第53話『火竜との邂逅』
火山の奥へ進むにつれ、空気は重く、熱は鋭くなっていった。
岩肌は赤く脈動し、地熱が魔力のように渦巻いている。
ゴーレムたちは先行し、道を切り開いていたが――その先に、異質な気配があった。
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「……来るぞ」
朔が雷刃を構える。
リリィは星術陣を展開し、空間の軌道を読み取る。
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地鳴りが響いた。
火口の中心、溶岩の海から巨大な影が姿を現す。
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それは、伝説の火竜――“ヴァルグレア”。
全身が灼熱の鱗で覆われ、目は溶岩のように赤く燃えていた。
翼を広げるだけで空間が軋み、咆哮は雷鳴のように響く。
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「星術、展開完了」
リリィが告げる。
朔は雷刃に魔力を込め、刻印を浮かび上がらせる。
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「行くぞ――リリィ!」
「了解!」
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戦闘開始。
リリィの星術が空を裂き、光の槍がヴァルグレアの翼を貫く。
朔の雷刃が地を走り、火竜の脚を焼く。
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だが、ヴァルグレアは咆哮とともに反撃。
炎の奔流が空間を焼き、ゴーレム3体が一瞬で蒸発する。
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「魔力密度が高すぎる……!」
リリィが結界を張り直す。
朔は一瞬の隙を突き、雷刃を火竜の胸部へ突き刺す。
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「今だ――使役の刻印!」
魔力が爆発し、空間に刻印が展開される。
火竜の動きが止まり、意識が封じられていく。
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ヴァルグレアが崩れ落ちる。
その爪の間から、赤く輝く首飾りが転がり出た。
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「……これが、使役スキルの鍵か」
朔が首飾りを拾い、装備する。
瞬間、魔力が脈動し、“スキル:使役”が解放された。
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「契約完了。ヴァルグレア、異空間へ格納」
火竜の身体が光に包まれ、異空間ストレージへと吸い込まれていく。
リリィが息を吐く。
「これで、魔王戦の布石が整ったね」
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朔は空を見上げる。
「次は――死者の王だ。
スケルトンキングを、焼き尽くす」




