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第四章 復讐は誰のために Ⅵ

 

 悠生たちを乗せた電車は一時間弱の時間を費やして、ようやく旧大竹町の『眠る街(スリープタウン)』がある町の駅に着いていた。

 閑静な住宅街ということを聞いていた悠生だったが、着いた駅は聞いていたこととはあまりにかけ離れた状況になっていた。

 それほど大きくない駅は、数えきれないほどの人で溢れかえっていた。それらの人は、ただ駅を利用しようとしているようには見えない。何か事件が起こり、それから逃げようとしているように見える。

「な、なんだ、この騒ぎは――」

「……もしかしたら、間に合わなかったのか?」

 駅の騒ぎを見て、マサキは最悪の結果になってしまったことを考える。

 しかし、

「まだ、そうと決まったわけじゃない!」

 声を張り上げたのは、トモユキだ。

「アオイとカツユキさんは――?」

「分からないっ! ……人が多すぎる!!」

 慌てて、トモユキは携帯電話を開く。

 さらに、マサキの言葉に悠生とミホも周囲を探す。

 だが、あまりの人の多さに簡単には見つけられない。駅にいるのかどうかすら、判断がつかないほどだ。

「トモユキさん、電話は!?」

「まだ、繋がらない……っ」

 マサキとトモユキは、お互いに必死の形相をしている。

 緊迫した状況だということは、それだけで悠生もミホも理解する。

 タクヤのことを気がかりだが、カツユキの怪我も心配である。どちらを優先するべきか、悠生たちは躊躇してしまう。

 駅は依然として人が多くて、人だかりは一向になくならない。この中で、アオイとカツユキを探すのはあまりに難しかった。

「……くそっ」

「駅にいないんじゃ……」

 どれほど駅の構内を見渡しても二人の姿が見えないことから、悠生はそう思う。それは、マサキもミホも薄々と感じていた。

 そこへ、

「アオイ……っ!? 今、どこにいる!?」

「……っ!?」

 どうやら、電話が繋がったようだ。

 携帯電話を強く耳元へ押しあてているトモユキの周りに、悠生たちは集まる。

「……そうか。カツユキの状態は? 変わらないのか?」

 矢継ぎ早にトモユキは尋ねていく。

 そのトモユキの様子は、電車内で悠生たちを落ち着かせた時とは明らかに違っている。とても同一人物には見えない。

(あれは、自分にも向けて言った言葉だったのかな――)

 トモユキの慌てた様子を見て、悠生はそう思ってしまうほどだ。

「……分かった! すぐに向かう。そこで待っていろ」

「アオイはどこに?」

 通話を切ったトモユキに、待てないといった感じでマサキが聞いた。

 悠生とミホも緊張の面持ちで、トモユキの話を待つ。

「『眠る街(スリープタウン)』から駅へ向かっていたカツユキと合流したようだ。しかし、こっちまではまだだいぶ距離があるらしい」

「ど、どうしますか?」

「私とミホが二人の元へ向かおう。マサキと悠生くんは騒ぎの元へ行くんだ! もしかしたら『覚醒者』がすでに暴れているかもしれない。この騒ぎは明らかに異常だ」

「わかりました!」

 混乱を極めた駅構内は、そこへ押し留まっている人で溢れている。その駅構内を、四人は別々の方向へ走り出す。

 悠生とマサキは騒ぎの元凶へ、トモユキとミホはアオイとカツユキの元へ。急がなければ、どちらも間に合わないかもしれない。そう危機感を持って、四人は走り出す。

 大事な仲間を助けるために。




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