第二章 身を寄せて、背を向ける Ⅵ
旧大竹町の『眠る街』の隣にある小さな町。
その町の駅に、アオイはようやく辿りついていた。
「はぁはぁ……っ」
必死に走っていたため、アオイの息は上がっている。
後ろを振り返ると、『眠る街』のタワーが視認できる。あの下には、カツユキがまだ残っている。
(カツユキさん、無事かな――)
それは分からない。
『眠る街』とはかなり離れており、アオイの『覚醒者』としての力が及ぶ範囲ではなかった。
空を見上げればタワーは近くにあるように見えるのに、実際は遠いことにやるせなさを感じるほどだ。
ここでカツユキさんの無事を祈ってても仕方ない――っ、とアオイはポケットから携帯電話を取り出す。
もちろん、電話を掛ける相手は『ルーム』にいるトモユキだ。一刻も早く『覚醒者』たちが会話していたことを伝えなければ、とアオイはボタンを押す。
携帯電話を耳に当てていると、少しして通話が繋がる。
通話が繋がったことを確認すると、アオイは慌てて話し始める。
「あの、トモユキさん――」
『眠る街』の隣にある町は相変わらず静かで、駅にいても人の通りは多く見られない。その静かさに、他の町と隔離されたような錯覚を覚えるほどだ。
『眠る街』という非日常の世界を抜けても、日常の世界に戻ってきた感覚がしない。は張り詰めた緊張は肌を刺し、上がった息は喋ろうとする口を乾かしている。
それでも伝えなければならないことがある、とアオイは言葉を続けていく。




