第63話『玉座への咆哮』
“咆哮の谷”――
魔獣王グロウル=ザ=ワイルドが玉座を築く、獣の領域の中心。
その周囲には、魔獣王直属の配下2万体が蠢いていた。
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朔は谷の前に立つ。
その背後には、使役した牙の七将すべてが並ぶ。
- 火竜ヴァルグレア
- 死者王スケルトンキング
- 咆哮獣ハウル=レンド
- 迅牙獣スナップ=ファング
- 毒泥獣グラウル=スローム
- 双牙の姉妹ミラ&リラ
- 荒野の暴君ロア=クラッシュ
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「全員、展開。配下2万体――蹂躙し、使役しろ」
朔の命令が響く。
軍勢が動き出す。
炎が走り、雷が裂け、毒が沼を覆い、死者が剣を振るう。
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魔獣軍は抵抗する。
咆哮、突撃、連携、罠――
だが、朔の軍勢はそれを超えていた。
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戦闘は一時間に及び、谷は血と魔力で染まる。
最終的に、魔獣軍2万体はすべて沈黙し、契約陣により使役化された。
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異空間ストレージが拡張され、朔の兵力は膨れ上がる。
その様子を、玉座の上から見下ろしていた魔獣王グロウルが、ついに立ち上がる。
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「……貴様、何者だ」
その声には、威厳よりも狼狽が混じっていた。
玉座の主が、初めて恐れを見せた瞬間だった。
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朔は雷刃を構え、脚飾りを起動。
空間が歪み、魔力が脈動する。
「王を狩る者だ。
お前も、俺の兵器になる」
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魔獣王が咆哮を上げる。
空間が震え、魔力が爆発する。
その一撃は、牙の七将を吹き飛ばすほどの威力だった。
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だが朔は加速し、雷刃で空間を裂く。
グロウルの背後に回り込み、肩を刻む。
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「遅い。重い。吠えるだけの王に、価値はない」
グロウルが反転し、爪で薙ぐ。
朔は脚飾りで跳び、空中から雷刃を振るう。
胸に浅い傷が刻まれる。
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牙の七将が再展開。
ヴァルグレアが炎を浴びせ、スケルトンキングが剣を突き刺す。
双牙の姉妹が霧を纏い、ハウル=レンドが咆哮で空間を裂く。
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グロウルは吠え、暴れ、砕き、焼き返す。
だが、朔の軍勢は止まらない。
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「契約陣、展開。
魔獣王――お前も、俺の兵器になる」
雷刃が一閃。
グロウルの胸に刻印が浮かび上がる。
瞳が沈黙し、玉座が崩れ落ちる。
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「使役、完了。異空間ストレージへ格納」
魔獣王の巨体が光に包まれ、異空間へと吸い込まれていく。
咆哮の谷は静寂に包まれた。
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リリィが転移してきて、静かに言った。
「……王を超えたね。完全に」
朔は玉座の跡に立ち、雷刃を収める。
「次は――魔王城だ。
世界の支配者を、俺が使役する」




