第4話『ギルドで働く20歳、見た目はずっとそのまま』
街の暮らしにも、だいぶ慣れてきた。
最初は人混みに圧倒されてたけど、今じゃ市場の喧騒も心地よく感じる。
俺は今、冒険者ギルドで“軽めの依頼”をこなしている。
魔物退治? いやいや、そんな危険なやつじゃない。
荷物運び、迷子探し、薬草採取――いわゆる雑用系。
でも、俺にはちょうどいい。
死なない体は便利だけど、痛みはあるし、無茶はしたくない。
それに、こういう地味な仕事でも、誰かの役に立てるなら悪くない。
---
「天野くん、今日もお願いね。薬草、南の丘で採ってきてくれる?」
ギルドの受付嬢・ミーナさんは、いつも優しく声をかけてくれる。
俺は頷いて、腰のポーチを確認する。ナイフ、水筒、包帯。よし、準備完了。
南の丘は、街から歩いて30分ほど。
魔物はほとんど出ないけど、たまに毒虫がいるから油断はできない。
---
薬草を摘みながら、ふと空を見上げた。
10年前、俺は森の中で死ねない体に気づいて、泣いていた。
今は、こうして街で働いてる。人と話して、笑って、感謝されて――
生きてるって、こういうことなんだなって思う。
でも、最近ちょっと気になることがある。
---
ギルドの仲間たちが、少しずつ変わってきた。
髪に白いものが混じり始めた人。
「腰が痛くてさ〜」なんて言い出す人。
俺と同じくらいの年齢だったはずなのに、見た目がどんどん“年相応”になっていく。
俺は――変わらない。
20歳になってから、ずっと同じ顔、同じ体。
鏡を見るたびに、時間が止まってることを思い知らされる。
---
「天野くんって、ほんと若いよね。何食べてるの? 魔法の果実とか?」
ミーナさんが冗談っぽく笑う。
俺は苦笑いで返すけど、内心はちょっと複雑だ。
>「俺だけ、止まってるんだよな……」
街は動いてる。人は老いていく。
でも、俺は――20歳のまま、45歳になっても変わらない。
---
それでも、俺はこの街で生きていく。
軽い依頼でも、誰かの役に立てるなら、それでいい。
止まった時間の中でも、俺は“動く世界”の一部でいたい。




