第23話『王都からの召喚』
ギルドの朝は、いつもと少し違っていた。
受付嬢の表情は硬く、空気に張り詰めたものが漂っている。
俺とリリィが任務報告に訪れると、すぐに呼び止められた。
「天野朔さん、リリィ・エルフェンさん。王都より、正式な召喚状が届いています」
---
召喚状は、王都魔導院の紋章が刻まれた厚紙だった。
内容は簡潔で、しかし重みがあった。
>「王都北部にて、古代種ドラゴンが出現。
> 討伐任務への協力を要請する。
> 対象:SSランク冒険者 天野朔・リリィ・エルフェン」
リリィは文面を読み終え、静かに息を吐いた。
「……来たね。伝説級の依頼」
「……断る理由はないな」
---
王都への道は、久しぶりだった。
双子――ユウとミナも同行を希望し、魔法研究施設の見学を兼ねて連れていくことにした。
彼らはまだ10歳。
でも、両親の背中を見て育っている。
「パパ、ドラゴンってどれくらい強いの?」
「……そうだな。町ひとつ、消せるくらいには」
「うわ……でも、ママなら勝てるよね!」
「もちろん。ママは最強だから」
リリィは笑いながら、子供たちの頭を撫でた。
その笑顔の奥に、静かな覚悟が宿っていた。
---
王都に到着すると、空気が一変した。
街の人々が俺たちを見て囁く。
「仮面の剣士だ……」
「光の魔道士リリィ……本物だ……」
俺は仮面の奥で、無言を貫いた。
リリィは微笑みながら、堂々と歩いていた。
---
王都魔導院では、リリィに講義の依頼が届いていた。
テーマは“魔力構造解析と詠唱連結理論”。
彼女は一度だけ俺に視線を向けて、言った。
「……伝えることも、戦うことと同じくらい大事だと思うの」
「……ああ。お前が伝えれば、誰かの未来が変わる」
---
>「王都に呼ばれるということは、世界に名を刻むということ。
> でも俺たちは――家族として、ここにいる」
召喚状は、伝説の扉だった。
その先にあるものは、まだ見えない。
でも、俺たちは歩き出した。
---




