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死なないだけの僕がいつか世界を救う  作者: 木挽
40年生きて来た〜新しい町へ〜
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第8話『剣は誰かのために振るうもの』



「天野さん、護衛依頼、行けますか?」


ギルドの受付で声をかけられたのは、朝のことだった。

依頼内容は、商隊の護衛。リューデンから隣町までの道中、盗賊が出る可能性があるという。


「はい、行きます」


俺は即答した。

剣術の修行を始めてから、実戦経験はまだ少ない。

でも、誰かを守るために剣を学んでいるなら――こういう場面でこそ、振るうべきだ。


---


商隊は、荷馬車3台と護衛4人。

俺以外の護衛は、ギルドの常連らしい。

その中に、若い剣士のレイナがいた。

鋭い目つきと、無駄のない動き。

俺より年下だが、場慣れしている印象だった。


「あなた、初参加でしょ? 無理しないでね」


「……はい。気をつけます」


俺は、剣の柄を握りながら歩き出した。


---


道中は静かだった。

山道を抜け、森の縁を通る。

空は曇っていて、風が冷たい。

そして――その時は突然やってきた。


「前方、動きあり!」


レイナの声が響く。

茂みから、盗賊が飛び出してきた。

5人。全員、武器を持っている。


「囲まれるぞ、下がれ!」


隊長の指示に従い、商人たちは荷馬車の後ろへ。

俺たち護衛は、前に出る。


---


剣を抜いた。

盗賊の一人が突っ込んでくる。

俺は受けて、弾いた。

剣術の稽古で覚えた型が、自然と体を動かす。


「天野、右!」


レイナの声に反応し、横からの一撃を防ぐ。

連携が生まれる。

俺は、誰かと一緒に戦っている。

それだけで、心が少しだけ軽くなった。


---


戦いは短かった。

盗賊たちは撤退し、商隊は無事だった。

俺たちは傷を負いながらも、誰一人倒れることなく任務を終えた。


「……よくやったね。初めてにしては上出来」


レイナが、少しだけ笑った。

俺は、うなずいた。


「ありがとうございます。……守れてよかったです」


---


その夜、宿で剣を手入れしながら思った。


>「俺の剣は、誰かのために振るうもの。

> 一人で振るうより、誰かと並んで振るう方が、ずっと強い」


孤独だった俺が、誰かと肩を並べて戦った。

それだけで、剣の意味が少し変わった気がした。

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