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040 考えなしに受け入れるのはダメ! 絶対!

 ――「蓮どの、伊織どの、お集りの皆さま、遅くなり申し訳ない」――



 そして現在――話は大狸商店街、町内会議に戻る。


 カリスとタリナがようやく会議の場にやってきた。町内会議へ初めての参加なので、新たに仕立てた服を着てくるといっていたが……こ、これは……!



「サロン・ド・サリサの従業員に相応しい装いをと思いまして」と直立不動のカリス。


 タリナが少し恥ずかしそうに「なにぶん、こういったものは着慣れておらず、少々手間取ってしまいました」と頬を赤らめる。



 カリスとタリナの見た目は知ってるよね? そう、彼女らは、2メートルを超える筋骨隆々の熟練の戦士。その顔には何と言うか……数多の死線を潜り抜けた歴史が刻まれている、っていうか、濃い! 物凄く濃い顔立ちをしているのだ。二人だけ劇画調なのだ。そんな二人が選んだ装いは、あろうことか……



 ――ぶりっぶりのメイド服だった――



 なんという事でしょう。あの風神雷神のような強さを誇る、歴戦の戦士カリスとタリナが……花飾りの付いたホワイトブリムに、ふわりとあしらわれたフリルが可愛いエプロン。ドレスの丈はもちろんミニスカ。そしてニーハイ。ほうきやほこり叩きの代わりに、大剣と大斧という素敵な装いに生まれ変わっているではありませんか。



「カリちゃん、タリちゃん……あんたら」ばあちゃんは目を丸くしている。


 ヴィヴィ、アポロ、ディアナの猫族チームは無言で視線を外している。だが……三人とも頭が伸びてるぞ! それ、警戒態勢だよね?! ばれるよ!


 バルトは「ほ~う! ほうほう!」と両手でパタパタと机を叩いている。どういう感情なんだそれ。


「「どうだろうか……」」と二人はもじもじと感想を求めてきた。


 その場にいた全員の視線が俺に集まる。なんで俺に振るんだ!!!


 厚い胸板、俺の太ももより太い腕、はち切れんばかりの肉体美にメイド服。なんて言えばいいのですか?



「あ、あの……えっと……い、いいと思います」と俺は無難に答える……が!


「蓮どの、具体的にどこが?」「教えてくれ、田中蓮」と二人は一歩前への精神で詰めてくる。ああ~、サリサの育ての親というだけある。このグイグイ来るところ、そっくりだ。



「え~、あう~、その~」と俺は半ば泣きそうになりながら、何とか言葉を探す。まともに二人の顔が見れないので、視線はおのずと足元へ……は! これは……



「その~、ニ、ニーハイ? そ、そこは絶対領域とよばれておりまして……いわゆる、萌えポイントとされておりますです、はい……」



 嘘つけーーー!!! 今、絶対領域からのぞいているのは、ぶっとい丸太四本じゃないか!



「絶対領域、それはどういうことだ? 蓮どの」とカリス。


「えっと、絶対領域っていうのは、こう……ニーハイとスカートの隙間のことでして……」



「ここのことか? ただの隙間じゃないか?」と太ももをあげ、自身の絶対領域を観察する。やめろ! ミニスカだから、そんなに足をあげると見えてしまう!


「もえとはなんだ? 燃えるということか? 田中蓮!」とタリナが眉間に皺を寄せ詰めてくる。なに? 俺、なんか悪いことした?



「えー、なんと言うか……総じて……か、可愛いってこと、か、かな?」



「かわ……いい?」カリスが驚きのあまり、手で口を押える。


「た、田中蓮! 私は恥ずかしいぞ!」と、タリナが俺の肩をはたこうとする!


 うわぁ! グローブのような巨大な平手が風を切り迫ってくる! 俺はとっさ神槌(しんつい)を発動し、その手を躱す――



 ――ゴオッ!!!



 殺意がこもってるんじゃないかと思うような音で、タリナの腕が空を切る……あっっっぶねぇ!



《蓮さま、神槌(しんつい)の無駄遣いです。こんなことで、いちいち発動してたら死にますよ》


(いや! 躱さなきゃ肩砕かれてたって!)



 これ以上、この話題を続けるのは危険だ。バキバキにやられてしまう。



「こ! この話はこれでおしまい! 今は会議をしなくちゃ! ね?!」


「ふむ……お騒がせした。改めて、カリス・ギガブラドだ」


「タリナ・ギガブラドだ。よろしく」



 この二人は姉妹だそうだ。そっくりだもんな。まあ、性格は少し違うようだが……


 姉のカリスは冷静沈着という印象。タリナは激情タイプって感じかな。


 二人ともブラウンの髪色だが、カリスは軽く癖のある柔らかな髪をハーフアップにまとめ、トトゾリアの紋章が刻まれた髪飾りで留めている。


 対照的に、タリナはきっちり編み込んだ髪に小粒の宝石を散りばめ、その輝きが彼女の鋭い眼差しを引き立てている。


 一見、その迫力ある風貌に目が行きがちだが、二人とも意外なほど身綺麗にしている。



「蓮さん蓮さん……」とバルトが小声で耳打ちしてくる。



「どうした?」


「二人ともあの服、似合ってるねぇ。いいねぇ。でも、どちらかというと、僕はカリスちゃんが好みかなぁ……ほうほう」と手をぱたぱたさせる。



 あのリアクションはそういう事だったのね。よかったね、カリス……好みだってさ。




 ◇     ◇     ◇




 さて、全員揃ったところで、ようやく本題、町内会議だ。


 森湧顕地(もりわきけんじ)のせいで、大狸商店街の存在と場所が知れ渡り、ツクシャナの森の住人たちがこぞって訪ねてきた。


 そこで様々な問題が浮上する。


 その前にまず、ツクシャナの森の人々の生活について語っておこう――



 ツクシャナの森は四方をぐるりと山脈に囲まれている。そして、山脈の内側は強力な魔物で溢れている。この地形と魔物のせいで、ツクシャナの森にある集落はその殆どが山の麓や、森の外周に点在している。よほど力に自信がある種族でないと、森の中で生活が出来ないというわけだ。


 ツクシャナの森の住人たちのほとんどは、近隣諸国から『追いやられた者たち』だ。


 ツクシャナの森は不可侵領域。そしてこの森には別の名前があった。



 ――『死の森』――



 奴隷、差別、搾取、あらゆる不遇を押し付けられた者たちが、この森へ追いやられた。


 戦乱に巻き込まれ行き場を無くした一族。特殊な種族ゆえに差別を受けた者たち。ひどい扱いを受け、使い物にならないと見捨てられた奴隷。または脛に傷のある日陰者……


 社会の片隅に追いやられた、そんな社会的弱者が多く森に逃れ、彼らは外周部の僅かな資源に頼って生き永らえてきたのだ。


 しかし大狸商店街が森の中心部に転生し、稲荷神の加護が発動したことで、逆転の現象が起きた。


 外周の強力な魔物さえ乗り越えれば、あとは徐々に魔物が弱くなる。以前よりバルト達や訪れた冒険者のお陰で、大狸商店街があるという噂は広まっていた。しかし、危険を冒してまで森の中心部へ来ようとするものは少なく、そもそも、その存在も眉唾物(まゆつばもの)ではないかと、みな半信半疑だったのだ。


 だが、ツクシャナの森に住まう全ての者が、森湧顕地をみた。弱き民にとってそれは神の御業そのもの。そして神とは救いの主……みな天を穿つその巨木に、救済を夢見た。そして立ちどころにある噂が広まる。



 ――「あの巨木のもとに、神の使いがいる」――



 大狸商店街へ近づくほどに、魔物の強さが弱くなる。この逆転現象が、ばあちゃんを神の使い、救い主へと神格化する。


 みな、希望を持ってやってきた。


 だが……外周の魔物は強い。商店街へたどり着くまでに、命を落とした者もいるだろう。



 ――来るもの拒まず――



 俺とばあちゃんは、全ての人々を寛容な心で受け入れた。


 そして、ばあちゃんは神の使いと崇められ……



「がーはっはっは! よかよか! どんどん来んしゃい! 寛容の精神ですよ!」



 速攻で調子に乗った。


 これが悪い兆候だった。


 来るもの拒まずの大狸商店街だが、異文化圏の多種多様な種族が一挙に集まることで、様々な摩擦が起こり、争いが絶えず、生活習慣の違いから、街の環境はみるみる悪くなった。



「れ、蓮ちゃん……気づいたら、なんか街の様子が……えらいことになっとるね……」



 結果、大狸商店街は速攻で――



 スラムと化した……






 ――――――――――――――

 出てきた魔法


 ・森湧顕地(もりわきけんじ):木属性。伊織最強の魔法。伊織の全魔力と完全な詠唱をもって発動。地形を変えるほどの威力を持つ巨木を顕現させる。全ての人々に迷惑なので蓮より発動禁止命令が下された。

 ――――――――――――――






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― 新着の感想 ―
扱いに困る魔法…… そこまで元ネタの方を体現しなくてもw
かといって、騎士団やギルドや部族などの単位で受け入れると、ある程度秩序は維持出来ますが、国内に言うことを聞かない勢力が出来てしまい、いずれ近代化して中央集権国家に移行するときに流血の惨事になるという……
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