第20話『再会と問い』
「……お前、なんで歳をとらないんだ」
レイナの声は、静かだった。
でも、その奥には、驚きと戸惑いと――少しの怒りが混ざっていた。
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彼女は47歳になっていた。
かつての鋭い眼差しはそのままに、髪は短く、表情には深い年輪が刻まれていた。
俺は、変わらないまま、彼女の前に立っていた。
「……俺は、止まってるんだ。ずっと」
その言葉に、レイナは目を伏せた。
そして、ぽつりと呟いた。
「……そんなの、ズルいよ」
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リリィは、少し離れた場所でそのやり取りを見守っていた。
彼女にとって、レイナは初対面の相手。
でも、朔の過去に深く関わる人だとすぐに察した。
レイナがリリィに目を向ける。
「……あなたが、朔の“今”なのね」
リリィは一瞬だけ驚いたが、すぐに頷いた。
「はい。私はリリィ。朔と一緒に生きています。……家族です」
レイナは、少しだけ目を細めた。
「そう……なら、よかった。あいつが、ちゃんと“今”にいるなら」
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任務は成功だった。
負傷者はいたが、全員救出できた。
王都の依頼は果たされ、俺たちはルミナスへ帰る準備を始めた。
帰り道、リリィが俺の隣で言った。
「……レイナさん、強い人だったね。初めて会ったのに、なんだか懐かしい気がした」
「……ああ。時間は人を変える。でも、芯は残る」
「朔くんは、変わらないけど……芯も、ずっと変わってないよ」
彼女はそう言って笑った。
その笑顔は、俺の“今”を肯定してくれるものだった。
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>「止まった時間の中でも、誰かと生きることはできる。
> それが、俺の“答え”なのかもしれない」
過去と再会し、今を見つめ、未来へ歩き出す。
物語は、ここでひとつの区切りを迎える。




