第56話『獣の王』
異空間ストレージ――
そこは時間も空間も歪んだ、主の魔力によって構築された閉鎖領域。
火竜ヴァルグレアは溶岩の湖で眠り、死者の王は静かに膝をついていた。
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「……主よ」
スケルトンキングが朔の前に跪く。
その声は低く、空間に響くように重い。
「我が魂は、汝に従う。命ずるがいい」
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朔は無言で頷いた。
その眼差しは冷たく、次なる標的を見据えていた。
「スケルトンキング。次に狙うのは“魔獣王”だ。
知っていることをすべて話せ」
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スケルトンキングはゆっくりと顔を上げる。
その眼窩に、かすかな光が灯った。
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「魔獣王――“グロウル=ザ=ワイルド”。
かつては神獣に連なる血を引く存在。
だが今は、魔王の呪縛に堕ち、理を喰らう獣と化している」
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「居場所は?」
「“獣の領域”――かつての聖獣の楽園。
今は瘴気に満ち、理性を失った魔獣たちの巣窟と化している。
グロウルはその中心、“咆哮の谷”にて玉座を築いている」
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「戦力は?」
「魔獣軍は数にして五千。
そのすべてが高位個体。
中でも“牙の七将”と呼ばれる幹部は、我が軍勢すら圧倒する力を持つ」
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朔は腕を組み、思考を巡らせる。
「火竜と死者王を同時展開すれば、正面突破は可能だ。
だが、奴の使役は容易じゃないな」
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リリィが異空間に転移してくる。
彼女はスケルトンキングの姿を見て、少しだけ目を見開いた。
「……本当に、従ってるんだね」
「当然だ。俺の使役は絶対だ」
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朔は静かに言った。
「次は魔獣王。
あいつを倒して、使役する。
そして――魔王の首を取りに行く」
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>「王を狩る者は、王を超える。
> その座にふさわしいのは、俺だ」




