第21話『仮面の決意』
リリィは37歳になった。
年齢よりずっと若く見える。
でも、彼女の瞳には年月の深みが宿っている。
俺は――相変わらず、20代前半のまま。
変わらない。老いない。止まった時間の中にいる。
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ユウとミナは10歳になった。
魔法学校に通い始め、毎日元気に走り回っている。
俺たちの家族は、穏やかで、幸せだった。
……ただ、少しずつ“違和感”が広がっていた。
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「ねえ朔くん……最近、町の人たちがあなたのこと、少し気にしてるみたい」
リリィがそう言ったのは、夕暮れの食卓だった。
双子の友達の親たちが、俺を見て「若すぎる」と囁いているらしい。
「……俺が目立つことで、子供たちに影響が出るなら」
「責めてるわけじゃないの。ただ……あなたが“普通”に見えないのは、事実だから」
リリィの言葉は、優しくて、現実的だった。
俺は、少しだけ考えて、答えた。
「……仮面をつけようと思う」
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その日から、俺は“仮面の剣士”になった。
黒銀の装飾が施された魔力遮断素材の仮面。
表情を隠し、距離を保つためのもの。
それは、俺が“人”ではなく“剣”になるための選択だった。
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ギルドでは、ざわめきが起きた。
「仮面の剣士……あれ、天野朔か?」
「凄みが増してるな…よく似合っている」
そして、正式な通知が届いた。
>「天野朔、リリィ・エルフェン。両名、SSランクに昇格」
受付嬢の声が震えていた。
ギルド内が静まり返り、次の瞬間、どよめきが広がった。
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「……SSランク、夫婦で?」
「伝説級だろ……」
俺は、仮面の奥で静かに息を吐いた。
リリィは隣で微笑んでいた。
「これで、少しは“距離”ができるかもね」
「……それでも、俺は家族のそばにいる」
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>「仮面の下にあるのは、覚悟。
> 変わらない俺が、変わる世界に立つための――選択」
その日、俺は“人”をやめた。
そして、“剣”として生きることを選んだ。




