第5話『それでも僕は生きていく』
ギルドでの仕事にも、すっかり慣れた。
薬草採取、荷物運び、迷子探し。地味だけど、誰かの役に立てるのは悪くない。
俺は“死なない”。
だからこそ、無茶はしない。無理はしない。
……そう思ってた。
でも、世界は時々、そんな俺の覚悟を試してくる。
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「街の外れに魔物が出た。近くに子どもたちがいる。急いで!」
ギルドの受付嬢・ミーナさんが、血相を変えて叫んだ。
俺は反射的に走り出していた。
剣も魔法も、まだ未熟。でも、死なない体がある。
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魔物は、獣のような姿をしていた。
牙が鋭くて、動きが速い。
子どもたちは、木の陰で震えていた。
俺は、迷わず飛び込んだ。
魔物の爪が腹を裂く。血が噴き出す。
痛い。叫びたい。でも――今はそれどころじゃない。
「逃げろ! 今のうちに!」
子どもたちは走った。俺は、魔物の注意を引き続けた。
剣を振るい、魔法を放ち、何度も地面に叩きつけられた。
でも、死なない。でも、俺は立ち上がる。
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気づけば、魔物は倒れていた。
俺は、血まみれで地面に膝をついていた。
子どもたちは無事だった。
ミーナさんが駆け寄ってきて、泣きながら俺を抱きしめた。
「ありがとう……本当に、ありがとう……!」
俺は、少しだけ笑った。
痛みで顔が歪んでいたけど、それでも笑えた。
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その夜、宿屋のベッドで横になりながら、ふと思った。
俺は、死なない。
20歳のまま、見た目も変わらない。
でも、心は――確かに、少しずつ変わっている。
>「痛みを知ってるからこそ、命の重さがわかる。
> 死なないからこそ、誰かの時間を守れる」
それでいい。
それが、俺の“生きる意味”なんだと思う。
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翌朝、ギルドの掲示板に新しい依頼が貼られていた。
俺は、それを見て、剣を背負った。
痛みはある。でも、俺は――生きている。
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