第59話『牙砕き』
断崖の頂にて、牙の七将スナップ=ファングが咆哮を上げた。
その牙は岩を砕き、脚力は雷のように速い。
だが――朔の軍勢は、すでに三体の王を従えていた。
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「囲め。潰せ。使役する」
朔の命令が響く。
火竜ヴァルグレアが空から炎を浴びせ、断崖を焼く。
スケルトンキングが正面から突撃し、黒剣を振るう。
ハウル=レンドが側面から咆哮を放ち、空間を裂く。
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スナップ=ファングは俊敏に動き、三体の攻撃をかわす。
だが、朔はその動きを読み切っていた。
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「リリィ、空間固定!」
「了解!」
星術が展開され、断崖の空間が封じられる。
スナップ=ファングの脚が鈍り、動きが止まる。
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「今だ――全員で叩き潰せ!」
ヴァルグレアの炎が背を焼き、スケルトンキングの剣が胸を裂く。
ハウル=レンドの咆哮が耳を砕き、朔の雷刃が牙を砕いた。
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スナップ=ファング、沈黙。
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「使役の刻印、展開」
朔が契約陣を描き、魔力を流し込む。
スナップ=ファングの身体が硬直し、瞳の赤が消える。
胸に刻印が浮かび上がり、契約が成立する。
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「使役、完了。異空間ストレージへ格納」
朔が手をかざすと、スナップ=ファングの身体が光に包まれ、異空間へと吸い込まれていく。
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その場に、ひとつのアイテムが残された。
朔が拾い上げる。
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「これは……迅脚の脚飾り?」
リリィが魔力を解析する。
「装備者の脚力を強化する魔具。
瞬発力と加速性能が大幅に上がる。
朔にぴったりだね」
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朔は脚飾りを装備し、軽く地を蹴る。
瞬間、空間が歪むほどの加速が発生した。
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「悪くない。
次は――沼地のグラウル=スロームだ」




