第二章 友達になろう Ⅳ
その日の夜。
トモヤは、研究所の敷地内にある寮棟の割り当てられた部屋のベッドに横になっていた。
二人一部屋であり、隣のベッドには同じ部屋になった『覚醒者』の『ユウヤ』という少年が眠っていた。
しかし、ここに来たばかりのトモヤはなかなか寝付けないでいたのだ。
「……」
ベッドに横になりながらも、トモヤはぼうっと窓の外の空を見ている。
何を思うでもなく、トモヤはそうやって窓の外の景色を眠くなるまでずっと見ていた。その状態になってから、すでに一時間は経っているだろう。
消灯時間を過ぎているため、部屋の明かりを点けることもできない。明かりを点けられたとしても、眠っているユウヤに悪いと思い、トモヤが点けることはなかっただろう。
窓の外から入ってくる月や星、街灯などのほどよい明かりで照らされた視界は、トモヤにとって居心地の良いものだった。
それは、昼間研究所で感じたものとは大きく違う。
(……みんな、良い人そうだったな――)
眠れないトモヤは、不意にそう思った。
特に、かれんの言葉はトモヤにとってあまりに意外だった。
(敬語じゃなくていい、なんて初めて言われた気がする)
改めて思うと、そのほうが確かに仲良くなりやすい気がした。
けれど、
(仲良くなれる、かな――)
トモヤはやはり不安だった。
閉鎖された前の研究所でも、その後一時期保護された研究所でも、トモヤは同じ『覚醒者』と仲良くなれたとは思っていない。あまりにトモヤと歳が離れていた、ということもあるが、トモヤ自身が積極的に人に好かれようとしていない、という理由もあった。
それは、これまでのトモヤの言動にも表われている。
「……どうでもいいか、そんなのは――」
寝がえりを打って、トモヤは一つため息を吐いた。
人と仲良くなる必要はない。
今までもその必要はなかったのだから。
相変わらず窓の外の景色は穏やかで、その中にある光点の一つ一つに暖かさを感じる。その暖かさを背中に感じながら、トモヤはゆっくりと瞼を閉じた。
その間際、部屋の暗がりに光るトモヤの目は赤々と燃えていた。




