第61話『双牙の姉妹』
“獣の領域”南部――密林地帯。
霧が濃く、木々は獣の血で染まり、空間は常に軋んでいた。
そこに、牙の七将の一組が潜んでいる。
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双牙の姉妹――“ミラ=ファング”と“リラ=ファング”。
二体で一つの存在。
片方が攻撃すれば、もう片方が防御する。
連携と共鳴によって、単体の魔獣を凌駕する戦闘力を持つ。
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朔は一人で密林に踏み込んだ。
迅脚の脚飾りを装備し、雷刃を構える。
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「二体同時か。面白いじゃないか」
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霧の中から、姉妹が現れる。
ミラが咆哮を上げ、リラが爪を構える。
瞬間、朔の姿が消えた。
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脚飾りによる加速。
空間が歪み、朔は姉妹の背後に回り込む。
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雷刃が一閃。
ミラの肩に浅い傷。
次の瞬間にはリラの脚に切り込み。
朔は止まらない。
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「連携?そんなもの、速度の前では意味がない」
姉妹が咆哮を重ね、空間を震わせる。
だが朔は霧を裂き、雷のように刻み続ける。
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少しずつ、確実に。
爪を、脚を、背を、牙を――
朔は楽しむように、じわじわと削っていく。
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「そろそろ限界か?」
姉妹が膝をつき、魔力が乱れる。
朔は契約陣を展開し、魔力を流し込む。
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「使役の刻印、展開」
空間が震え、姉妹の身体が硬直。
瞳の赤が消え、胸に刻印が浮かび上がる。
契約、成立。
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「使役、完了。異空間ストレージへ格納」
双牙の姉妹の身体が光に包まれ、異空間へと吸い込まれていく。
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朔は霧の中で雷刃を収め、静かに呟いた。
「残りは、ロア=クラッシュと魔獣王グロウル。
終わりが近いな」




