第54話『契約と封印』
火竜ヴァルグレアが崩れ落ちると、空間が静まり返った。
その爪の間から転がり出た首飾りは、赤く脈動しながら朔の手に吸い込まれるように収まった。
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「……これが、使役スキルの鍵か」
首飾りを装備した瞬間、朔の魔力が脈動し、意識の奥に“契約の領域”が広がる。
火竜の魂がそこに繋がり、従属の刻印が浮かび上がった。
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「スキル:使役、解放完了」
リリィが魔力の流れを確認し、頷く。
朔はヴァルグレアに命じる。
「異空間ストレージへ格納――眠れ、俺の兵器として」
火竜の身体が光に包まれ、空間の裂け目へと吸い込まれていく。
その瞬間、周囲の魔力が安定し、火山跡は静寂に包まれた。
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「これで、魔王戦の布石が整ったね」
リリィが言う。
朔は空を見上げる。
「いや――まだだ。
次は、死者の王。スケルトンキングを潰す。
全部倒して、使役してやる」
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朔は小屋の転移陣を起動し、座標を“奈落の回廊”へと設定する。
リリィが星術の補助陣を展開し、空間の安定化を図る。
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光が収束し、二人の姿はダンジョンの前へと跳んだ。
冷たい空気。石造りの門。
そして、門の前に立ち塞がる2体のスケルトンガード――死者の門番。
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「迎えは来てるみたいだな」
朔が雷刃を構える。
リリィは詠唱すらせず、指先を振る。
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瞬間、雷が走る。
朔の一閃が空間を裂き、スケルトンガードの頭部を粉砕。
同時に、星の粒子が降り注ぎ、もう一体の胸部を貫いた。
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門番、瞬殺。
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「この程度じゃ、前座にもならない」
朔は門を押し開ける。
その先に広がるのは、巨大な地下ホール。
そこに――スケルトンキングと、その部隊1000体が待ち構えていた。
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「ヴァルグレア――皆殺しにしてこい」
火竜が異空間から召喚され、咆哮とともに突入。
炎が走り、死者の軍勢が焼かれていく。




