第62話『荒野の暴君』
“獣の領域”西部――荒野。
風は乾き、地は裂け、空間は常に軋んでいた。
そこに、牙の七将最後の一体が待ち構えていた。
---
ロア=クラッシュ。
牙の七将中、最も破壊に特化した魔獣。
全身を覆う岩甲、腕に装着された双斧。
その一撃は地形を変えるほどの威力を持つ。
---
「最後の牙だ。潰して、使役する」
朔は異空間ストレージを開き、軍勢を展開する。
火竜ヴァルグレアが咆哮を上げ、スケルトンキングが剣を構える。
ハウル=レンドが咆哮を放ち、双牙の姉妹が霧のように現れる。
そして、朔自身は迅脚の脚飾りを装備し、雷刃を構える。
---
「全員で行く。暴君を沈めろ」
---
ロア=クラッシュが咆哮を上げ、双斧を振るう。
地面が裂け、衝撃波が走る。
だが、朔の軍勢はそれを超えていた。
---
ヴァルグレアが空から炎を浴びせ、スケルトンキングが正面から斬りかかる。
ハウル=レンドと双牙の姉妹が側面を制圧し、朔が背後から雷刃を突き刺す。
---
「暴れるだけの獣に、王の資格はない」
雷刃が一閃。
ロア=クラッシュの岩甲が砕け、膝をつく。
---
「使役の刻印、展開」
朔が契約陣を描き、魔力を流し込む。
ロア=クラッシュの瞳が沈黙し、胸に刻印が浮かび上がる。
契約、成立。
---
「使役、完了。異空間ストレージへ格納」
ロア=クラッシュの巨体が光に包まれ、異空間へと吸い込まれていく。
---
リリィが転移してきて、静かに言った。
「これで、牙の七将は全て揃った。
次は――魔獣王グロウル=ザ=ワイルド」
朔は空を見上げる。
「王を狩る準備は、整った。
次は、玉座を奪う」




