかなぁ~」



 ――「「「《金貨100枚?!》」」」――



 おいおい日本円にしておよそ1000万かよ! 無茶苦茶かかるじゃないか……いや、新たな事業として考えたら、結構リアルな数字だな……バルトは別に吹っ掛けているわけじゃない。ヒズリアにない新たな素材を作ろうとしてるんだ……むしろ切り詰めた数字だろう。


 バルト、エリカ、ばあちゃん、そして心なしか……ペーパー君までが俺に金の無心の視線を送っている気がする。


 1000万かぁ。俺、ソニン海賊団の船の修繕費の借金も抱えてるんだけど……きっついなぁ。でも……チエちゃんがこれほどまで身体を欲しがってるんだ……


 だったら――



「分かったよ……チエちゃんはずっとこの街に貢献してきたし、大切な俺の家族だ。その金は俺が……っていうか、街の資金から出すよ。俺個人のお金はないからね」



 途端、みんなの顔が輝き歓声が沸き起こった。ばあちゃんだけは安堵のため息を漏らしている。へそくりを死守出来て安心してやがる……まあ、ばあちゃんのへそくりには難民問題の時、助けられたからな。今回は俺が……っていうか街が何とかするしかないだろう。


 はぁ、俺もちゃんと給料もらうようにしよう。やる気搾取はよくないな! ホワイトな街づくりをしないと!



「ただし、うま味調味料の方を優先してほしい。しかもかなり急ぎで。それでいいかな?」



 ――「いい!!!」「ほっほほう!」《はい!》「へはぁ~……」――



 結局俺は、うま味調味料を作るための費用として金貨100枚を追加で出すことになった……2000万の出費は痛いけど、これまでの街の売り上げを考えると……ギリギリなんとかなるだろう。


 それに……うま味調味料が出来れば、きっとヒズリアで爆売れするはずだ。そうなればすぐに赤字もペイできるだろう……多分!




 ◇     ◇     ◇




 ペーパー君発見から1週間。大狸商店街はにわかに活気づいていた。うま味調味料製作とペーパー君改造のための新たな事業が動いていたからだ。ペーパー君に関しては、余計な混乱を避けるため、小村電器店内部で極秘裏に事を進めている。


 ツクシャナ共和国全土から様々な素材が集まり、それに伴い人の出入りが以前に増して多くなった。


 そこで新たな問題が――



「蓮……難民問題の時、ある程度は対応していたが、こう人の出入りが多くなると、やはり、居住施設と宿泊施設が圧倒的に足りない。早急に作る必要があるぞ」



 サリサが深刻な表情で書類を見ながら江藤書店に相談に来た。



「だよね……このままだと、またあの時みたいに街の環境が悪くなるな」


「治安に関しては、カリスとタリナに任せていた自警団が巡回しているから今のところ問題は無いが、大狸商店街に移住希望する者も増えているし、旅人たちは仕方なくテントを張ってキャンプしている。伊織の加護のお陰で魔物は弱体化されたとはいえ、いなくなった訳じゃない。力のない旅人にとってはまだ森は危険に変わりはないからな。このままでは相当ストレスだろう」


「自警団、ちゃんと機能してたんだ……」


「当り前だ! はっきり言ってお前ら転生人は呑気すぎる! 街を発展させることも大事だが、それ以上に街を護る武力も持ってないと、すぐに攻め込まれて全て奪われてしまうぞ?」



 サリサの正論が耳に痛い……特に俺みたいな現代日本人は平和ボケしてるからなぁ。敵国が攻め込んでくる状況なんて、生まれてこのかた知らない……平和、平穏であれたこと……感謝しなきゃな。



「あと、他の国の使節やお偉方を迎える迎賓館みたいなものを作らないと……舐められるぞ」



 あ~、やっぱりファクタの使節、カッツォーネさんの態度が気に入らなかったんだな……完全に根に持ってるな。この元王女様……案外粘着質かも。


 だがやはり迎賓館は必要だな。たぬきつねの湯はどちらかと言うと『庶民のための憩いの場』だもんな。


 仕方ないな……あまり気乗りしなかったが……ついにあの施設を復活させるしかないか……



「サリサ、迎賓館ならすぐに何とかなるよ……」


「なに? 本当か?!」


「ああ。まあ多少飾りつけは必要になると思うけど……早速行こう」



 俺とサリサは『あの建物』に向かった……




 ◇     ◇     ◇




「ここだよ。この建物を迎賓館兼……商工会議所に使ったらどうかな?」



 俺たちの前にある建物は……商工会議所だった。地上三階建てのコンクリートの小さなビルで商店街最盛期には多くの事業主たちが出入りしていた。


 商店街最終期にはこのビルに俺一人しかおらず、それはそれは……寂しいものがあった。



「おお! ちょっと飾りっけが無いが、いいじゃないか! なんで今まで解放してなかったんだ?」



 生前俺は大狸商店街を復興させようと頑張ってきた。だがご存知の通り、その努力も(むな)しく、江藤書店の閉店と共に大狸商店街の全ての店のシャッターが閉ざされた。


 大狸商店街に一つだけあるコンクリ式のビル。この古い街並みに似つかわしくないこのビルで、来る日も来る日も一人で仕事をする日々……毎月のように届く閉店の報せ……街の灯が消えていくのをこのビルから眺めていた。


 要するにここは……俺的にトラウマの場所なのだ……



「まあ、ちょっと色々あってね。だけど今は人も増えてきたし……今度こそここで街を盛り上げていこうと思う」


「そうか。良い建物じゃないか。早速解放してくれ」


「分かった……ふう……いくぞ……開錠(アンロック)!!!」



 古びたビルが見る見るうちに新築同様に再生されていく……ずっと避けてきたけど……もう一度……もう一度ここから始めてみるか。



 ――キィ……



 ガラス張りの両開きのドアが静かに音をたて、俺はビルに入った。


 新品同様になったとはいえ、俺がいた頃と変わらないオフィス……慣れ親しんだ仕事場だ。



「だだいま……また、よろしくお願いします。あ、よかった。俺のデスクだけじゃなくて、前居た人たちの分も転生してる。これから忙しくなるからな、みんなで手分けして業務をこなさないと」



 俺は自分のデスクに腰掛けた。異世界に転生して半年ちょっとだが、それでも懐かしさが込み上げてきた。


 サリサが興味深そうに後ろから俺のデスクを眺めている。



「なあ蓮、これは何だ? 数字が書いてあるが……」


「ああ、それ電卓。大抵の計算はこれで一瞬でできるんだ」


「何だそれ! 滅茶苦茶便利じゃないか! お、これも数字が書いてあるな……なんかグルグルした紐がついてるぞ?」


「それは電話っていって、遠くの人と話が――」



 あれ……??? 電卓に電話???


 入ってきた時、あまりにもいつもの風景だったから意識しなかったが……



「これは何だ? こっちも文字と数字が書いてあるが……ん? このガラスの板に繋がっているのか?」



 おいおいおいおい……そうか……そうだ!!! 商工会議所が復活するって事は、その業務に必須の道具……



「こ、これは……パソコン! パソコンだ!!!」


「パソコン? なんだそれ……」



 つまり電卓やパソコンが一緒に復活するって事だ!



「パソコンは……これ一つで街の管理業務のほとんどが完結する……最強の道具だ!!!」


「ええ?! これで?」



 やばいやばいやばい! パソコンに電話……完全に現代科学だ……しかも小村電器店が復活している……中を詳しく調べたわけじゃないが、きっと電話やパソコンの類がきっとあるはず……


 これは……革命どころじゃないぞ……産業革命、情報革命を飛び越えて……完全にオーバーテクノロジーだ……


 こんなの周辺諸国に知られたら、どんな難癖つけられるか分からない!


 やれ禁忌だ、やれ黒魔術だと絶対に目をつけられる!



「おいサリサ……緊急町内会議だ!!! 代表者たちを集めろ!!! これは……大ごとだ!!!」


「うぇ?! わ、わかった!」



 こうして俺たちは久しぶりの緊急町内会議を開くことになった。


 とはいえ、俺は代表者が集まるまでに、念のため全ての電気機器に触れ、目覚めさせた。


 やっぱり電源なしで起動してる……あれもこれも永久機関だ……


 やっばいなぁ。










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― 新着の感想 ―
ほんと、どこからエネルギーが供給されているのでしょうね。そして、インターネットはこの世界ではいったいどうなるのか? 単に機能しないのか、それとも?
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