第57話『牙の領域』
転移陣が発動し、朔とリリィの姿は“獣の領域”へと跳んだ。
空は曇り、地面は獣の足跡で荒れ果てている。
瘴気が漂い、空間は常に揺らいでいた。
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「ここが……魔獣王の支配地か」
リリィが空気を読み取りながら呟く。
朔は魔力を展開し、周囲の反応を探る。
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「敵性反応、複数。だが、中心に向かうほど密度が高い。
牙の七将が近いな」
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突如、茂みが揺れ、巨大な影が姿を現す。
それは狼のような魔獣――だが、背には骨の鎧、目は赤く輝いていた。
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「牙の七将、“ハウル=レンド”か」
スケルトンキングの記憶にあった名。
魔獣王直属の幹部の一体。
その咆哮は空間を裂き、魔力を狂わせる。
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「試してみるか――スケルトンキング、出ろ」
異空間ストレージが開き、死者の王が姿を現す。
黒剣を構え、朔の前に立つ。
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「命令を」
「ハウル=レンドを抑えろ。殺すな。情報を引き出す」
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戦闘開始。
スケルトンキングが突撃し、黒剣が魔獣の爪と激突。
衝撃が地を揺らし、瘴気が吹き飛ぶ。
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リリィが星術で空間を固定し、魔力の暴走を防ぐ。
朔は刻印を展開し、使役の準備を始める。
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「魔獣王の居場所を吐け。
お前を使役するかは、それ次第だ」
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ハウル=レンドは咆哮を上げながらも、動きを止めた。
その瞳に、わずかな理性が宿る。
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「……咆哮の谷。魔獣王はそこにいる。
だが、牙の七将が全員揃わぬ限り、玉座には近づけぬ」
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朔は頷いた。
「なら、七将すべてを潰す。
魔獣王を使役するためにな」
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>「王を狩る者は、王を超える。
> その座にふさわしいのは、俺だ」




