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死なないだけの僕がいつか世界を救う  作者: 木挽
誕生と新しい町
17/67

第17話『新しい町、家族の旅』



ユウとミナが五歳になった。

あっという間だった。

小さな手は少しずつ大きくなり、言葉も、表情も、毎日変化していく。

俺は変わらないまま、彼らの成長を見守っていた。


---


「そろそろ、引っ越そうか」


リリィがそう言ったのは、春の風が街を包んだ日だった。

セレノアでの暮らしは穏やかだったけど、双子の未来を考えると、もっと自然の多い場所がいい。

そして歳をとらない俺は不審がられ始めていた。


魔法と技術が融合した町――ルミナス。

そこが、次の目的地になった。


---


ルミナスは、森と湖に囲まれた静かな町だった。

魔法学校があり、子育てにも向いていると評判だった。

俺たちは、町の外れに小さな家を借りて、暮らしを始めた。


---


ギルドにも挨拶に行った。

受付で転入手続きを済ませ、ギルドカードを提示する。

魔導端末にカードを通した瞬間――受付嬢の手が止まった。


「……えっ、Sランク……?」


彼女の声が少し上ずった。

周囲の冒険者たちがざわつき始める。


「Sランク? あの年の差夫婦が?」

「旦那の方見た目、二十代前半だろ……本当に?」


俺とリリィは顔を見合わせて、少しだけ笑った。

肩書きなんて気にしていない。

でも、積み重ねた時間が形になっているのは、悪くない。


---


「記録を確認しました。討伐数、成功率、貢献度……すべてが基準を超えています。

おふたりとも、正式にSランク認定されています」


受付嬢は少し緊張しながらそう告げた。

俺は静かにカードを受け取り、リリィが小さく拍手してくれた。


「ふふ、なんだか照れるね」


「……俺も、少しだけ」


---


双子はすぐに町の魔法学校に馴染んだ。

ユウは風の魔法に興味を持ち、ミナは光の魔法に惹かれていた。

リリィは講師として学校に招かれ、俺はギルドの任務をこなしながら、剣術を教える場を持つようになった。


---


「ねえパパ、なんでそんなに若いの?」


ミナがそう聞いてきたのは、ある夜のことだった。

俺は少しだけ考えて、答えた。


「……パパはね、ちょっと変わった体なんだ。でも、ちゃんと生きてるよ」


「ふーん。じゃあずっと一緒に遊べるね!」


その言葉に、俺は少しだけ笑った。

子供の純粋さは、時に救いになる。


---


>「変わらない俺でも、変わっていく家族と生きていける。

> それが、今の俺の“幸せ”なのかもしれない」


新しい町、新しい暮らし。

そして、家族としての新しい日々が、静かに始まった。

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