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第41話『血の村』



「ミナ・アマノ、ユウ・アマノを……知らないか?」


俺の問いに、少女は一瞬言葉を失った。

そして、静かに答えた。


「……お知り合いですか?」


その言葉に、胸が締めつけられる。

俺は、ゆっくりと頷いた。


「ミナとユウは……私の子供だ」


少女の瞳が揺れた。

そして、震える声で言った。


「では……あなたが……伝承の“サク・アマノ”……?」


風が止まったように感じた。

俺は、何も言えなかった。

ただ、心の奥で何かが確かに繋がった。


---


少女――ルーシー・アマノに導かれ、俺は谷を越えた。

霧に包まれた静かな場所。

そこが“アマノの谷”だった。


---


村には、剣士と魔道士が共に暮らしていた。

その瞳、その魔力の気配――どこか懐かしい。

俺の“血”が、確かに息づいていた。


---


長老に会うと、彼は静かに語った。


「この村は、あなたの子――ミナとユウが築いた。

 二人は、父がいつか還ると信じていた。

 その時に力になれるよう、魔術と武術を磨け――それが村の教えです」


---


俺は言葉を失った。

ミナとユウが、俺の帰還を信じていた。

150年の時を越えて。


---


長老はさらに言った。


「武器庫を見せましょう。

 天音の血を継ぐ者には、選ぶ資格があります」


---


武器庫には、数えきれないほどの武器が並んでいた。

剣、槍、杖、双刃――どれも手入れが行き届いている。

代々、良質な武器だけを集めてきたという。


「とにかく良質の武器を集めよ。

 それが、天音の教えです」


---


俺は一振りの剣を手に取った。

柄に刻まれた紋章――それは、俺がかつて使っていたものと同じだった。

剣が震え、魔力が共鳴する。


---


村の祭壇には、二人の石像が並んでいた。

少女と少年。

ミナとユウ。

剣と杖を持ち、空を見上げている。


---


俺は膝をついた。

声が震えた。


「ミナ……ユウ……ありがとう。

 必ず母さんを助ける。

 リリィを、取り戻す」


---


この日、俺は知った。

血は、記憶を超えて繋がる。

そして、絆は時を越えて生き続ける。


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