第29話『首をはねられても』
視界が、赤に染まった。
音が消え、世界が止まった。
俺の首は、地面に転がっていた。
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バルムの一撃は、空間を裂き、肉体を断ち切った。
村人たちは悲鳴を上げ、双子の叫びが遠くで響く。
俺の身体は、膝をつき、崩れ落ちた。
「パパ――っ!」
ユウの声が、耳に届いた気がした。
ミナの魔力が暴走しかけているのも、感じた。
でも――俺は、まだ終わっていない。
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肉が、動き始める。
神経が繋がり、骨が再構築される。
首が、再び胴に戻る。
俺は、立ち上がった。
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仮面は割れ、素顔が露になる。
血に濡れた頬に、風が吹く。
バルムは、言葉を持たぬまま、こちらを見ていた。
「……俺は、死なないんじゃない。
守るために、立ち続けるだけだ」
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剣を握り直す。
バルムの核――空間の裂け目の奥にある“存在の中心”を見抜く。
そこに届けば、奴は消える。
「空間断裂斬――」
剣が、空間を断ち切る。
黒炎が裂け、バルムが悲鳴を上げる。
その声は、言葉ではなく――否定の叫びだった。
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一閃。
世界が、静かになる。
バルムは、消えた。
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俺は、剣を収めて、膝をついた。
双子が駆け寄り、泣きながら抱きついてくる。
「パパ……死んじゃったかと思った……!」
「でも、生きてた……!」
「……守るって、そういうことだ。
何度倒れても、立ち上がる。それが、父親だ」
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>「命は、終わるものじゃない。
> 誰かのために使い切るものだ」
リリィがいない間、俺は――この村の盾だった。
そして今日、俺はそれを証明した。




