第一章 高校生活 Ⅴ
「さて、僕もそろそろ動こうかな」
小柄な男子生徒は、二年生のクラス教室がある校舎の二階にいた。
その視線は、二年七組の教室があった。
ユウキがいるクラスだ。
しかし、昼休みである現在ユウキは二年七組の教室にはいない。拓矢たちと食堂へ行っている。
それを知っていながら、小柄な男子生徒は二年七組へと向かっていく。
「ちょっといいかな」
「? はい」
教室の扉近くにいた女子生徒に小柄な男子生徒は話しかけた。
「上村悠生くんっているかな?」
「今は、いないみたいです。たぶん学食に行ったんだと思います」
「そっか。困ったな」
「どうかしたんですか?」
小柄な男子生徒が困った様子を見せると、女子生徒は親切に尋ねてきた。
「ちょっとね。これを悠生くんに渡してほしいんだ」
「これを渡せばいいんですか?」
「うん。お願いできるかな?」
「はい、いいですよ」
そう言って、笑顔を見せた女子生徒は小柄な男子生徒の手に触れる。
その瞬間。
ニヤリ、と笑う。
「どうかしました?」
怪訝に思った女子生徒が尋ねた。
「ううん、何でもないよ。じゃあ、お願いね」
「は、はい。わかりました」
小柄な男子生徒は二年七組の教室を後にしていく。
(先手は打ちましたよ、先生。後はユウキがどんな反応を見せてくれるか)
楽しみですね、と小柄な男子生徒は小さく笑った。




