第17話『新しい町、家族の旅』
ユウとミナが五歳になった。
あっという間だった。
小さな手は少しずつ大きくなり、言葉も、表情も、毎日変化していく。
俺は変わらないまま、彼らの成長を見守っていた。
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「そろそろ、引っ越そうか」
リリィがそう言ったのは、春の風が街を包んだ日だった。
セレノアでの暮らしは穏やかだったけど、双子の未来を考えると、もっと自然の多い場所がいい。
そして歳をとらない俺は不審がられ始めていた。
魔法と技術が融合した町――ルミナス。
そこが、次の目的地になった。
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ルミナスは、森と湖に囲まれた静かな町だった。
魔法学校があり、子育てにも向いていると評判だった。
俺たちは、町の外れに小さな家を借りて、暮らしを始めた。
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ギルドにも挨拶に行った。
受付で転入手続きを済ませ、ギルドカードを提示する。
魔導端末にカードを通した瞬間――受付嬢の手が止まった。
「……えっ、Sランク……?」
彼女の声が少し上ずった。
周囲の冒険者たちがざわつき始める。
「Sランク? あの年の差夫婦が?」
「旦那の方見た目、二十代前半だろ……本当に?」
俺とリリィは顔を見合わせて、少しだけ笑った。
肩書きなんて気にしていない。
でも、積み重ねた時間が形になっているのは、悪くない。
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「記録を確認しました。討伐数、成功率、貢献度……すべてが基準を超えています。
おふたりとも、正式にSランク認定されています」
受付嬢は少し緊張しながらそう告げた。
俺は静かにカードを受け取り、リリィが小さく拍手してくれた。
「ふふ、なんだか照れるね」
「……俺も、少しだけ」
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双子はすぐに町の魔法学校に馴染んだ。
ユウは風の魔法に興味を持ち、ミナは光の魔法に惹かれていた。
リリィは講師として学校に招かれ、俺はギルドの任務をこなしながら、剣術を教える場を持つようになった。
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「ねえパパ、なんでそんなに若いの?」
ミナがそう聞いてきたのは、ある夜のことだった。
俺は少しだけ考えて、答えた。
「……パパはね、ちょっと変わった体なんだ。でも、ちゃんと生きてるよ」
「ふーん。じゃあずっと一緒に遊べるね!」
その言葉に、俺は少しだけ笑った。
子供の純粋さは、時に救いになる。
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>「変わらない俺でも、変わっていく家族と生きていける。
> それが、今の俺の“幸せ”なのかもしれない」
新しい町、新しい暮らし。
そして、家族としての新しい日々が、静かに始まった。




