第43話『灰都の魔導士』
灰都――かつて王都と呼ばれた場所。
今は廃墟と化し、魔族の侵攻によって名を変えた。
それでも、そこに“待っている者”がいる。
祭壇の手紙にそう書かれていた。
>「私はかつて、あなたの仲間だった。
> レイナの息子――ゼイン・レイナード。
> 今は、かつて王都だった場所で待っている」
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俺はカイ・アマノとミレイと共に灰都へ向かった。
カイは剣士としての素質を持ち、ユウの血を濃く継いでいる。
無口だが、戦いの勘は鋭い。
道中、魔族の残党が現れたが、雷鳴の双刃とカイの剣が交差し、瞬く間に斬り伏せた。
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灰都に着いた時、空は鈍色に染まっていた。
瓦礫の中に、魔力の流れが微かに残っている。
その中心に、一人の男が立っていた。
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「……来たか」
男は振り返った。
白銀の髪、深紅の瞳。
年齢は不明――だが、気配は古く、強い。
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「ゼイン・レイナードか?」
俺が問うと、男は頷いた。
「母の名を知っているなら、間違いない。
俺は、レイナの息子。
マギデウスとなったことで、時の流れから外れた者だ」
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ゼインは、かつての仲間の血を継ぎ、灰都に残っていた。
理由はただ一つ――天野朔が戻る日を待つため。
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「アグド・ネメスを倒しに行く。
力を貸してほしい」
俺の言葉に、ゼインは静かに剣を見つめた。
そして、短く答えた。
「母が命を懸けて守ったものを、俺も守る。
そのために生きてきた」
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この日、仲間が揃った。
剣士、魔導士――そして、俺。
世界を動かす力が、再び集結した。
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>「灰の都に残る者は、過去を守る者。
> だが、未来を変える者でもある」




