032-1 閑話【サリサの機織り】
ちょっとしたお話です。
ある日の、サロン・ド・サリサにて――
「なあ、サリサ、素材再現で布を再現するときって、どうやってるの?」
「ん? 店の奥にある、機織り機でやってるぞ。これが凄いんだ。私が思い描いた通りの布を織れるんだ」
「ああ、あの機織り機ね。小さい頃、久世のおいちゃんに見せてもらったことがあるよ」
「今日も今からやる。店を開いたからには、たくさん布を準備しておかないとな」
「へぇ~、ちょっと見てみたいな」
「駄目だ……見てはならない……見せられない」
「え? 見せられない??? なんで?」
「なんでもだ。駄目なものは駄目だ。貴様……織り込まれたいのか?」
「ええ?! おり、織り込まれる?! なにそれ?! どゆこと?!」
「とにかく絶対にみるなよ! 私は機織りしてくる! 絶対にみるなよ!!! チエ! 蓮を見張っておいてくれ!」
《かしこまりました。頑張ってください》
「頼んだぞ! 絶対に見るなよ!」
そういってサリサは店の奥に消えていった。
《というわけで、蓮さま、絶対に覗いては駄目ですよ》
「あ、ああ……」
覗くなと言われると覗きたくなるのが人の性なんだけど……織り込まれるのは嫌だな。意味わかんないし、覗くのはやめておこう。
そう思い帰ろうとすると、奥の部屋から機織りのリズミカルな音と、奇妙な歌声が聞こえてきた。
――ガッシャン、ガシャコン! ガッシャン、ガシャコン!…………
――♪アアア~~~ア!
ガッシャン、ガシャコン! ガッシャン、ガシャコン!
――♪アアア~~~ア!
ガッシャン、ガシャコン! ガッシャン、ガシャコン!
何だこの歌……どこかで聞いたような――
あ! これ……レッド●ェッペリンの『移●の歌』じゃないか?!
《いえ、そっくりですが、これはトトゾリアに伝わる歌です。トトゾリアの機織り職人は、この歌を歌いながら、あろうことか――おっと……これ以上は言えません》
「ええ?! なんだよ?! 歌いながらあろうことって、何すんだよ!」
《それは言えません。おお! サリサさま、今日も素晴らしいパフォーマンスです》
サリサ……中で何やってんだ???
――♪フゥ~ウ、フゥ~ウ、フゥ~ウ……
ガシャガシャガシャコン! ガシャガシャガシャコン!
――♪フゥ~ウ、フゥ~ウ、フゥ~ウ……
ガシャガシャガシャコン! ガシャガシャガシャコン!
結局、何をやっているのか分からずじまいで、しばらくの間、俺の眠れぬ夜が続いた。
めっちゃ気になるぞ……サリサ!
おしまい




