二〇〇九年 一〇月一七日 1
駅前の大通りはいつだって人の往来が激しい。
行き交う人々は駅に向かったり、駅から市街地のほうへ歩いたりと様々である。県下一の人口を誇る市であるため、日中ともなれば見渡して見えるものは人の顔ばかりだ。
「今日の試合は勝てるのか?」
「どうなのかな。相手強いところらしいし」
駅で電車を降りて、上村悠生はそんな人通りの多い道を歩いていた。その後を岩井真希と飯山葵がついてきている。
今日は拓矢が所属しているバスケ部が大会に出るのだ。その応援に悠生たちも向かっている。
「拓矢も試合に出るといいんだけどな」
「出るんじゃないの? バスケすごく上手いじゃん」
「でも、まだ一年生だぞ? 一年生が出れるのか?」
「それは知らないけど……」
悠生たちは誰も部活に入っていない。そのため、一年生がすぐに試合に出られるのかどうか知らなかった。
「まぁまぁ。出れるように応援すればいいんじゃない?」
「まぁ、そうよね」
「で、どこで試合やるんだっけ?」
前を歩く悠生は、後ろの二人に尋ねた。
「上村くん。知らずに先を歩いてたの?」
「あ、あぁ、うん」
「呆れた。私たちを案内してくれてるのかと思った」
葵は嫌みったらしくため息を吐いた。
「悪かったな」
「大会があるのは『市立スポーツ文化ホール』よ」
『市立スポーツ文化ホール』。
部活の大会だけではなく、様々なイベントが行われている大きな施設である。
「あぁ。文化ホールね。懐かしいな」
「懐かしい?」
「あぁ。葵は高校からだけど、俺と真希は中学の時からちょくちょく行ったことがあるんだよ」
「へぇ~」
悠生たちは他愛もない会話をしながら、大会が行われる『市立スポーツ文化ホール』を目指す。
一〇月の日差しはこれから迎える冬の準備を始めているようで、次第に寒さを増していっていた。




