第31話『連鎖する災厄』
バルムを斬ったあの日から、世界は静かになるはずだった。
だが――それは、始まりに過ぎなかった。
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「西の峡谷で、村が消えました」
「南方の交易路が、黒炎に包まれたと……」
「王都の外縁部でも、空間が裂けた痕跡が……」
ギルドの報告は、日に日に増えていった。
“絶対悪”――バルムに酷似した災厄が、各地で同時に発生していた。
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俺は、仮面を外したまま、報告書を睨んでいた。
リリィは魔導院の解析室で、魔力痕跡を調べていた。
「……全部、同じ魔力構造。
でも、バルムのものじゃない。もっと深く、もっと歪んでる」
「つまり、誰かが“作っている”ってことか」
リリィは頷いた。
その瞳は、静かに怒りを宿していた。
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数日後、王都からの召喚状が届いた。
内容は簡潔だった。
>「天野朔殿。
> あなたを“勇者”として認定する。
> 四魔王の一人、アグド・ネメスの討伐を命じる」
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勇者――その言葉に、俺は少しだけ笑った。
名誉でも、称号でもない。
ただ、剣を振るう理由が明確になっただけだ。
リリィは、迷わず言った。
「私も行く。あなたの剣になる。
あなたが倒れないように、支える」
「……ああ。お前がいれば、俺は折れない」
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>「災厄が連鎖するなら、俺たちが断ち切る。
> この剣と、この魔法で――世界を守る」
こうして、俺たちは再び旅立つ。
今度の敵は、災厄の源。
四魔王――その一人、アグド・ネメス。




